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リセラー割引が請求書のどこに乗るかは、AWSの公開情報に書かれていない — 割引対象額の4つの除外と3通りの外し方

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初出: CloudCutブログ
この記事は自社ブログに掲載したものの転載です。

「請求代行に切り替えると◯%削減できます」と言われたとき、その◯%が請求総額に掛かると読むと、たいてい外れます。割引が乗るのは請求書の一部——割引対象額と呼ばれる分母だけで、そこから何が外れるかは契約ごとに違います。

そして厄介なことに、その分母の定義はAWSの公開情報には書かれていません。だからこそ、見積を受け取ったら率だけでなく分母を確認する必要があります。

前回は請求書からSPとRIを見分ける方法を書きました。今回はその続きで、そこで出した数字が割引の分母にどう効くのかを扱います。

その割引は請求書のどこに掛かるのか

計算の形はごく単純です。

割引対象額 = Charges − 割引対象外USD
実際の削減額 = 割引対象額 × 割引率

問題は右辺の「割引対象外USD」に何が入るかです。リセラー各社の解説を突き合わせると、一般に次の4カテゴリが外れるとされています。

  1. RI/SPでカバーされた利用 — 予約で消化された分
  2. RI/SPの前払い・SPのコミット費用 — 割引の対価として払っている部分
  3. AWS Marketplace — サードパーティ製品の購入分
  4. 税・AWS Support — 利用料そのものではない部分

先に断っておくと、この4つを定義したAWS公式のページは見つかりません。私たちが2026年8月時点で確認した範囲では、AWS Solution Provider Program の公開ページにも、パートナー向けの公開ドキュメントにも、割引対象額の定義や除外項目の一覧は載っていません。リセラー各社の解説では2025年半ばにこの整理が明文化されたとされますが、これも一次情報をたどるとVantageなど第三者ベンダーの解説記事に行き着き、AWS側の該当条項は特定できませんでした。

プログラムの契約条件がパートナー限定で非公開である以上、公開情報からこれを確定させることは原理的にできません。つまり「一般にこうだとされる」以上のことは、誰であれ公開の場では言えない——これが、率ではなく分母を書面で確認すべき理由です。

外し方は割引タイプごとに違う

ここからが実務の核心です。除外の「仕方」が割引タイプごとに3通り違い、ここを取り違えると削減額が数割ずれます。私たちがCloudCutの提供元に確認して整理した内容が、次の表です。

割引タイプ 請求書での見え方 外し方
Savings Plans 適用額のマイナス行と、コミット費用のプラス行が別々に立つ 2本とも外す
Reserved Instances カバー分は$0で課金。マイナス行は出ない 差額は自動的に対象外。ただしRI月額料金は分離できない
Private Rate Card Discount (Private Rate Card) のマイナス行 対象サービスのCharges全額を外す

SPは2本外す

いちばん間違えやすいのがSPです。マイナス行(適用額)だけを外して終わりにすると、そのSPがあるからこそ発生しているコミット費用が割引対象に残ります。コミット費用は割引の対価であって、割引を掛けるべき利用料ではありません。1本しか外さないと、削減額はその分だけ過大に出ます。

RIは差額だけだが、それは請求書から復元できない

RIはカバー分が$0で計上されるので、差額は何もしなくても分母の外にあります。厄介なのはRI月額料金のほうで、これは該当サービスのChargesに紛れ込んでいて請求書から分離できません(前回記事の「時間比例性テスト」で存在は示せますが、金額の切り出しまではできません)。RIを持っている会社は、請求書だけでは割引対象額が確定しないということです。ここはコンソールのRI画面かCost Explorerを見るしかありません。

PRCは対象サービスの全額が外れる

Discount (Private Rate Card)(個別交渉レート)が出ている場合、外れるのはマイナス行の金額ではなく、そのサービスのCharges全額です。理由は、交渉済みの単価がすでに全利用量に適用されているからで、そこにリセラー割引を重ね掛けすることはできません。ここを「マイナス行の分だけ外す」と処理すると、対象額が大きく残りすぎます。

なお、この3つで請求書の割引行を網羅できるとは限りません。Bundled Discount のような扱いの確定していない行もあります。見慣れない割引行があれば、それは個別に確認が要るサインだと考えてください。

架空例で割引対象額を出す

例として、次の請求書を考えます(金額は説明用の架空の値です)。前回記事のサンプルに、PRCとMarketplaceを足した構成です。

USD
Charges(合計) 10,000.00
うち SPコミット費用 1,250.00
うち PRC対象サービスのCharges 900.00
うち AWS Marketplace 600.00
うち AWS Support 400.00
Savings Plan (Charges covered by Savings Plans) −1,500.00
Discount (Private Rate Card) −180.00
Net Charges(実支払) 8,320.00

割引対象額はこうなります。

割引対象額 = 10,000.00
           − 1,500.00  (SPでカバーされた利用)
           − 1,250.00  (SPコミット費用)
           −   900.00  (PRC対象サービスのCharges全額)
           −   600.00  (AWS Marketplace)
           −   400.00  (AWS Support)
           = 5,350.00

対象額の比率 = 5,350.00 ÷ 8,320.00 = 64%

請求総額の64%にしか割引が掛かりません。仮に割引率10%の提案だとすると、削減額は832.00ではなく535.00で、請求総額に対する実効値は**6.4%**です。

一方、SP/RI/PRCを一切持たず、Marketplaceが少ない会社なら、同じ構成の計算で対象額の比率は9割を超えます。同じ割引率でも、実効値は構成次第でこれだけ動きます。

実効値 = 提示された割引率 × (割引対象額 ÷ 請求総額)

比べるべきはこの実効値です。率だけを並べても比較になりません。

逆に、フラット割引が効く構成

ここまでは割引が薄まる話でしたが、逆の構成もあります。

そもそも予約という仕組みが存在しないサービス——データ転送・S3・VPC・ELB・CloudWatch・WAFなどは、RIでもSPでも一切割引できません。前回書いたとおり、この領域だけで請求総額の3割前後に達する構成は珍しくありません。

この比率が高い会社は、RI/SPを組み直すという打ち手で届く上限が低い代わりに、利用の中身を問わず掛かるフラット割引がそのまま効きます。自社がどちら寄りなのかは、上の計算を一度やれば分かります。

満了日が提案の順序を決める

SPやRIを持っている場合、いつ動くかは満了日で決まります。満了後の請求額をどう見積もるかは前回記事に譲って、ここでは順序だけ書きます。

原則は、満了に合わせて動かすです。満了前に動かすと、前払い済みのコミットが埋没します。SPは原則として解約も移管もできませんし、RIも売却できるのはStandard RIをReserved Instance Marketplaceに出す場合に限られます(Convertible RIは不可)。前払い分を捨てて乗り換えても、それを取り返せるだけの差が出ることはあまりありません。

複数の予約が別々の満了日を持っているときは、いちばん遅い満了日まで全部待つ、という組み方にしなくて構いません。アカウント構成の変更を伴う移行のように一度に動かす必要がある場合は満了日を揃える論点が出ますが、そうでなければ順に寄せていけます。いずれにせよ、割引率の交渉より先に満了日の一覧を作るほうが、話が早く進みます

見積を受け取ったら聞くべきこと

分母の定義が公開されていない以上、確認するしかありません。どのリセラーに対しても、次の4つを書面で聞いてください。

  1. その割引率は何に掛かりますか — 請求総額か、割引対象額か。後者なら定義は何か
  2. SP・RI・Private Rate Cardはどう扱われますか — SPはコミット費用も外れるのか、PRCは対象サービス全額が外れるのか
  3. AWS Marketplace・税・AWS Supportは対象に入りますか
  4. その前提で、当社の実効値はいくつになりますか — 計算の根拠となる請求書の行まで示してもらう

4つめまで答えが返ってくるかどうかが、実質的な判断材料になります。

まとめ

  • 割引率は分母とセットでしか意味を持たない。割引対象額 = Charges − 割引対象外USD
  • 一般に外れるとされるのは①RI/SPカバー利用 ②RI/SP前払い・SPコミット費用 ③Marketplace ④税・Support。ただしAWS公式にこの定義は公開されていない
  • 外し方は3通り。SPは2本、RIは差額のみ(RI月額料金は請求書から分離不能)、PRCは対象サービスのCharges全額
  • 実効値 = 割引率 × (割引対象額 ÷ 請求総額)。予約が薄い構成ほどフラット割引が効く
  • 見積を受け取ったら、率ではなく分母を書面で確認する

CloudCutの分母

最後に、上の4つの質問に自社で答えておきます。

CloudCutが提供しているのはAWS / Google Cloudの請求代行を通じた最大20%の削減1ですが、この率が掛かるのは請求総額ではなく割引対象額です。除外は本文に書いた4カテゴリで、外し方も本文の3通りと同じです。SPはコミット費用まで外し、PRCは対象サービスのCharges全額を外します。

そのうえで、お出しする見積には実効値と、その計算に使った請求書の行を載せています。この分母を出さずに率だけを比べても判断できないというのが、この記事で書きたかったことです。

現状の請求書を読み解くところからのご相談も承っています。


筆者は AWS/Google Cloud のクラウド費用削減を専門に扱う CloudCut というサービスを運営しています。請求明細の分析からコミットメント設計まで一括で対応しており、自社での見直しが難しい場合はお気軽にご相談ください。

  1. 「最大20%削減」は、CloudCut提供元におけるこれまでの導入実績における最大削減率です。実際の削減率は利用規模・契約期間・現行サービス構成により変動します。

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