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「Amazon Leoって何?」宇宙ビジネス全体の位置付けから調べてみた

Last updated at Posted at 2025-12-14

はじめに

皆さんは、AWS re:Invent 2025でAmazonのCTOであるWerner VogelsさんのKeynoteを見られましたか?

毎年WernerさんのKeynoteはエンジニアから大人気ですが、re:InventでのKeynote登壇は今回が最後になるということで、今年は例年以上に盛り上がっていたように感じます。

私は現地でKeynoteを見ましたが、Keynote後に私の周囲でスタンディングオベーションが発生するほどの熱気でした。

Keynoteの詳細については割愛しますが、このKeynoteでは「ルネサンス時代を生きるDeveloperに必要な資質5つ」について語られました。

IMG_5494_Original.jpg

生成AIが爆発的に発達してきている今は、まさにルネサンス時代である。そんな第二のルネサンス時代を生きるDeveloperには5つの資質が求められる、という内容でした。

その5つの資質の中の一つに「好奇心を持つこと(is curious)」がありましたが、今回の記事は私が非常に好奇心を持ったサービスについての話です。

re:Invent期間中の発表の中で、私がダントツで好奇心を揺さぶられたサービスである「Amazon Leo」について徹底的に調査した結果をまとめたいと思います。
※ここでいう「re:Invent期間」とは、AWSのアップデートや新機能が大量に発表されるre:Invent本編前の期間(いわゆるpre:Invent)を含みます。

なお、私は宇宙ビジネスに関しては全くの素人なのですが、この記事を書くために「そもそも宇宙ビジネスとはなんなのか」というところから調べてみました。
誤りや考慮漏れもあると思いますので、見つけた場合はコメントをいただけると嬉しいです。

宇宙ビジネスの種類

そもそも「宇宙ビジネス」にはどんな種類があるのでしょうか?
主要な宇宙ビジネスについて、事業内容と代表的な企業名をまとめてみます。

宇宙輸送

ロケットを利用して人工衛星を打ち上げたり、国際宇宙ステーション(ISS)に荷物を運んだりするサービスを提供するビジネスです。

おそらく宇宙ビジネスと言われて真っ先にイメージする人が多いビジネスだと思います。

かつては、コストやリスクの高さ、軍事利用目的などの理由により国が主導していた事業です。
しかし、技術の発展や軍事利用忌避などの背景により、今ではすっかり民間が主導する事業となっています。

宇宙輸送サービスを提供する企業として代表的なのは、スペースXやブルーオリジン、ロケット・ラボがあります。
日本のベンチャーにもPDエアロスペース、インターステラテクノロジズ、SPACE WALKERなどがあります。

また、宇宙輸送ビジネスを展開している企業はロケット開発や宇宙旅行などの事業を掛け持ちしていることが多いです。
自身で開発したロケットを宇宙輸送や宇宙旅行に利用するというケースが多いようです。

宇宙旅行といえば、ZOZOの創業者である前澤友作さんがスペースXと契約し、ISSに滞在したことが一時期話題にもなりましたね。

衛星通信事業

衛星を利用した通信網を提供するビジネスです。
衛星通信といってもいくつか種類があり、ざっくり分けると以下のような分け方になります

  • 静止衛星を利用する衛星通信事業
  • 周回衛星による衛星コンステレーションを用いた衛星通信事業

静止衛星と周回衛星の違いについての詳細は割愛しますが、ざっくり以下のような違いがあります。

  • 静止衛星:比較的高い軌道に位置する大型衛星、3機程度で地球全体をカバーすることができる
  • 周回衛星:中・低軌道に位置する比較的小型な衛星、地球上空に大量に配置することで地球全体をカバーする

静止衛星を用いた衛星通信事業としてはインマルサットやインテルサットなどのサービスがあり、日本ではKDDIやNTTドコモ、スカパーJSATなどがサービスを提供しています。

周回衛星を利用する衛星通信事業としては、音声通信を提供するイリジウムというサービスが比較的長い歴史を持っています。

近年では周回衛星を利用した通信サービス事業が盛り上がっており、スペースXのStarlinkのような衛星コンステレーションによる衛星通信を提供するサービスが注目されています。

今回の記事で取り上げるAmazon Leoはまさに衛星コンステレーションを用いた衛星通信サービスであり、Starlinkの競合となるサービスです。

データ活用事業

衛星から取得した様々なデータを活用したサービスを提供するビジネスです。
例えば、気象予報のサービスは気象衛星「ひまわり」から取得したデータを活用して提供されています。

その他にも衛星データの活用方法は様々あり、以下のようなサービスが提供されています。

  • 交通量などのデータを元に混雑予想やマーケティングに活用するコンサル
  • 田畑や海洋を上空から見た画像を元にした、収穫量・漁獲量予測システム
  • 地殻変動や災害時の衛星画像を元にした防災サービス

その他

他にも宇宙関する様々なビジネスが存在しています。

  • 宇宙での研究・開発
    • 重力の影響を受けない環境での新薬開発
  • 宇宙保険
    • ロケット打ち上げなど、リスクの高い事業に対する保険を販売
  • 宇宙弁護士
    • 宇宙ビジネスでの企業間で発生する契約の仲介などを実施

Amazonの宇宙ビジネス

前述の通り宇宙ビジネスは非常に多岐に渡りますが、Amazonに関連する宇宙ビジネスとしては大きく分けて3つあります。

1つ目はブルーオリジンによるロケット開発、宇宙輸送、宇宙旅行の事業です。

Amazonの創業者であるジェフベゾスがAmazonの成長で得た資金を元に設立した会社であり、スペースXの競合に位置する会社です。

スペースXと比較すると後発ではあるものの、ブルーオリジンはすでに複数の実績を持っています。そのため、この領域はスペースXとブルーオリジンのほぼ2強になっていると言えるような状況です。

2つ目はAWSとしての宇宙ビジネス事業です。
宇宙ビジネスのインフラとしてAWSサービスが利用されているだけではなく、「Ground Station」というサービスも提供しています。

Ground Stationは衛星地上局などのインフラを利用して衛星データの取得などができるサービスで、ユーザーは地上局などのインフラを用意することなくデータ取得ができます。

これにより、ユーザーがデータ活用のビジネスに参入しやすくなるというわけです。

サービスの詳細が非常に気になるサービスではありますが、残念ながらGround Stationは個人利用できないサービスです。

そして3つ目が、今回紹介するAmazon Leoです。

Amazon Leoについて

前述の通りAmazon Leoは衛星コンストレーションを利用した衛星通信のサービスです。

元々は「Project Kuiper(プロジェクト・カイパー)」というコードネームで開発が進んでいたサービスであり、今回「Amazon Leo」とリネームされました。

なお、Leoという名前は「低軌道」を意味する英語「Low Earth Orbit」の頭文字3つから名付けているとのことです。

サービスの利用の仕方はStarlinkとほぼ同じで、ユーザーがアンテナを設置するだけで衛星通信を利用することができます。

ユーザーと直接繋がるアンテナが衛星と通信し、衛星から地上局(Ground Gateway)、地上局からPoPを経由してインターネットやAWSに接続するという仕組みになっているとのことです。

image.png
(引用:https://www.youtube.com/watch?v=nZCx612z930

また、アンテナにはNaon、Pro、Ultraの3種類があり、re:Inventの会場ではUltraが提示されていました。

IMG_5464.jpeg

IMG_5465.jpeg

ブルーオリジンとの違い

すでにそれなりの事業規模になっているブルーオリジンとの棲み分けが気になるところですが、Amazon Leoで利用する衛星の打ち上げをブルーオリジンが担うという棲み分けになっているようです。

2022年にAmazonが衛星打ち上げ業者3社と契約をしたという発表がありましたが、その中の1社がブルーオリジンです。

ブルーオリジン、ユナイテッド・ローンチ・アライアンス、アリアンスペースの3社の衛星打ち上げサービスを利用して、Amazon Leoの衛星網が作られています。

re:Invent 2025のセッションからみるAmazon Leo

re:Invent 2025ではAmazon Leoに関するセッションがいくつかありましたが、その内容を元にAmazon Leoの裏側や活用事例について紹介していきます。

Amazon Leoを裏で支えるAWSサービス

まずは「Amazon Leo: Building a Low Earth Orbit Satellite Network on AWS (AMZ302)」というセッションです。

このセッションでは、Amazon Leoのサービスを提供する裏側で活用しているAWSサービスやアーキテクチャについて説明されていました。

Simulation Service

活用事例の1つ目として、衛星打ち上げ前のシミュレーションを行うシステムをAWSで作っていると紹介されました。

Step Functionsでワークフローを組み、シミュレーションを実行するコンピュート基盤としてEC2のベアメタルインスタンスを利用しているとのことでした。

image.png

ベアメタルインスタンスを利用している理由ですが、以下のような理由によるものだと説明されています

  • 衛星で利用しているチップと同じものを利用するため
  • FPGAという特殊なハードウェアを利用するため

このシステムにより、実際の衛星打ち上げの時とほとんど同じシミュレーション結果を得ることができたと紹介されていました。

State prediction service

活用事例の2つ目で紹介されたのは、サービスのコアとなる衛星を管理するシステムです。

衛星の場所を予測・管理するためのシステムで、すべての衛星の場所を管理するためのモデルを動かしているとのことでした。

image.png

これもStep Functionsのワークフローを活用しており、インデックスしたデータに対してクエリを投げることで衛星の位置予測結果を得ることができるとのことです。

このシステムでは膨大な計算処理能力が求められるものの、サーバレスサービスの活用によってインフラ管理の手間を削減することができたと説明されています。

Amazon Leoを活用したレジリエンスなネットワーク網

次に「Architecting resilient global networks with Amazon Leo (ARC320)」というセッションを紹介します。

このセッションではAmazon Leoのサービスに関する詳細な解説、AWSサービスとの連携などについて説明されています。
全体的に面白いセッションなのですが、その中でもAmazon Leoをバックアップ回線として利用するユースケースについて取り上げます。

一般的にDirect Connectの可用性を99.99%まで上げるためには、以下のような2ロケーションにまたがる構成が必要です

image.png

しかし、セットアップの手間や高いコストとのトレードオフがあるため、どのユーザーでも採用できる構成ではありません。
さらに、そもそも適切なロケーションがない場合はこの構成を組むことができません。

そんな時に活用できるのが、Amazon Leoをバックアップ回線として利用する構成です。
DXロケーションがなくても、迅速にバックアップ回線を用意することができると紹介されていました。

image.png

ただ、具体的に可用性が何パーセントになるのかについては触れられていませんでした。
Amazon LeoのSLAについては調べてもそれらしい情報が出てこないため定量的な情報が出せませんが、緊急時の退避用回線として利用するユースケースは非常に面白いと思いました。

まとめ

宇宙というと普通の人には馴染みのない話のように聞こえますが、Amazon Leoのような衛星コンステレーションのサービスは一般ユーザーでも使いやすそうなサービスなので非常に興味が湧きます。

また、re:Inventのセッションを聴いていると、Direct Connectのバックアップ回線としての利用など、商用利用も見込めるサービスだとわかりました。

今後どのようなサービス展開がされていくのか、どんな事例が出てくるのか非常に興味深いサービスだと感じました。

参考資料

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