まず読み方から
「Codex」はコーデックスと読む。コーデックスとは、ラテン語に由来する言葉で、巻物に代わって登場した「ページを綴じた形式の本」、つまり写本のことを指す。
OpenAIがこの名前を選んだ理由を公表しているかどうかは確認できなかった。ここでは単語そのものの意味として書いている。
紛らわしい話を先に片付ける
「Codexなら知ってる、コード補完のやつでしょ」と思った人は、別のものを思い浮かべている可能性が高い。
2021年にOpenAIが発表したCodexは、GPT-3をベースにしたコード補完モデルだった。だがこれは2023年にAPI提供が終了している。
2025年5月、OpenAIは同じ「Codex」という名前で、まったく別のプロダクトを出した。今この記事で扱うのはそちらだ。名前が同じなだけで、中身は別物である。
何をするものか
一言で言うと、指示された作業を、最後まで自分で手を動かして片付けるAIだ。
普段使うチャット形式のAIとの違いは、そこにある。チャットAIに「このプログラムのバグを直して」と頼むと、直し方を説明した文章が返ってくる。実際にファイルを開いて書き換えるのは自分の仕事だ。
Codexは違う。ファイルを開き、書き換え、動作を確認し、結果を報告するところまでやる。答えを教えるのではなく、作業そのものを代行する。
この「自分で手を動かす」という性質が、後述するすべての話につながっている。勝手に動けるからこそ、どこまで許すかを決める仕組みが必要になり、決まった時間に自動で動かすこともできるようになる。
触り方は4つある
Codexには入口が複数あり、どれを選ぶかで使い勝手がかなり変わる。
| 入口 | 特徴 | 向いている人 |
|---|---|---|
| ChatGPTデスクトップアプリ | 左上のメニューで「Codex」を選ぶだけ | まず試したい人 |
| CLI(コマンドライン) | ターミナルから操作する | ターミナルに慣れている人 |
| IDE拡張機能 | エディタの中で完結する | 普段からエディタで作業する人 |
| Web版 | ブラウザから使う | 手元の環境を汚したくない人 |
CLIを使う場合のインストールは次の1行で済む。
npm install -g @openai/codex
モバイルアプリからは直接選べない
スマートフォンのChatGPTアプリには、Codexを直接選ぶメニューがない。代わりに「Remote」というタブがあり、そこからパソコン側で動いているCodexの作業に、外出先からアクセスするという形になる。承認待ちの操作を承認したり、進捗を確認したりできる。
つまりモバイルは「操作卓」ではなく「リモコン」だと考えるとわかりやすい。
料金
CodexはFree・Goを含む全プランに含まれている。 有料プラン限定の機能ではない。
プランによって変わるのは使用量の上限だけだ。「まず無料で触ってみる」が普通にできる。
決まった時間に自動で動かす
Codexには、作業をスケジュール実行する仕組みがある。Automations(オートメーション)と呼ばれる機能で、指示内容と実行タイミングを決めておくと、その時刻に自動で動いて結果を残してくれる。
OpenAI自身の社内利用例として挙げられているのは、日次での課題の仕分け、テスト失敗の要約、リリース内容のまとめ、バグの検出といったものだ。毎回同じ形をした、繰り返しの作業が向いている。
「仕掛けておけば勝手に回る」ではない
ここは期待とのズレが起きやすいので、はっきり書いておく。
手元のフォルダを対象にしたスケジュール実行は、実行時刻にパソコンの電源が入っていて、Codexが起動していて、対象のフォルダがディスク上に存在している必要がある。 ノートPCを閉じて帰ったら、その夜の自動実行は動かない。
Web側で動くタスクは電源に依存しないが、その代わり手元のフォルダを直接触れない。
クラウドサービスに設定を登録しておけば勝手に動き続ける、という種類の自動化とは仕組みが違う。
安全性:2つの独立した仕組み
自分のパソコンでAIにコマンドを実行させると聞くと、不安になるのが自然だ。ファイルを消されないか、勝手にネットにつながらないか、関係ないフォルダを覗かれないか。
Codexはこれを、性質の違う2つの仕組みで制御している。人間の職場に例えるとわかりやすい。
1つ目は「壁」。 作業していい部屋の範囲を決めるものだ。標準では「今作業しているフォルダの中なら自由に読み書きしていい」という設定になっている。設定用語では sandbox_mode と呼ばれ、読むだけ・作業フォルダ内は書き換え可・制限なし、の3段階がある。
2つ目は「ノックのルール」。 部屋の外に出たくなったとき、声をかけるかどうかを決めるものだ。標準では「壁の外に出る必要が出たら、そのつど確認する」になっている。設定用語では approval_policy と呼ぶ。
この2つは別々の仕組みで、公式ドキュメントもはっきり区別している。壁は技術的な境界線そのもの、ノックのルールはその境界で止まるかどうかの判断だ。混同すると、意図と違う設定になる。
確認の頻度が少ないのは、安全な操作だからではない
Codexが毎回いちいち聞いてこないのは、その操作が無害だと判断したからではなく、あらかじめ決めた壁の内側にいるからだ。壁の内側なら止まらず進み、外に出るときだけ聞いてくる。
なお、この壁はCodexが直接触るファイルだけでなく、Codexが起動した他のコマンドにも適用される。 テストを実行しようがパッケージを入れようが、同じ壁の内側で動く。
権限設定の詳しい話は、次回の記事で扱う。
AGENTS.md:プロジェクト固有のルールを教える
Codexに「このプロジェクトではこうしてほしい」を覚えさせる仕組みが AGENTS.md だ。プロジェクトのフォルダに置いておくテキストファイルで、Codexが作業のたびに読む「申し送り書」にあたる。
コーディング規約、使ってはいけないライブラリ、テストの実行方法など、毎回説明したくないことをここに書いておく。指示のたびに前提を書き直さなくて済むのが利点だ。
非エンジニアはどう使えるか
ここまで開発寄りの話が続いたが、Codexはコードを書く人だけのものではない。
Record & Replay(レコード&リプレイ)という機能があり、これは自分が作業している画面を録画して見せるだけで、その手順をCodexに覚えさせるというものだ。プログラムを書く必要はない。覚えさせた手順は、前述のスケジュール実行と組み合わせて定期的に走らせられる。
想定される使い道として、解説記事などで挙げられているのは次のような作業だ。
- 毎週・毎月、決まったツールからレポートを取得してまとめる
- ファイルの整理、リネーム、指定フォルダへの移動
- ブラウザとアプリの間でのデータの受け渡し
とはいえ、正直に書いておく
OpenAIによるCodexの位置づけは、あくまで開発者向けプロダクトだ。ドキュメントの置き場所も開発者向けサイトで、公式が挙げる活用例もソフトウェア開発の話が中心になっている。
資料作成や表計算といった一般的な業務を自動でやってほしいなら、CodexではなくWorkを使うほうが素直だ。WorkはChatGPT内のエージェント機能で、スライドやスプレッドシート、レポートといった成果物を作るところまでを担当する。
「自律的に作業してくれるAIを使いたい」という目的に対して、ChatGPTには入口が2つあると理解しておくといい。開発ならCodex、それ以外の業務ならWork、というのが基本の分け方になる。