南の島の命名ルール
私が NAIST の学生だったころ(2000年代中盤)、計算機ネットワークの研究をしている研究者たちが学校全体のネットワークを管理していた(彼らにとってそれは「研究対象」なので)。
私が所属していた研究室の各コンピュータには、ホスト名に**「南の島の名前」**を付けるルールが彼らから与えられていたので、研究室の各メンバーは自分のローカルマシンにトロピカルな名前を付けていた。
私のマシンは「phuket(プーケット)」だった。
それ以来、自分のメインマシンは常に「phuket」にしている。
最近、Mac mini を買って「borneo(ボルネオ)」と名付けた(メインの Windows マシンが phuket なので)。
その Mac に VirtualBox を入れて Ubuntu Server 20.04 をインストールし、それを「tonga(トンガ)」にした。
島の名前はいくらでもある。
例えば、cebu(セブ島)、bali(バリ島)、tahiti(タヒチ島)、borabora(ボラボラ島)などなど。トロピカルな名前の PC を触るのが、結構楽しかったりする。
ちなみに、プーケットにはまだ行けていない。
いま値段を調べたら、コロナの影響のせいかむちゃくちゃ安いので、来月あたり日本にいないかもしれない。
eurasia が沈んだ
当時はクラウドストレージの概念がなかった。全学共用の遅いファイルサーバを使うか、研究室で買ったマシンをファイルサーバにして自前で管理するかしかなかったのだ。
博士課程に進学したころ、当時としては超大容量のストレージを積んだマシンを買ってもらい、これをファイルサーバにすることにした。その管理を任された私としては、トロピカルとはいえ小粒な感じしかしない島の名前を付けるのは嫌だったので、**「eurasia(ユーラシア)」**という世界最大規模の名前を付けて、学内ネットワークの管理者に DNS 登録を申請した。
すると、**「eurasia は南の島じゃないよね?大陸だよね?南どころか島ですらないよね?」**という回答が来た。実にごもっともだ。
それに対して、私は**「こまけぇこたぁいいんだよ!!」**という趣旨の返答をし、「こいつに関わるとめんどくさい」感を与えて押し切った。
eurasia は、研究室初の大容量ファイルサーバとして華々しくデビューし、皆の貴重な研究データをパワフルに受け入れていった。どれだけデータを突っ込んでも、「df -h」を叩いて表示される「Use%」はほとんど変化しなかったことに興奮した(…と言っても、いまなら個人の PC に普通に搭載されている容量でしかないはずだけど)。
そして、ある日突然、eurasia は沈んだ。ストレージが物理的に逝ったのだ。使うことに夢中で満足に RAID を組んでいなかったので、1週間かけて学習した私の強化学習エージェントの学習パラメータも、書きかけの論文も、皆のデータが全部ブッ飛んだ。
その後どうなったかは、忘れた。都合の悪いことは全部忘れるタチなので。
ただ、それ以降私が管理するファイルサーバは信用をなくし、皆が rsync で定期的に全学共用のサーバにバックアップをとることになったことは覚えている。
〜〜Fin〜〜