ペットボトルを整理していて思ったんです。
正方形だといい感じに敷き詰められる。
六角形でもいい感じに敷き詰められる。むしろ最密充填構造。
つまり、ペットボトルには、「いい感じに敷き詰められる数」と「そうでない数」が存在する……!
正方形になりえる個数
これは単純で、$\lbrace1,4,9, \cdots , n^2\rbrace$。いわゆる平方数。
正六角形になりえる個数
中心からの長さ $n$ を持つ六角形の外周を考える。このような敷き詰め方ができる数を 六角平方数 と定義する。
- 中心のマスは $1$
- そのひとつ外側は $6$
- そのひとつ外側は $2 \times 6 = 12$
- そのひとつ外側は $3 \times 6 = 18$
- (以下略)
まとめると、
- $1$ (初項)
- $6(n-1)$ (初項以外)
え、なにこの場合分け……合ってるんだけど、なんか気持ち悪い。
これらの累積和は $1 + \Sigma_{k=1}^{n}{6(k-1)} = 3n^2-3n+1$ です。
よって、六角平方数は、$\lbrace 1,7,19, \cdots , 3n^2-3n+1 \rbrace$。
準正方形になりえる数
これだけだと候補が少なくて寂しいので、短辺と長辺の差が $1$ 以内であるような長方形を作れるような数「いい感じに敷き詰められる」に含めるものとする。これを 準平方数 と定義する。
準平方数は $\lbrace2,6,12,\cdots,n(n+1)\rbrace$ となる。
準正六角形になりえる数
この「準」概念を六角形にも適用します。
- 最小辺と最大辺の差がちょうど $1$ であるような六角形を、準正六角形 と定義する
- そのような敷き詰め方ができる数を、準六角平方数 と定義する
果たしてこれは求められるのか?
場合分け
とりあえず場合分けで考えます。求めたい面積を $A$ とします。準六角形は、正六角形の辺のうちのいくつかが $1$ 膨らむことが必要条件となるので、それらを全部求めます。
- 正六角形のうち $1$ 辺が膨らむ場合
不可能。なぜなら、膨らんだ先の辺の長さは $n-2$ になるため、準正六角形の条件を満たさない。
また、この考察により、膨らむ辺は連続した辺である必要がわかります。
- 正六角形のうち(連続した)$2$ 辺が膨らむ場合
$ A = (3n^2-3n+1) + (2n-1) = 3n^2-n$
- 正六角形のうち(連続した)$3$ 辺が膨らむ場合
$ A = (3n^2-3n+1) + (3n-1) = 3n^2$
- 正六角形のうち(連続した)$4$ 辺が膨らむ場合
$ A = (3n^2-3n+1) + (4n-1) = 3n^2+n$
- 正六角形のうち(連続した)$5$ 辺が膨らむ場合
不可能。なぜなら、膨らんでいない辺の長さが $n+2$ になるため、準正六角形の条件を満たさない。
という訳で、準六角平方数は、ある整数 $n$ を用いて、以下のいずれかで表せる数であることがわかりました。
- $3n^2-n$
- $3n^2$
- $3n^2+n$
これと、六角平方数である $3n^2-3n+1$ も、「いい感じに敷き詰められる」に含まれることがわかります。
一般六角数
なんか、これまでの議論。場合分けを多用したりで、あまりスマートでない……。
何か、†本質† を見落としている気がする。
そもそも、一般六角形に対して敷き詰め数を定義できないか?
言い換えると、
- $6$ 方向それぞれに対して、順番に $a,b,c,d,e,f$ の長さ持つような六角形を実現する敷き詰め数は?
待て、こういう時は直交座標系に直すと見通しがよくなる。私は詳しいんだ。
こう考えると、求める個数は、正方形から左上の直角三角形と右下の直角三角形を引いたもの!
よって、求める個数 $A$ は、
A = (a+b-1)(c+d-1)-\frac{1}{2}a(a-1) - \frac{1}{2}d(d-1)
具体例を確認します。
上の図の例だと、$(a,b,c,d,e,f)=(3,2,3,2,3,2)$ となり、
\displaylines{
A= (3+2-1)(3+2-1)-\frac{1}{2} \cdot 3(3-1)-\frac{1}{2} \cdot 2(2-1)\\
= 4 \cdot 4 - 3 - 1 = 12
}
で一致しています。
他にも、$a=b=c=d=n$ を代入すると、
\displaylines{
A = (n+n-1)(n+n-1) - \frac{1}{2}n(n-1) - \frac{1}{2}n(n-1) \\
= (2n-1)^2 - n(n-1) \\
= 4n^2-4n+1 - n^2+n\\
= 3n^2-3n+1
}
六角平方数だ!
準六角平方数についてはどうでしょう。
このとき、準正六角形の大元となる四角形の個数 $S$ は
S = 2n \cdot 2n = 4n^2
に限られることがわかります。
証明
四角形を構成する辺としてありえるのは $2n-1,2n,2n+1$ の $3$ 通り。このとき、辺の長さは同じである必要がある。
なぜなら、四角形の辺の長さが異なる場合、六角形上には $n+1$ の辺と長さ $n-1$ の辺が存在することになり、その差は $2$ となる。
よって、このような六角形は準正六角形として不適である。
よって、大元の四角形の辺の長さは同じであることが証明された。
このとき、辺の長さが $2n-1,2n-1$ であれば、求める六角形は正六角形。
また、辺の長さが $2n+1,2n+1$ であれば、求める六角形はひと回り上の正六角形。
よって、準正六角形の大きな四角形の辺は $2n,2n$ の場合に限られる。
差し引く三角形の個数 $T$ は、
- $T_1 = \frac{1}{2}n(n-1) + \frac{1}{2}n(n-1) = n^2-n$
- $T_2 = \frac{1}{2}n(n-1) + \frac{1}{2}n(n+1) = n^2$
- $T_3 = \frac{1}{2}n(n+1) + \frac{1}{2}n(n+1) = n^2+n$
に限られるため、
- $S-T_1 = 3n^2+n$
- $S-T_2 = 3n^2$
- $S-T_3 = 3n^2-n$
準正六角形の場合もいい感じに整理できました。
結論
ペットボトルを「いい感じに敷き詰められる数」は、ある整数 $n$ を用いて以下のいずれかで表現できる数である。
- $n^2$
- $n(n+1)$
- $3n^2-3n+1$
- $3n^2-n$
- $3n^2$
- $3n^2+n$
$100$ 以下のいい感じ数を列挙します。
1 2 3 4 5 6 9 10 12 14 16 17 20 24 25 27 30 35 36 42 44 48 49 52 56 59 64 70 72 75 80 81 89 90