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で、初代ClassWiz(EX)のクローン機って正直どうなのよ?

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GW後半の4連休(というか、海外から取り寄せた電卓が続々届いた)ということで、連日電卓関連の記事を公開する予定。
1日目はEXクローン機について。

ClassWiz EXの販売終了に混乱の声

ClassWizの新機種であるClassWiz CWが国内で発売されたのが2023年9月21日(プレスリリース)。欧米市場ではこれより早く、2022年10月から発売されていた(e-Gadget)。
ほとんどの地域ではCW発売後に初代ClassWiz(EXシリーズ)の販売が打ち切られた。日本国内も同様で、現在fx-JP500は転売価格に高騰しており、手頃な価格で入手するには一部のストアで売られているメーカー再生品か、中古品を購入するしかない。

カシオがEXシリーズの販売を打ち切ったこと、CWシリーズの仕様が従来機と異なることの双方により、様々な混乱が引き起こされている。

  • EXシリーズを採用した学年で紛失・故障があった場合、代替機を用意できない。卒業生に寄贈をお願いすることにした(X(Twitter))。
  • eBay等で入手せざるを得ず、海賊版を掴まされた(Redditに書き込み多数)。
  • EXを水没させてしまったのでCWを買い直したが、あまりにも操作性が悪く嘆いている(Reddit)。テスト直前にEXが壊れ、CWに慣れる時間がなかったためEXの海賊版と正規品を買い足した人(Reddit)。
  • 指数入力の問題は様々な人が指摘している(例:YouTube)。
  • EXシリーズ復活を求める署名 change.org(1) change.org(2)

関数電卓の選び方の記事でもCWシリーズの問題点は指摘したが、別記事のコメント欄にもわざわざ太字強調してまでEXシリーズが良いと書く人が現れた(電卓の日企画:関数電卓(1行機)あれこれ(おまけあり))。

では、販売終了になったEXシリーズの代わりが全く無いかと言えば、そうではない。カシオのロゴを付けたまま、あるいはロゴだけ消した海賊版とは別に、自社メーカーのロゴを付けたEXクローン機が多数作られているからだ。そして、カシオが販売を打ち切ってしまったからこそ、機能の問題がなければEXクローン機を使ってもいいのでは?と思うのである(電卓マニアを敵に回す発言と承知の上)。

海賊版もクローン機も模造品でしょ?と言われそうだが、自社ブランドを名乗るからには責任が伴う。EATESはカシオから外見の酷似を訴えられ賠償金を払った(カシオ計算機意匠特許侵害訴訟の判決(中文))。出来の良くないクローンであればメーカー名付きで低評価のレビューや動画が広がるだろうし、あまり売れず市場から淘汰されることもあるだろう。
クローン機は模造品の範疇にとどまらず、EXにない機能が追加された機種すら存在する。

さて、カシオのお膝元である日本。正規でクローン機が入る余地は今のところあまりない。例外的にメーカーが直接売り込んできているのがNEWYESで、電子メモパットを付けているからか堂々と販売している(日本では今のところMSクローンとESクローンのみで、EXクローンは販売していないようだ)。
アマゾンを眺めているとたまに輸入業者がEXクローン機を出品し、いつの間にか販売が終了というのを繰り返している。初代ClassWizの新品が入手困難になってきているため、クローン機を輸入する業者が増えてくるのか注視している。

念押ししておくが、私はむやみにクローン機を勧めるつもりはない。EXシリーズ販売打ち切りに対する抗議であり(特に教育現場を顧みない姿勢に憤っている)、最も使いやすい機種であればクローン機であろうと使い続ければよいと考えるからである。カシオがEXシリーズと同し操作感の後継機を発売すれば、クローン機でなくそちらを買うよう呼びかける。それまでの間である。
ほとんどのクローン機は個人輸入するしかなく、輸入時に税関で引っかかる可能性もゼロではないため、もし購入したいのであればリスクを理解した上で行ってほしい。

できるだけクローン機を挙げてみる

EXクローン機は991EXや570EXなどの型番で数多く販売されている。ただし中国製のものは別々のブランド名が付いていても中身は同じというケースが混ざっていると考えられる。
全てを網羅することは難しいが、見つけた範囲で列挙してみる。

本体にメーカーロゴが入っていないもの

公的試験に使えるクローン機

ドイツ

ドイツの卒業試験であるアビトゥーアは2030年度から、IQBによって認定された関数電卓のみ使用可能となる。
このIQB計算機は2025年4月現在4機種しかない(教育大臣会議のサイトに掲載されている)が、その一つがEXクローンであるCalcoom IQ-Z8である。

カシオはCW機であるfx-810DE CWがIQB計算機として認定されており、指数入力に問題を抱えたカシオ機を使うか、指数入力が従来機通りに行えるCalcoom機を使うか選択することができる(他にはTIとシャープがそれぞれ1機種認定済)。

なお販売店が限定されているようで、MatheflitzではIQ-Z8が紹介されているが、CALCUSOでは触れられていない。

韓国

韓国の国家技能資格試験は使用可能な電卓リストを公開している(国家技術資格 工学用電卓機種限定)。
このリストにはEXクローンであるUNIONE UC-800Xが含まれている(公式サイトが見当たらないので価格比較サイト)。

現在販売中のUC-800XはES機のような形をした2ndだが、初代はEX機に似た形状だったようだ(商品ページ例)。
そしてこの初代デザイン・2代目デザインとも、EATESのEXクローン機にそっくりである(FC-991EX+FC-991EX-C)。

ベトナムのEXクローン機は追加機能あり

VINACAL

VINACALの680EX PLUSには極限(lim)を解く機能が追加されている。
カシオの電卓でもCALC機能を使って微小にずらした前後の値を入れていけば解けなくはないが、最初からlim機能が備わっていれば数学の問題演習で便利かもしれない。

Windowsで動くエミュレータも提供されている(公式のリンク先はGoogleドライブ上のZIPファイルになっている。利用は自己責任で)。

FLEXIO

FLEXIOのFx799VNにはGeometry機能が備わっている。マニュアルには「幾何学モードでは、点、線、平面、円、球を入力し、計算したり、関連する問題を解いたりできます。」とある。長さ、面積、体積、交点などが求められるようだ。
4地点しか登録できないみたいなので土地家屋調査士試験の問題は解けないかもしれないが、その方面には便利機能かもしれない。

複素数メニューには複素数の方程式を解く機能が追加された。

また、本体の両サイドにボタンがあり、シャープ機のような機能割り当てを行うことができる。

なお、本機は中国語によるレビューがGitHubに上がっていた(GitHub)。
このレビューによると、各メニュー項目は画面内連番ではなく通しの連番となっており、見えていない項目でも直接選択できるようだ(TIが同様のメニュー方式)。これもまたEXシリーズに対する利点となっている。

クローン機を試す

以上、商品ページ情報をもとにEXクローン機を見てきたが、やはり実機を試してみないことには始まらない。
今回は中国や韓国から取り寄せた3機種についてレビューをする。
なお、中国で販売されているクローン機は中国モデル(fx-991CN X)が元となっているため、機能が少ない等、fx-991EXのクローンとは若干の違いがある。

中国で販売されている EATES FC-991CN-D と deli D991CN-X Plus

以前 Twitter に連ツイした内容の再掲+αで紹介する。
https://x.com/harycurl/status/1833113557040537665

外観

どちらも青系のデザインを購入。
EATES(右)は元機種の変なエンボス模様は無く、新CWに寄せたデザイン。筐体の色がやや濃い目で、地に書かれた文字は若干見づらいかも。
deli(左)は無駄にオリジナルに似せたエンボス模様を付け、数字キーの地の色も薄いのでいまいち。
ex_eates_deli_1.jpg

液晶

元機種の地の色が暗いので、それに比べるとEATES(左)の地の色が明るくてよい。ただしEATESは字の影が気になる。
deli(右)は液晶が縦方向に長く、文字も縦方向に伸びている。ダサく感じる反面、大きい文字がいい人にはかえってよいかも。ただしメニュー等で液晶がチラついてるように見える。
ex_eates_deli_2.jpg

キー入力

EATES(左)はケースの溝が元機種と同程度の長さで、ケース付きだと入力時に筐体がガタガタする。ケースを外して置くとガタつき無し。
deli(右)はケースの溝が長く、ケース付きでガタつき無し。逆にケース無しで置くと若干ガタつく。
ex_eates_deli_3.jpg

機能

どちらも498機能と書かれており、fx-991CN Xに準拠。fx-991EXの552機能、fx-JP900の約700機能より少ない。
JP700に近いが、周期表、一部の単位換算、最小公倍数・最大公約数、整数化、循環小数は無く、逆に不等式と比のアプリ、エンジニアリング文字がある。

変数一覧

deliは変数一覧機能が無い(!!!)。[RCL]すらないので、変数の値を確認するには[ALPHA][変数名]を単独入力して表示させるしかない。
EATESは[SHIFT][STO]をするとAの値が表示され、上下キーで変数の値を見ることができる。
どちらも元機種と比べて使い勝手がよくない。

精度チェック

エイプリルフール企画:関数電卓の精度を比較するを参照。
2機種は全く同じ値となり、EX元機種より精度が良い。内部桁数もEXが15桁に対し、2機種は16桁である。

総和や積分の演算速度

EATESやdeliはEX元機種と比べると、ほとんどの式において時間がかかった。

長く時間のかかる演算は、概ね
EX元機種→→→deli→EATES→→(超えられない壁)→→([参考]375ES A)

ただし、tan(x)の0→1.57079rad積分は、
EX元機種→→→375ESA→EATES→→deli
となぜかdeliが遅い結果に。

なお、∫(sin(x)^2+√x,0,π)の積分
EX元機種:約23秒、deli:約12秒、EATES:約13秒
のように、EX元機種より早く演算が終了する式もある。

ソルブ

式によってはEX元機種より好成績を上げることも。

8²=(2√19)²+(2√7)²-(2)(2√19)(2√7)cos(x) を x=0 初期値で解かせた例(DEGモード)
左上:EATES、右上:deli、左下:EX(fx-JP700)、右下:CW(fx-JP500CW)
EATES機が大正解。deli機も符号違い程度なので正解と言ってよい。
ex_eates_deli_4.jpg

-1/3=1/(1+x) を x=0 初期値で解かせた例
かかった時間は
375ESA:約77秒、EX(fx-JP700):約15秒、CW(fx-JP500CW):約10秒に対して
EATES:1秒以内、deli:1秒以内

その他

  • EATESは表に出ている[x]キーが変数代入に使えない
  • deliはLR44が2個必要(EX元機種やEATESは1個)
  • deliは度分秒の記号が入力段階で自動的に°,′,″に変換される
    ex_eates_deli_5.jpg

韓国で販売されている UNIONE UC-800X

前述の通り、EATESのEXクローン機の一つ(初代ES機酷似デザイン)にそっくりなUC-800X。
EATES FC-991CN-Dなどと比較しながら見ていきたい。

外観

初代ES機は所有していないため、同一デザインと思われるfx-55PLUSと並べてみた。
一部のボタン形状が違うものの、大きさ含めてそっくりである。
unione1.jpg

液晶

均等に光を当てられる環境が無いためあくまで参考程度の写真だが、EATESの液晶ほど緑がかってはいない。ただしEATESと同様に文字の影は気になる。加えてdeliのような液晶のちらつきも時々見られる。
unione2.jpg

キー入力

EATESやdeliと比べるとキータッチはしっかりしている。軽く押すと入力を取りこぼすこともあるが、概ね問題ない。

機能

552機能と書かれており、fx-991EXに準拠。分布計算や表計算機能も有す。
unione3.jpg

変数一覧

EX元機種と同様の変数一覧機能がある。
unione4.jpg

精度

エイプリルフール企画:関数電卓の精度を比較するに追記した。
例題に関してはEATES,deli両機種と全く同じ精度である。

演算速度等

EATES、deliより時間がかかるものが多かったが、早く終わるものもあった。

2機種より成績の良かったものとして、

  • tan(x)の0→1.57079rad積分
    EX元機種:約13秒、UNIONE:約37秒、EATES:約1分13秒、deli:約1分25秒
  • Σ(x^2-1,1,14000)
    EX元機種:約1分12秒、UNIONE:約1分37秒、deli:約1分49秒、EATES:約1分52秒

があった。

なお目立った誤差が現れた例題もあり、∫(2√(2^2-x^2)dx,-2,2)の積分の結果は12.56637062で、4π=12.5663706143...と最終桁が一致しなかった。

前述のソルブ問題はEATESと同様の64.3066191を導き出して正解。
-1/3=1/(1+x)も1秒以内に正答を表示した。

自己診断機能

EX元機種と同様の自己診断機能がある。
[SHIFT][9][ON]同時押しで自己診断機能に入る。
実行画面は以下の通り。左上、右上、以下同様に並べてある。ROMバージョンとコントラスト調整の間にキーチェック(左上に2桁の数字、当該キーを押す度にカウントアップ)があるか画面は割愛した。
市松模様がEX元機種より大きいことなど若干の違いが見られる。
unione5.jpg

まとめ

EATES、deliは変数一覧に難あり(特にdeliは変数一覧そのものが無い)。
UNIONEは演算速度やごく一部の積分の結果について気になる点が見られた。
液晶のちらつきも気になる人はいるだろう。個体差とも考えられるが、品質的には日本メーカーと比べるとやや劣ってしまうのは仕方のないところ。

上記の部分が気にならないという方へ、参考までに現地価格(2025年5月時点)を紹介して記事の締めとする。くどいようだが、購入はくれぐれも自己責任で。

  • UNIONE UC-800X:Gmarketで20000ウォン前後(約2000円)
  • EATES FC-991CN-D:タオバオで60元前後(約1200円)
  • deli D991CN-X:京東やタオバオで70元前後(約1400円)
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