この記事は さくらインターネット Advent Calendar 2025 25日目の記事です。
はじめに
この記事は、エンジニアとして働き始めて3年目を迎えたタイミングで、これまでの仕事の捉え方の変化を振り返ってみたものです。
私は新卒入社から現在まで、「さくらのクラウド」というクラウドサービスのバックエンド開発に関わってきました。
現在は、その中でも認証認可・統制に関わる領域を担当しており、日々の開発タスクに加えて、仕様の背景整理や、他チーム・他部署との調整に関わる機会も増えてきています。
自分が最終的に意思決定をする立場ではありませんが、判断に必要な情報を整理して選択肢を提案するなど、「チームが決めやすい状態をつくる」ことを意識する場面が増えてきました。
こうした立ち位置に変わってきた今、1年目からこれまでの変化を振り返ることで、自分の中で何が変わってきたのかを整理してみたいと思い、この記事を書くことにしました。
1年目
新卒でエンジニアとして働き始めた頃を振り返ると、最初の1年はとにかく「目の前のタスク」をこなすことで精一杯でした。
当時は今と状況も違っていて、クラウドの機能開発を大きく1つのチームで進める体制でした。
クラウド自体もサービス開始時から長く稼働しているシステムで、自分が入社した時点ですでに多くの機能や背景事情が積み重なっていました。
先輩に助けてもらいながら、APIの保守や改善に関わるタスクを少しずつこなしていく、そんな関わり方が中心だったと思います。
正直なところ、本当の意味で何もわかっていなかったと感じています。
新卒当初は、こうした歴史のあるシステムの開発に関わった経験がなく、全体像をどう捉えるか、どこから調査を始めればよいかといったアプローチ自体が、自分の中でまだ確立できていませんでした。
そのため、ちょっとした改修でも調査に時間がかかり、「なぜこうなっているのか」を追いきれないことも多くありました。
ユーザ視点やプロダクト全体の構造まで意識する余裕はなく、まずはタスクを完遂すること、そしてプロダクトのコードについて少しでも理解することを第一に考えていました。
2年目
2年目に入る少し前から、チーム体制が大きく変わりました。
開発体制が見直され、機能ごとにチームが分かれた結果、私は認証認可に関わるチームへ配属されました。
この頃から、他チームや他部署と関わる機会が一気に増えてきました。
それまで「自分のタスク」を中心に見ていたものが、少しずつ「チームやプロダクト全体の流れの中のタスク」として捉えられるようになった感覚がありました。
また、わからないことに対しても、「ここを調べれば何かわかりそう」、「この人に聞けば整理できそう」といった、進め方の勘のようなものが少しずつ働くようになってきたのも、この頃だったと思います。
完全に理解できているわけではないけれど、暗闇の中で手探りしていた状態から、なんとなく地図を持って動けるようになった、そんな変化を感じていました。
3年目
3年目になってからは、タスクそのものよりも 「その前提や背景」 が気になる、あるいは気にしないといけない場面が増えてきました。
- この仕様は、なぜこうなっているのか
- ユーザ・フロントエンド視点で見たときに、本当に自然な動きなのか
- 他のプロダクトや機能に、どういう影響があるのか
以前は、タスクを着実にこなせていれば十分だと思っていた部分に対して、仕様や設計の背景にも踏み込んで関わる場面が少しずつ増え、自分の中で気にする範囲が広がってきたと感じています。
曖昧なまま進めると、後になって手戻りが発生することもありました。
一方で、前提や依存関係を整理して共有するだけで、チームの議論がスムーズに進むこともありました。
そうした経験を通して、「コードを書く前にやるべき仕事がある」という実感を、以前より持つようになったと感じています。
オーナーシップの捉え方の変化
「オーナーシップ」という言葉の捉え方も、最初と比べて変化してきました。
以前は、「オーナーシップ=自分が全部決めないといけない」といったイメージを持っていて、正直あまりピンときていませんでした。
ただ、3年目になって仕事で扱う抽象度が上がり、仕様や設計の背景に踏み込んで関わる機会が増える中で、必ずしも「自分が決めること」だけがオーナーシップではないのではないかと感じるようになりました。
- 自分で決めなくてもいい
- でも、決めるための材料や選択肢を整理することはできる
- 自分が理解している領域では、一歩踏み込んで提案できる
こうした「決めやすい状態をつくる動き」も、立派なオーナーシップの一つなのではないかと感じています。
振り返って思うこと
3年目になって、急に技術力が跳ね上がったようなことはありません。
ただ、見える世界が変わった という感覚は、確かにあるなと感じています。
- 1年目はタスクだけを見ていた
- 2年目は周囲の人やチームとの関係が見えるようになった
- 3年目は前提や背景、影響範囲まで意識するようになった
環境の変化や役割の変化を受けながら、少しずつ視野が広がってきた結果、仕事の捉え方や関わり方も変わってきたのだと思います。
まだうまくできていないと感じる部分は多くありますが、以前のように「何がわからないのかわからない」状態ではなく、「どこがわからないのか」を自分で把握できるようになってきた、という点では、少し変化があったのかなとも感じています。
おわりに
これはあくまで、自分自身の3年間の振り返りで感じたことです。同じように見える世界が変わるタイミングは、人それぞれ違うと思います。
最初はタスクで精一杯でもよくて、そこから少しずつ周囲が見えるようになる。
やがて前提や背景を気にするタイミングがある。
私もまだ途中ではありますが、そうした変化の中で、少しずつ仕事の捉え方が変わってきたように感じています。
その中で、自分なりのオーナーシップの形が見えてきました。
自分の場合は、「全部を抱えること」ではなく、チームが前に進みやすい状態をつくることだったのだと思います。