この記事は TSG Advent Calendar 2025 の2日目の記事です。
1日目は今言うなさんの「だれも来なかったから、うなが書くことになったにゃ(怒)」でした (何?)
みなさん、AIしてますか?
私は2016年に「機械学習で石川啄木を蘇らせる」という記事を書きましたが、以来早十年。AIの進化にはめざましいものがあります。
AIの中央集権化を防ぐためにも、さまざまなAIモデルをローカルで動かしたいところですが、強いAIマシンを組むには高い高いマシンと高い高いGPUが必要です。
そこで今回みなさんにおすすめしたいグラボが AMD Radeon Instinct MI50 32GB です。
AMD Radeon Instinct MI50 32GB とは
AMDから2018年にリリースされた型落ちのGPUです。元はサーバー向けに設計されたもので、一般用途は想定されていなさそうな感じです。
型落ちですが、一番の特徴がそのVRAMの容量です。16GBモデルと32GBモデルがありますが、今回購入したのは32GBモデルです。
2025年現在、eBayを見ると32GBモデルはだいたい 220〜250 USD くらいで取引されています。私は 220 USD 出品のものを値切りして、送料込みで約29,500円 (200 USD) で入手することができました。RTX 4090の中古が20万円超えしていることを考えると、32GBもVRAMがあるGPUがこの値段で手に入るのは素晴らしい。
近年ローカルLLMなどを手元で動かすうえで障壁になることが多いのが、生成速度以前にモデルをGPUにロードするために大量のVRAMが必要になるということです。
MI50は演算性能は RTX 5060 程度とそこそこですが、VRAMが多いという点でローカルAI向きです。フル精度なら16B程度、Ollamaなどで4bit量子化モデルを動かすなら64B程度のLLMがオフロードなしで動きますし、動画生成AIの Wan 2.2 も動作します。すごい。
なお、MI50のセットアップに関してはインターネット上にほとんど情報がなかったので、特に以下のブログに大変お世話になりました。
- https://hashicco.hatenablog.com/entry/2024/04/01/232250
- https://clyde-ne45.hatenablog.com/entry/2025/09/11/231308
欠点 (いっぱいある)
MI50、安いんですが、もちろん安いなりの落とし穴がいくつもあります。
まず最大の難点は、すでにROCmの公式サポートが終了していることです。2025年12月時点で最新のROCm 7系はMI50をサポートしておらず、最後に公式対応していたのはROCm 5.7までです。手元で試したところ、ROCm 6.1まではなんとか動作しましたが、それ以上のバージョンは正常に動作しませんでした。そのため、ROCm 6.2以降を要求するものは基本的に動きません。
それでもROCm 6.1までなら普通に動きますし、PyTorch、Transformers、llama.cpp、ComfyUI、Ollamaなど主要なAIライブラリはほぼコード変更なしで動きます。ライブラリのインストール自体はAMD公式のドキュメントが古くなっているので少し苦労しますが、ネットに転がっている先人たちの知恵を借りればなんとかなります。
そしてもう一つの大きなハードルが、MI50はサーバー向けGPUなので冷却ファンが付属していないことです。裸のヒートシンクだけの状態で届くので、そのままPCに挿して動かしても数秒でサーマルシャットダウンします。
幸い、私が買ったeBayの出品は良心的な出品者で、MI50に取り付けられるファンと、3Dプリンタで出力したと思われるファンシュラウドが同梱されていました。これのおかげで冷却問題はほぼ解決しました。
あと地味に面倒だったのがディスプレイ出力です。MI50には出力端子としてmini-DP端子が1つのみ付いていますが、デフォルトのVBIOSではコンシューマ向けのディスプレイ出力が無効化されています。Radeon Pro V420 などの他機種向けのVBIOSをamdvbflashで書き込んだら無事に画面が出るようになりました。ちなみにMI50のVBIOSについては以下のGistが詳しいです。
マシン構成
全部中古かジャンクで揃えたので総額10万円以下に抑えられました。
- CPU: Ryzen 7 5700X(中古 18,980円)
- マザボ: ASRock X570 Extreme4(中古 11,990円)
- メモリ: DDR4-3600 32GB×2(中古 14,960円)
- GPU: Radeon Instinct MI50 32GB(eBay 200USD → 約29,552円)
- 電源: 玄人志向 750W 80PLUS GOLD(新品 9,576円)
- ストレージ: 1TB NVMe SSD(新品 9,680円)
- CPUクーラー: SilverStone IceGem 280(メルカリ 3,500円)
- ケース: Cooler Master MASTERBOX NR600(もらいもの。0円)
総額 98,238円(送料別)
MI50はファン込みで全長約40cmあるのでケース選びが大変でしたが、なんとか収まりました。
使ってみての感想
1ヶ月ほど毎日ガリガリ回していますが、10万円以下で組んだマシンとしては破壊的にコスパが良いです。
Geekbench 6 Computeスコアでいうと約18万点くらいで、RTX 4070 Ti と RTX 5060(8GB)の間くらいの性能が出ています。32GBもVRAMがあるので、Wan 2.2.2(26Bパラメータの画像生成モデル)もフルスペックで余裕で動きます。Llama 70Bも4-bit量子化なら普通に会話できます。
ただし繰り返しになりますが、ROCmのサポートが切れているので最新モデルは動きません。そこだけは本当に注意が必要です。
あとGPUファンが最初は常に爆音だったんですが、rocm-smiとfancontrolでちゃんと制御したらほぼ無音になりました。CPUクーラーがたまに動かなくなるのはジャンク品だから仕方ないですね(笑)
結論:玄人向けだけど、ローカルAIやりたい人には今でもコスパ最強クラスです。興味ある人はeBay覗いてみてください。ただし自己責任で!
※この記事は半分くらい今回購入したGPUに書いてもらいました


