※この記事はAgileStudioに掲載した記事の転載です。
元記事:「いつ終わるんだ?」先が見えない開発チームが、先を見据える土台を手に入れるまでの試行錯誤(トナリノ)
「いつ終わるんだ?」
あるプロジェクトの開発チームのメンバーが、スプリントを回しながらそうつぶやいていました。
今回ご紹介するのは、POチーム・SMチーム・複数の開発チームが関わる大規模なスクラムプロジェクトに参加していた、とある開発チームです。このチームは「先が見えない」という感覚を抱え続けていました。
この記事は、そんなチームの試行錯誤の記録です。
トナリノは、隣のチームの泥臭い試行錯誤をそのまま届けるコミュニティです。
様々なチームの「うまくいかなかったこと」「試してみたこと」「今の現在地」を記録しています。正解やTipsではなく、あるチームのリアルな試行錯誤をお届けします。
「いつ終わるんだ?」「これでいいのかな?」直近の情報しか届かない開発チームのモヤモヤ
「ここまでにこれをやりきれ」という直近の情報は届きます。でも、「いつ終わるんだ?」「今のやり方で本当にいいのか?」という疑問には、誰も答えてくれません。
答えのないモヤモヤを抱えたまま、スプリントを回し続けていました。
なぜ「直近の情報」しか届かなかったのか
デイリースクラムやスプリントレビュー、スプリントプランニングといった既存のイベントは「今のスプリントをどう動かすか」が中心になります。その性質上、 長期的なスケジュールやチームの課題感、プロダクトのビジョンを話す時間を確保するのは難しく 、どうしても視野が直近に絞られがちです。
加えて、ユーザーの姿が見えていたのはPOチームだけ という状況もありました。プロダクトの方向性や背景はPOが受け取り、「何をいつまでにやるか」というタスクに翻訳されて開発チームに届きます。その結果、開発チームには直近のタスクの情報しか降りてこない構造になっていました。
この構造的な問題は、弊社のアジャイルコンサルグループが「ありたい姿を見つめ直す」機会を設けたことで、より鮮明になりました。将来の機能、アジャイルをやる理由、今向かっているゴール──これらのテーマで話してみると、 メンバー間でゴールの認識がかなりズレていることが判明したのです。 「みんなわかっているだろう」という前提が崩れる、衝撃的な発見でした。
直近のタスクをこなすだけでなく、「自分たちがどこに向かっているか」を揃える場が必要だった──チームのその気づきを受け取ったSMが、動き出しました。
「先を見据える会」を立ち上げた
「やりましょう!」──その一言から、 「先を見据える会」 は生まれました。
- 頻度・時間: 週に1回、1時間
- 参加者: 開発メンバー全員、スクラムマスター(SM)。POは来られる時に参加
POを任意参加にしたのは、多忙なPOが毎回時間を確保できる保証がなかったためです。「来られるときに来てもらえればいい」という設計にすることで、会自体を止めずに回せるようにしました。
この場では、直近のスプリントを超えた長期視点──スケジュール、チームの課題感、プロダクトのビジョン──について話せる時間を確保しました。
うまくいかなかったこと:「話して終わり」になりがち
ただ、運用してみると壁にぶつかりました。 課題は見えてくるのに、改善アクションに繋げるのが難しい のです。「話して終わり」になってしまうことが何度もありました。
対策として、なるべくアクションと担当者をその場で決めるようにしましたが、それでも消化しきれない課題が積み上がっていきました。
「先を見据える会」の先にあったもの
「先を見据える会」を続けた結果、チームに2つの変化が起きていました。
① 心理的安全性の向上
課題を投げやすくなりました。直近のスプリントへの不安だけでなく、「もっと先のことについての心配」を出せる場所が生まれました。
② 視座の変化
「今のスプリントをこなすこと」しか見えていなかったメンバーが、「先を見据えた上で、今のスプリントをどう動くか」を考えられるようになりました。チームの声を借りると:「少し先の未来をチームで見つめることで、『いまのうちにどうしておくべきか』の判断がしやすくなりました」
具体的には、POに四半期のロードマップを展開してもらい、その上でスプリントを組むというサイクルが生まれました。またPOへの向き合い方も変わり、要求をそのまま受け取るのではなく 「なぜそうしたいのか」を問い返せるようになりました。 POの意図や将来構想が見えてくることで、「これは今は対応できない」と根拠を持って話せるようにもなっています。
そうした変化が生まれる一方、課題の積み残しはまだありました。そこへたまたまチーム合宿の機会が訪れました。チームはこれを好機と捉え、先を見据える会で浮き彫りになっていた課題を持ち込んで集中して話し合い、 大きなモヤモヤの多くをそこで解消することができました。 長期的に見据えるべき課題が片付いたことで、週1回の場で扱う話題は自然と目の前のことに移っていきました。気づけば、レトロスペクティブの延長線のような時間になっていたのです。
これは失敗なのでしょうか?
チームはそう捉えていません。先を見据える会を通じて、「先を見据える土台」がチームに育ったからこそ、今は目の前の課題に集中できるようになった。「やり方はわかった。またモヤモヤが積み上がってきたとき、同じ方法で乗り越えられる」という手応えも残りました。
あなたのチームには、「今のスプリントの少し先」を話す場所がありますか?
大事なのは、その場が完璧に機能し続けることではないかもしれません。このチームの「先を見据える会」も、やがて形を変えていきました。それでも、その経験がチームの土台になりました。
「いつ終わるんだ?」というモヤモヤを抱えたとき、あなたのチームには立ち返れる場所がありますか?
このチームの試行錯誤が、皆さんのチームへの「問い」になれば嬉しいです。
この記事は、「トナリノ」から生まれた試行錯誤の記録です。
様々なチームの泥臭い試行錯誤を、定期的に届けています。
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