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ほぼ確実に不正が起きるリリース作業の共通点。

Last updated at Posted at 2025-05-28

その日は、リモート作業でクラウド環境の構築作業がありました。作業者とチェッカーで行なわれるその作業は、手順書にかかれたとおりにするだけです。


「このプロジェクト、ちょっと炎上ぎみなんだよな…」

私はプロジェクトのメンバーではなかったのですが、構築担当者が体調を崩してしまったため、急きょチェッカーとして作業に参加することになりました。


作業内容は、そんなに難しいものではありません。製品のインストーラをポチポチするだけなので、とくに問題なくすすみます。

しかし、それは作業後半に起こりました。


作業者が「あ…」と声をあげます。

モニターには手順書にかかれていない設定画面。

作業者の手は止まっていました。


「この画面、手順書にないね。なんの設定か心あたりある?」

「……。いえ、この画面、はじめてみました。」

「カスタム設定の画面かな。デフォルトはオフか。今回の構築には影響のない設定にみえるけど。」

「…そうですね。」

「検証時には出なかった画面?」

「あ……えと、検証はやったのですが、その……検証環境が完全にお客様環境を再現したものではなくって、大丈夫だと思ってたのですが……」


作業者の声がどんどん小さくなっていきます。

画面は「次へ」をクリックしないと先にすすめないタイプの画面。つまり、チェックをはずしたままにするか、チェックをいれるのか、どちらか決めないといけません。


「あまり重要な設定値じゃなさそうですし…このまま…」

(まぁ、このプロジェクトの状況は聞いている。スケジュール的には、もうやりなおす余裕なんてないよなぁ。)

「……。いや、とりあえず上に相談しよう。あと、お客さんにも状況を伝えよう。」

「…そうですね、わかりました。」


相談の結果は非常にシンプルなものでした。デフォルトがオフのカスタム設定ということで、「オフのまま先にすすんでもよい」と、お客様から言っていただけたのです。

その後は、手順書どおりにすすみ、構築作業は完了しました。


「これで終わりかな」

「はい!終わりです!よかったです!」


作業者の安心した顔をみて、そのときは "あの知らない設定画面" のことはすっかり忘れてしまっていました。

しかし、ふとした瞬間に、思いだすワケです。

「もし、あの場面。私もプロジェクトのメンバーで、私が作業者だったら、相談せずにオフのまま先に進んでたかもな。」


強烈な不安で人をドライブさせると、ほぼ確実に不正が起きる

このセクション名は、パクリです。

以下の記事からそのまま引用させていただきました。


この記事には、「リーダーが不安をあたえることでマネジメントするタイプの場合、組織の心理的安全性が著しく損なわれる。」といった内容のことがかかれています。


記事内の事例も、そのようなものです。

例えば、フォルクスワーゲンの不祥事。排ガスが基準に適合するように数値を捏造した。原因は、排ガス規制をパスさせろとの、上からの強い圧力によるものだったとされている。

例えば、「かんぽ生命」の不正販売。ここでも「ノルマに追い詰められて」という話が出てくる。不正販売の背景には、過大なノルマや数字第一主義の組織文化があった。


───で、このセクション名をみたときに、私は「不安の原因はこんなようなあきらかな圧力だけじゃないよな」と思ったわけです。


  • 作業者の経験が少ない
  • プロジェクトの納期が近い
  • いつも助けてくれる先輩が不在

こんなネガティブな要素もそうですが、


  • 責任感が人一倍つよい
  • 上司から期待されている
  • 人にいいところを見せたい。

ポジティブな要素でさえ、不安のタネになるよなと思ったわけです。


冒頭の構築作業では、プロジェクトの納期が近かったことと、作業者の責任感がつよかったこと、そして「不完全な作業手順書」が不安要素だったでしょうか。


私は、「検証環境が完全にお客様環境を再現したものじゃなくて…」と言った作業者の、不安が的中してしまったような、絶望した顔をわすれられません。

あと付けになってしまいますが、「”作業内容は製品の設定画面をポチポチするだけ”なのに、どこか不安そうに見えたのはそういうことだったのか。」と思ったりしたわけです。

きっと、さまざまな不安を抱えながら作業をしていたのでしょう。


そういう体験をした私は、若手には構築手順書の作成に時間をかけるようにいっています。私が指示をだせるときは、かならずふたりで手順書のランスルーをし、そのふたりで本番作業にあたるようにいいます。

せめて、「この手順書で絶対に大丈夫。」と、作業者とチェッカーのふたりが自信をもって作業ができるようにしてあげたいのです。



以上です。

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