この記事では、Discord bot「Disnana」やOSSライブラリ「DictSQLite」の開発を通じて体感した、PyCharmの圧倒的な開発体験について紹介します。VS Codeユーザーの方に「PyCharm、ちょっと試してみようかな」と思ってもらえたら嬉しいです!
はじめに
こんにちは!高校生エンジニアの@harumaki4649です。普段はDiscord botのDisnanaやPythonライブラリDictSQLiteの開発をしています。
以前はVS Codeを使っていましたが、PyCharmに移行してから開発体験が劇的に向上しました。今回は「なぜPyCharmなのか?」という観点から、実際の開発現場で感じたメリットを紹介します。
学生の味方! PyCharm Professionalは学生なら無料で使えます。私も学生ライセンスを活用しています!
JetBrains 学生向けライセンス
TL;DR
# PyCharmの魅力を一言で表すと...
pycharm = {
"IDE": "最初から全部入り",
"リファクタリング": "プロジェクト全体を解析して安全に変更",
"デザイン": "美しくて使いやすいUI",
"Copilot統合": "PylintとPEP8をCopilotが認識",
"デバッガー": "VS Codeの比じゃない",
"データベース": "IDE内で完結する開発体験"
}
VS Codeから乗り換えた3つの理由
1. リファクタリングの精度が別次元
VS Codeでリファクタリングをしていると、こんな経験ありませんか?
- 変数名を変更したら、一部だけ変更されて他は手動修正
- 関数を移動したら、importが壊れる
- 「本当に安全に変更できたのか?」という不安
PyCharmのリファクタリングはプロジェクト全体を静的解析して、安全性を保証してくれます。
実例: DictSQLiteでの大規模リファクタリング
DictSQLiteの開発中、クラス名をDictSQLiteからDictSQLiteV4に変更する必要がありました。
VS Code時代の悪夢(クリックして展開)
# 変更前
from dictsqlite import DictSQLite
class MyApp:
def __init__(self):
self.db = DictSQLite('app.db')
VS Codeで「DictSQLite」を「DictSQLiteV4」に置換すると...
# 変更後(壊れる!)
from dictsqlite import DictSQLite # ← importは変わってない!
class MyApp:
def __init__(self):
self.db = DictSQLiteV4('app.db') # ← NameError!
手動で修正が必要...😱
PyCharmなら:
# Shift+F6でRename
# → 自動的に全ファイルのimport、型ヒント、docstringまで更新!
複数ファイルに跨るリファクタリングも完璧!
PyCharmはプロジェクト全体を解析するため、以下も自動で修正してくれます:
- Import文
- 型ヒント
- Docstring内の参照
- テストコード内の使用箇所
リファクタリング機能の比較
| 機能 | PyCharm | VS Code |
|---|---|---|
| 変数名変更 | ✅ プロジェクト全体 | ⚠️ ファイル内のみ |
| メソッド移動 | ✅ Import自動更新 | ❌ 手動修正必要 |
| 関数抽出 | ✅ スコープ解析済み | ⚠️ 簡易的 |
| 変更前プレビュー | ✅ Diff表示あり | ⚠️ 基本的になし |
| Undo | ✅ リファクタリング単位 | ⚠️ 編集単位 |
2. GitHub Copilot + Pylint + PEP8の最強トリオ
PyCharmの素晴らしいところは、GitHub CopilotがPylintとPEP8の警告を認識してコードを生成してくれることです。
実例: コード品質の自動維持
# GitHub Copilotに「ユーザー認証関数を作って」と依頼
# VS Codeでの生成結果
def authenticate_user(username, password):
if username == "admin" and password == "pass": # Pylint: 平文パスワード
return True
return False
# PyCharmでの生成結果(PylintとPEP8を認識!)
def authenticate_user(username: str, password: str) -> bool:
"""
ユーザー認証を行う
Args:
username: ユーザー名
password: パスワード(ハッシュ化済み)
Returns:
認証成功ならTrue
"""
# TODO: 実際のハッシュ検証ロジックを実装
hashed_password = hashlib.sha256(password.encode()).hexdigest()
return check_password_hash(username, hashed_password)
PyCharmのインスペクション設定
-
Settings→Editor→Inspections -
PythonセクションでPylintを有効化 - GitHub Copilotがこれらのルールを認識してコード生成!
地味に便利: クリップボードDiff
コードをコピペする前に、クリップボードの内容と現在のコードの差分を確認できます。
# Ctrl+Shift+V でクリップボード履歴
# → 貼り付ける前にDiffを確認可能!
これ、地味すぎて誰も話題にしないけど、めちゃくちゃ便利なんですよね...
3. デザインが美しくて使いやすい
これは完全に主観ですが、PyCharmのUIデザインが本当に好きなんです。
VS Codeとの比較
| 項目 | PyCharm | VS Code |
|---|---|---|
| テーマ | Darcula最高 | 拡張機能で調整必要 |
| フォント | JetBrains Mono標準 | 自分で設定 |
| アイコン | 統一感あり | 拡張機能次第 |
| ツールウィンドウ | スッキリ配置 | サイドバーが混雑 |
個人的にはDarculaテーマ + JetBrains Monoの組み合わせが最高です。長時間コードを見ていても目が疲れません。
# JetBrains Monoのリガチャ(合字)がキレイ
def example():
if x >= 10 and y <= 20: # >=, <= が見やすい
return x != y # != も美しい
PyCharmの圧倒的に便利な機能
デバッガーが優秀すぎる
VS Codeのデバッガーも悪くないですが、PyCharmはさらに上を行きます。
条件付きブレークポイント
# ループ内で特定条件のみ止めたい
for i in range(1000):
result = process_data(i) # ← ここにブレークポイント
# 条件: i > 500 and result is None
VS Codeだと設定が面倒ですが、PyCharmなら:
- ブレークポイントを右クリック
- 条件式を入力:
i > 500 and result is None - 完了!
変数のウォッチが見やすい
# デバッグ中の変数表示
users = [
{'name': 'Alice', 'age': 30},
{'name': 'Bob', 'age': 25},
]
# PyCharmなら辞書やリストの中身が
# 階層的に展開されて見やすい!
Evaluate Expression機能
デバッグ中にAlt+F8で任意のPython式を評価できます。
# デバッグ中に実行可能
sum([user['age'] for user in users if user['age'] > 25])
データベースツールの統合
DictSQLiteやDisnanaの開発では、SQLiteとPostgreSQLを頻繁に使います。PyCharmならIDE内でデータベース開発が完結します。
実例: DictSQLite開発でのDB確認
# コードを書きながら...
db = DictSQLite('test.db')
db['key1'] = 'value1'
# IDE右側のDatabase Tools で即座に確認
# → テーブル構造、データ、クエリ実行が同じ画面で!
できること:
- ✅ テーブル構造の可視化
- ✅ データの直接編集
- ✅ SQLクエリの実行とフォーマット
- ✅ ERダイアグラムの自動生成
- ✅ コード内のSQL文へのジャンプ
-- PyCharm内でクエリを書いて実行
SELECT key, value
FROM main
WHERE key LIKE 'user%'
ORDER BY key;
-- 結果を即座に表示
-- → CSVやJSONでエクスポートも可能
注意: Professional版の機能です
Database Toolsは有料版(Professional)の機能ですが、学生なら無料で使えます!
プロジェクト全体の静的解析
これがPyCharmの本当の強みです。
複数ファイルに跨る警告
# dictsqlite/main.py
class DictSQLite:
def __init__(self, db_path: str):
self.db_path = db_path
# dictsqlite/utils.py
from .main import DictSQLite
def create_db(path): # ← 型ヒントがない!
return DictSQLite(path)
# tests/test_main.py
from dictsqlite.utils import create_db
db = create_db(123) # ← PyCharmが警告!
# Expected type 'str', got 'int' instead
VS Codeだとファイルを開いているときしかチェックされませんが、PyCharmはプロジェクト全体を常に監視しています。
ファイル分割の推奨
数千行のファイルは重くなる
PyCharmは高機能な分、1ファイルが数千行になるとVS Codeより重くなります。ただし、適切にファイルを分割していれば全く問題ありません。
むしろ、そこまで長いコードを1ファイルに書くのは好ましくないので、PyCharmが「コード分割しなさい」と教えてくれていると考えています。
私の分割ルール:
# 悪い例: main.py に全部詰め込む(3000行)
class DictSQLite:
# ... 500行
class AsyncDictSQLite:
# ... 500行
class TableProxy:
# ... 500行
# 以下、ユーティリティ関数が2000行...
# 良い例: 適切に分割
dictsqlite/
├── __init__.py
├── main.py # DictSQLite本体(500行)
├── async_impl.py # 非同期版(500行)
├── proxy.py # TableProxy(300行)
└── utils/
├── crypto.py # 暗号化(200行)
├── pickle.py # シリアライズ(200行)
└── validators.py # バリデーション(150行)
分割後も、PyCharmは全ファイルを解析して警告を出してくれます。これがマジで優秀!
学生に優しいPyCharm
学生なら無料でProfessional版!
私も学生ライセンスを使っています。GitHub Copilotは有料ですが、PyCharm Professional自体は完全無料です。
私の開発環境
IDE: PyCharm Professional 2024.3
ライセンス: 学生向け無料ライセンス
AI補助: GitHub Copilot(学生割引)
テーマ: Darcula
フォント: JetBrains Mono
プラグイン:
- GitHub Copilot
- .ignore
- Rainbow Brackets
- Key Promoter X # ショートカット学習用
GitHub Copilotも学生なら月額$4(通常$10)で使えます。PyCharm AI Assistantは残念ながら追加費用がかかるので、今は使っていません...お金が、、ね?😅
実践: Disnana開発での活用例
Discord bot開発でのデバッグ
import discord
from discord.ext import commands
bot = commands.Bot(command_prefix='!')
@bot.command()
async def ping(ctx):
# ここにブレークポイント
# → Discord APIの応答を確認しながらデバッグ
latency = bot.latency * 1000
await ctx.send(f'Pong! {latency:.2f}ms')
# PyCharmのデバッガーで非同期処理も快適にデバッグ!
データベース開発との連携
from dictsqlite import DictSQLite
# コードを書きながら...
db = DictSQLite('bot_config.db')
guilds = db.table('guilds')
# Database Tools で即座にテーブル確認
# → スキーマ変更もIDE内で完結
GitHub Copilotとの協働
# Copilotに「設定管理クラスを作って」と依頼
# → Pylint準拠のコードが生成される!
class ConfigManager:
"""Discord botの設定を管理するクラス"""
def __init__(self, db_path: str = 'config.db'):
"""
初期化
Args:
db_path: データベースファイルのパス
"""
self.db = DictSQLite(db_path)
self.guilds = self.db.table('guilds')
def get_prefix(self, guild_id: int) -> str:
"""
ギルドのプレフィックスを取得
Args:
guild_id: ギルドID
Returns:
プレフィックス文字列
"""
config = self.guilds.get(str(guild_id), {})
return config.get('prefix', '!')
型ヒント、docstring、PEP8準拠...全部自動で生成してくれます!
PyCharmのショートカット(厳選)
使い始めると覚えるショートカット:
| ショートカット | 機能 | 使用頻度 |
|---|---|---|
| Shift×2 | Search Everywhere | ⭐⭐⭐⭐⭐ |
| Ctrl+Space | 補完 | ⭐⭐⭐⭐⭐ |
| Shift+F6 | Rename | ⭐⭐⭐⭐⭐ |
| Ctrl+Alt+L | コード整形 | ⭐⭐⭐⭐⭐ |
| Ctrl+B | 定義へジャンプ | ⭐⭐⭐⭐⭐ |
| Alt+Enter | Quick Fix | ⭐⭐⭐⭐⭐ |
| Ctrl+Shift+A | Find Action | ⭐⭐⭐⭐ |
| Alt+F8 | Evaluate Expression | ⭐⭐⭐⭐ |
| Ctrl+Shift+V | クリップボード履歴 | ⭐⭐⭐ |
Key Promoter Xプラグイン
マウスでやった操作のショートカットを教えてくれます。自然とショートカットを覚えられるのでオススメ!
VS Code vs PyCharm 最終比較
PyCharmを選ぶべき人
- ✅ Python開発がメイン
- ✅ 大規模プロジェクトを扱う
- ✅ リファクタリングを頻繁に行う
- ✅ データベース開発も行う
- ✅ コード品質にこだわる
- ✅ 学生(無料で使える!)
VS Codeを選ぶべき人
- ✅ 軽量なエディタが好き
- ✅ 複数言語を頻繁に切り替える
- ✅ カスタマイズ性を重視
- ✅ リモート開発がメイン
両方使うのもアリ!
私も実は軽い編集やMarkdownファイルの編集にはVS Codeを使っています。適材適所ですね!
まとめ
PyCharmに移行してから、以下が劇的に改善されました:
- リファクタリングの安全性 → プロジェクト全体を解析
- コード品質 → Pylint + PEP8をCopilotが認識
- 開発速度 → データベースツールでIDE内完結
- デバッグ効率 → 条件付きブレークポイント等が便利
- 見た目 → Darculaテーマが美しい
特に大規模なPythonプロジェクトを扱う場合、PyCharmの恩恵は計り知れません。DictSQLiteのような数千行のライブラリ開発では、もうVS Codeには戻れないレベルです。
今後の展望
PyCharmをさらに活用するために:
- 🔄 AI Assistantの導入検討(お金が貯まったら...笑)
- 🔄 カスタムインスペクションの作成
- 🔄 プロジェクトテンプレートの整備
- 🔄 チーム開発でのコードスタイル統一
リンク集
VS CodeからPyCharmへの移行を検討している方の参考になれば幸いです!質問があればGitHubやメールでお気軽にどうぞ!
学生の皆さん、無料でProfessional版が使えるチャンスをお見逃しなく! 🎓✨