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はじめに

部内メンバーを中心に「紙ヒコーキワークショップ」をやってみました。
普段近しい業務をしているメンバーが参加しましたが、最後には「またやりたい」「今度は違うメンバーともやってみたい」という声も多く、笑顔で終えることのできたワークショップでした。

これから実施する方の参考になればと思い、当日の流れや準備物、工夫点をまとめます。

紙ヒコーキワークショップとは

紙ヒコーキワークショップは、
「計画 → 実行 → レビュー → 振り返り」
というスクラムの基本プロセスを短時間で体験できるゲーム形式のワークショップです。

制約がある中で、チームごとにどう工夫し改善していくかを自然に学べる構成になっています。

実施規模とチーム構成

今回は対面での開催に 53 名が参加しました。
作業スペースの兼ね合いもあり、7 チーム(7〜8 名) と、やや多めの人数での実施となりました。

人数が多い場合でも、制約のある中で効率を上げようとする動きが自然と生まれ、誰かが手持ち無沙汰になることはほとんどありませんでした。人数が多いぶんアイデアも豊富で、作業手順の最適化や改善点に関する議論も活発だったように見受けられました。

準備したもの

ワークショップ運営側で準備した物品は以下のとおりです。

  • A4用紙
  • ペン / 鉛筆
  • はさみ
  • ルール説明書(各チーム分)
  • 予実管理表(各チーム分)
  • タイムスケジュール(運営側のみ)
  • 会場(作業スペース、紙ヒコーキを飛ばす「飛行場」となる机)

チーム数に応じて、紙は多めに準備しておくことをおすすめします。

予実=予定と実績の略

スプリントの流れ

ワークショップは下記のサイクルで実施しました。

フェーズ 時間 内容
計画 1 分 予実管理表に「何機作るか」「何機成功させるか」を記入し、紙ヒコーキ生産作戦を立てます。
実行 3 分 紙ヒコーキを作成し、飛行テストを実施します(成功条件:机 1 個分を越える)。
振り返り 2 分 実績(成功数)・予測誤差(差分)を記録し、次スプリントの改善点を洗い出します。

このサイクルを複数スプリント続けて実施しました。

予実管理表の使い方

予実管理表は、下図の配布用フォーマットを使用しました。各スプリントで「計画(予測数)→ 実績(成功数) → 予測誤差(差分) → 改善案」を記入できるようになっています。
予実管理表(配布用サンプル)

使用した予実管理表は以下の4項目で構成しました。

計画(予測数)

そのスプリントで作成・成功させたい紙ヒコーキ数を事前に記入します。

実績(成功数)

実際に机 1 個分を越えられた紙ヒコーキの数を記録します。

予測誤差(差分)

計画(予測数)との差を「+」「−」で記載します。
例:計画(予測数)10 機 → 実績(成功数)8 機 → 予測誤差(差分)「− 2 」

改善案

次スプリントに向けた改善点を記載します。
例:折り方を統一する、役割分担を見直す、飛ばす人を固定する など

当日のタイムスケジュール(運営用)

参加者には共有せず、ワークショップを1時間で回す想定で、運営側が管理したタイムラインを抜粋して掲載します。

No 進行内容 時間配分(分) 開始時間〜終了時間
1 全体開始 0 11:20〜11:20
2 ルール説明 5 11:20〜11:25
3 スプリント計画(予想数算出) 1 11:25〜11:26
4 計画発表(予想数発表) 1 11:26〜11:27
5 スプリント開始(紙ヒコーキ作って、投げる) 3 11:27〜11:30
6 振り返り(予実集計/改善策練る) 2 11:30〜11:32
7 振り返り発表(改善策共有、代表 2 チーム) 2 11:32〜11:34
8 スプリント計画(予想数算出) 1 11:34〜11:35
9 計画発表(予想数発表) 1 11:35〜11:36
10 スプリント開始(紙ヒコーキ作って、投げる) 3 11:36〜11:39
11 振り返り(予実集計/改善策練る) 2 11:39〜11:41
12 振り返り発表(改善策共有、代表 2 チーム) 2 11:41〜11:43
13 ルール追加 1 11:43〜11:44
14 スプリント計画(予想数算出) 1 11:44〜11:45
15 計画発表(予想数発表) 1 11:45〜11:46
16 スプリント開始(紙ヒコーキ作って、投げる) 3 11:46〜11:49
17 振り返り(予実集計/改善策練る) 2 11:49〜11:51
18 振り返り発表(改善策共有、代表 2 チーム) 2 11:51〜11:53
19 ルール追加 1 11:53〜11:54
20 スプリント計画(予想数算出) 1 11:54〜11:55
21 計画発表(予想数発表) 1 11:55〜11:56
22 スプリント開始(紙ヒコーキ作って、投げる) 3 11:56〜11:59
23 スプリント全体の振り返り(予実集計/振り返り) 10 11:59〜12:09
24 スプリント全体の振り返り発表 10 12:09〜12:19

途中で2回ルールを追加し、状況の変化にチームがどのように適応するかを体験してもらいました。

ルール一覧

実施時に使用したルールは次のとおりです。

  • A4 用紙を 4 つに切って使います。
  • 紙ヒコーキの先端ははさみで丸くします。
  • 同じ人が連続で紙を折ることはできません(1 回折ったら他のメンバーにパスします)。
  • 1 回につき 1 機のみ飛ばせます(まとめて投げない)。
  • 同じ機体は 1 回のみ飛ばせます(同一機体の複数回投擲は禁止)。
  • 各スプリント終了時の仕掛品は破棄します。
  • 各スプリント終了時に予実管理表を提出します。

成功条件:机1個分を飛ばすこと(机を超えればカウントOK)

仕掛品=工程途中の未完了品

当日配布したルールと追加ルールについても画像として添付します。

ルール資料(1)
ルール資料(2)
ルール資料(3)

スプリントを通して見られたチームの工夫・変化

スプリントを重ねるにつれ、各チームでは次のような工夫や改善が自然と発生していました。人数の多さ(7〜8名)を踏まえた工夫も目立ちました。

1. 折り方・作り方プロセスの標準化

  • 折り方の統一により、品質(ルール順守)のばらつきが減少しました。
  • 標準化によって作業が速まり、計画(予測数)精度も向上しました。

2. 得意・不得意を踏まえた役割最適化

  • 折りが速い人を紙折り担当、飛ばし慣れている人を飛行場へ配置するなど、適材適所の割り当てが進みました。
  • その結果、生産ラインが安定し、ボトルネックを最小化できました。

3. 大人数ならではの“進行・管理役”の設置

  • タイムキーパーなどの進行や管理を専任で担う役割を置くチームも見られました。
  • 3〜4名では生まれにくいこれらの分担が、進行管理の安定化やミス・手戻りの削減に寄与していました。

4. “作りすぎ問題”の発生と調整

  • 生産(作る)に偏り、飛ばし工程が追いつかないケースが発生しました。
  • 仕掛品が増えたことをきっかけに、工程間の能力差を見直す議論が進んだチームもありました。

5. 片ハネ形状の採用による短縮

  • 片ハネといった形状の工夫により、作業短縮飛距離達成をしたチームもありました。
  • 成功条件は「飛距離」であり形状の規定はないため、制約の範囲内で自由度を活かす良例となりました。

片ハネ=片翼だけを折った紙ヒコーキを指します。

小さな実験 → 結果の観察 → 次スプリントでの調整、というサイクルが短時間に何度も回り、“改善が積み上がっていく感覚” をチーム全体で共有できました。

結果(評価方法と最終スコア)

今回のワークショップでは、単純な実績数(成功数) だけではなく、計画(予測数)と実績のズレ(予測誤差) をベースの評価に反映しました。アジャイルではチームのベロシティ把握や予測精度の向上が重要であり、「たくさん作れた/飛ばせた」だけではなく「どれだけ計画に近づけたか」 を重視するためです。途中のルール追加(環境変化)もありましたが、そうした変化の中で計画のブレを抑えつつ適応できたかをスコアに反映しました。
そのため、4スプリント合計の実績数(成功数) では E チーム(33)が最多であった一方、予測誤差(差分)を加味した最終スコア では F チーム(31)がトップとなりました。最終順位は以下のとおりです。

  • 1位:F チーム(スコア 31)
  • 2位:D チーム(スコア 25)
  • 3位:G チーム(スコア 23)

詳細は以下の表のとおりです。

チーム 実績(成功数) 予測誤差(計画(予測数) − 実績(成功数)) 最終スコア(実績(成功数) − 予測誤差)
F 32 1 31
D 30 5 25
G 26 3 23
E 33 -12 21
C 22 -8 14
A 18 -8 10
B 10 -5 5

ベロシティ=スプリントあたりの成果量

※ 最終スコアの考え方としては、下記の式のとおり、実績(成功数)から予測誤差(絶対値)を差し引いています。
最終スコア = 実績(成功数) − |計画(予測数) − 実績(成功数)|
予測の精度を重視するため、実績の量だけでなく「計画(予測数)にどれだけ近づけたか」を評価します。

実施してみての学び(参加者の声)

ワークショップ後の振り返りコメントから、次のような気づきが多く寄せられました。

  • 役割を固定したり、ペアを決めることで作業が安定した
    • 得意・不得意をお互いに共有し、自然と役割を固定していたチームもありました。
  • 作業手順(折り方)を明確にするとミスが減った
    • 折り方の標準化により、品質が安定しやすくなったという声が多くあがりました。
  • 短いサイクルを繰り返すことで、徐々に品質が安定していく実感があった
    • 特に 2〜3 スプリント目以降に改善が体感しやすかったという意見が多かったです。
  • 突然のルール追加により、混乱や新たな課題が発生した
    • 生産量が急に落ちた
    • 紙ヒコーキが余ってしまう
    • 生産量が追い付いても、投げる人が不足する
    • 基準を満たさない紙ヒコーキが想定以上に生産されてしまう
      といった“環境変化による影響”を体験できたという声がありました。

参加者からは、アジャイル特有の「短いサイクルによる改善の実感」や、「突然のルール追加(環境変化)への適応に苦しむ体験」という声が多く寄せられました。今回のワークショップは、短いサイクルでの改善と急な環境変化への対応を、体験を通じて学ぶ場になったと考えています。

最後に

初めてのワークショップ運営で段取りに不慣れな場面もありましたが、全体を通して参加者に楽しんでもらえたことが何よりでした。途中、こちらのマイクの声がかき消されるほど盛り上がっており、皆さんが楽しんで参加してくださっている様子がとても印象的でした。

紙ヒコーキという身近な題材でも、短いサイクルで計画・実行・見直しを回す体験は、日常の開発・業務に直結する学びになります。少人数でなくても自然に役割分担が生まれ、プロセス改善の過程をゲーム感覚で学べる点が本ワークショップの魅力だと感じています。今回の気づきを踏まえ、次回は進め方などをさらに改善していきたいと思います。

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