リコーダーを剣にしていた私が、Obsidianでエレキベースを始められた件

この記事は創作系Obsidian Advent Calendar 2025 の9日目の記事です。

この記事の想定読者: 楽器経験ゼロだけど、何か始めてみたい人。あるいはObsidianで「音」を扱いたい人。

まとめ: 楽譜が読めなくても、Obsidianのプラグイン abcjs があれば「聴ける楽譜」が作れて、練習のハードルが劇的に下がります。

1. 楽器歴＝チャンバラ歴だった私

私の楽器の演奏歴はほぼゼロでした。幼稚園のときの鍵盤ハーモニカと、小学校の時のリコーダーぐらいでしょうか。特に上手でもなかったし、熱心でもなかった。リコーダーの主な用途はチャンバラの剣で、「人をどつくと痛い」ことしか学ばなかった気がします。

ですから、人生で楽器演奏は完全にアウトオブ眼中でした。ところが、Amazonプライムでドキュメンタリー映画『ロックフィールド　伝説の音楽スタジオ』を観ていたときに、とつぜん「楽器を演奏する」というアイディアが降りてきて、気がついたら中古のエレキベースが家にありました。

2. 楽譜が読めない壁

さて問題は、完全なる初心者で、手ほどきをしてくれる人のあてもなく、楽譜も何もないこと。インターネットで検索したら楽譜（タブ譜？）は見つかりましたが、どういう音を出すのかが想像がつかない。

しかも、今思えばですが、初心者すぎて、そもそもベースが曲のなかのどの音を出しているのかもわかっていなかったのです。

救世主となったのは、Obsidianのプラグイン obsidian-plugin-abcjs でした。

何がすごいかというと

• テキスト（コードブロック）で楽譜が書ける
• その場で再生できる
• テンポや楽器などもすぐ変えられる

3. ちょっとやってみてください

論より証拠じゃないですが、ぜひプラグインをインストールして、Obsidianノートで試してみてください。

プラグインのインストール

ABC Music Notation をインストールします。プラグインをオンにします。

コードブロックに書く

コードブロックの最初にabcをつけると、ABC Music Notation用のブロックと認識されます。

下記は、U2のWith or Without Youの最初の16小節です。

```abc
T: With or Without You
M: 4/4
L: 1/8
Q: 1/4=100
K: clef=bass-8
V: 1 name="Chords" octave=+2
V: 2 name="Bass"
V: 1
| "D"  x8           | "A"    x8     | "Bm"    x8  | "G" x8 |
| "D"  x8           | "A"    x8     | "Bm"    x8  | "G" x8 |
| "D"  x8           | "A"    x8     | "Bm"    x8  | "G" x8 |
| "D"  x8           | "A"    x8     | "Bm"    x8  | "G" x8 |
V: 2
%%MIDI program 33
| D D D D D D D D | A, A, A, A, A, A, A, A, | B, B, B, B, B, B, B, B, | G, G, G, G, G, G, G, G, |
| D D D D D D D D | A, A, A, A, A, A, A, A, | B, B, B, B, B, B, B, B, | G, G, G, G, G, G, G, G, |
| D D D D D D D D | A, A, A, A, A, A, A, A, | B, B, B, B, B, B, B, B, | G, G, G, G, G, G, G, G, |
| D D D D D D D D | A, A, A, A, A, A, A, A, | B, B, B, B, B, B, B, B, | G, G, G, G, G, G, G, G, |

```

Obsidianノートに楽譜が表示され、クリックすると演奏が始まります。

いかがでしょう。

ベースだけ鳴らしたいときは

```abc
T: With or Without You
M: 4/4
L: 1/8
Q: 1/4=100
K: clef=bass-8
V: 2 name="Bass"
V: 2
%%MIDI program 33
| D D D D D D D D | A, A, A, A, A, A, A, A, | B, B, B, B, B, B, B, B, | G, G, G, G, G, G, G, G, |
| D D D D D D D D | A, A, A, A, A, A, A, A, | B, B, B, B, B, B, B, B, | G, G, G, G, G, G, G, G, |
| D D D D D D D D | A, A, A, A, A, A, A, A, | B, B, B, B, B, B, B, B, | G, G, G, G, G, G, G, G, |
| D D D D D D D D | A, A, A, A, A, A, A, A, | B, B, B, B, B, B, B, B, | G, G, G, G, G, G, G, G, |

```

などとできます。こうやって初めて「ベースの音ってこれだったんだ！」と認識ができました。超感激でした。

4. さらに次の曲へ…

こんな単純なベースラインでも、そこそこ弾けるようになるまで、しばらく練習が必要だったわけですが、だんだん他の曲もやってみたくなります。

たとえば、ベン・E・キングのスタンド・バイ・ミー。同じコード進行がループするので、初心者でも楽しい曲として知られています。

```abc
T: Stand by Me
M: 4/4
L: 1/8
Q: 1/4=120
K: clef=bass-8
V: 2 name="Bass" octave=-2
V: 2
%%MIDI program 33
| z2 A z2 A z2   | E ^G A z2 A z2 | A ^G ^F z2 ^F z2 | E2 ^F z2 ^F z2 |
| ^F E D z2 D z2 | D ^F E z2 E z2 | E ^G A z2 A z2   | E ^G A z2 A z2 |
| E ^G A z2 A z2 | E ^G A z2 A z2 | A ^G ^F z2 ^F z2 | E2 ^F z2 ^F z2 |
| ^F E D z2 D z2 | D ^F E z2 E z2 | E ^G A z2 A z2   | E ^G A z2 A z2 |
| E ^G A z2 A z2 | E ^G A z2 A z2 | A ^G ^F z2 ^F z2 | E2 ^F z2 ^F z2 |
| ^F E D z2 D z2 | D ^F E z2 E z2 | E ^G A z2 A z2   | E ^G A z2 A z2 |
| E ^G A z2 A z2 | E ^G A z2 A z2 | A ^G ^F z2 ^F z2 | E2 ^F z2 ^F z2 |
| ^F E D z2 D z2 | D ^F E z2 E z2 | E ^G A z2 A z2   | E ^G A z2 A z2 |

```

私の現行技術では、とてもオリジナルのスピードで弾けないんですが、Obsidianなら、なんと親切！Q: 1/4=120 の部分だけ書き換えれば、指定のスピードで演奏してくれます。練習パートナーとして最高ですね。

5. なぜObsidianなのか？（デジタルノート万歳）

いやあ、ABC Music Notationプラグイン、最高ですね。メンテナンスも再開されて、動作も安定してきた気がします。

楽譜再生だけなら、Obsidianじゃなくても、他のアプリやツールがいくらでもあります。しかし、Obsidianを相棒にするのは、下記のような明らかなメリットがあります。

• 情報の集約: YouTubeの原曲動画 + abcjsの楽譜 + 参考にした楽譜のURL（複数にわたることも） + 自分の気づきメモ を1つのノートに共存させられます。
• 管理のしやすさ: 練習ログを残したり、関連ノート（他の曲のノート）をリンクしておけます。
• バージョン管理のしやすさ: 楽譜を少しだけいじったりするなど、簡単なバージョン管理ができると、すごくハッピーです。

Obsidianのマークダウンエディタとしての基本機能と、楽譜再生・楽譜管理の組み合わせがとても良い。つまり、Obsidianを使うときに得たノウハウが、全部そのまま楽譜ノートに活かせるのです。

おわりに

映画を観てベースを買い、案の定「楽譜が読めない」「音が想像できない」壁にぶつかった楽器経験ゼロの私。そんな絶望を救ってくれたのが、Obsidianとabcjsプラグインでした。

テキストで「聴ける楽譜」が作れた瞬間、練習は「苦行」から「実験」に変わりました。初心者にとって、Obsidianは単なる楽譜管理アプリではありません。自分のペースで試行錯誤できる「音が鳴る練習ノート」です。

• 原曲のYouTubeリンク
• 自分に合わせた速度調整
• 気づきポイント注意ポイントメモ

これらが1ノートに収まっていることで、練習のハードルが下がり、継続する「近道」が生まれました。U2のシンプルなルート弾きでも、Stand By Meのループでも構いません。まずはたった1曲（の一部を）、自分のノートに住まわせてみてください。

楽器がいきなり上手くなる魔法はありません。でもいちばん重たい「最初の一歩」を軽やかに踏み出させてくれる「始められる魔法」にはなります。

創作系Obsidian Advent Calendar 2025、他の記事も皆さんの「クリエイタースイッチ」を押してくれんじゃないかと思います。Obsidianと、初心者の勇気に幸あれ。

参考リンク

• Obsidian｜使いかたとコツ（目次）

• Obsidian Advent Calendar 2025 にも9日目に 📘ものぐさObsidian：やる気ゼロで5年続けたノート術 を書かせていただきました。

環境

以下のバージョンで実施しました。

• ABC Music Notation 1.6.0
• Obsidian v1.10.6
• macOS Tahoe 26.1
• MacBook Pro (14-inch, 2024)