はじめに
はじめまして。今年秋頃に第一子が誕生したばかりの新米パパで絶賛奮闘中の者です。
パパになるにあたって育児本を読み漁っていたところ「あれ?この内容って、ビジネスのマネジメント的な場面でも参考にできる考え方では!?」と感じる場面が数多くありましたので、是非この機会に体系的に纏めて共有してみたいと思います。
この記事を読み進めるにあたって
この記事で得られることとして、マネジメント層に求められるスキル(コンピテンシー)1 のうち、主に 「人格コンピテンシー」 、中でも 「チーム形成」 に関して、育児という別の視点からも学ぶことができる(マネジメント系の書籍には書かれていない、金フレーズが見つかるかもしれません。)
この記事で記載する
・マネジャーとは、プロジェクトマネジャーや役職者などの意味
・メンバーとは、プロジェクトメンバーや部下などの意味
として広義に捉えて読み進めて頂ければと思います。
テクニカル面のマネジメント手法などに関して、本記事には登場しません
参考書籍
冒頭で参考書籍を紹介した方が、このあと読み進め易いかと思い、まずは書籍を紹介いたします。(3冊登場します。)
⑴0〜3歳までの実践版 モンテッソーリ教育で才能をぐんぐん伸ばす!
モンテッソーリ教育は、棋士の藤井聡太さんが学んでいたことで有名になりましたが、
ITの分野で言えば、Google創業者、Amazon創業者、Meta創業者など、世の中を変革させた著名人も学んでいた教育のようです。
⑵スタンフォード大学に3人の息子を入れた賢い頭としなやかな心が育つ0歳教育
芸能人のアグネスチャンさんは、3人の息子がなんとスタンフォード大学に全員合格しており、その教育論を書かれております。(アグネスさん自身も第一子を出産後、教育学博士号を取得されるために、スタンフォード大学に入学し卒業された教育のプロフェッショナルです。)
⑶フランスの子どもは夜泣きをしない ―パリ発「子育て」の秘密
個人的に、この本に出会って、子育てへのマインドが大きくシフトさせられた本です。
アメリカ人の著者がフランスで育児をすることになり、アメリカとは違って衝撃を受けた育児場面の数々(例えば、フランスの幼児は、夜泣きしないし、癇癪を起こさずコース料理を落ち着いて食べることができる等)に対する要因が書き綴ってあります。
マネジメント人材への手引き
ここからはタイトル通り、上記で紹介した育児本3冊の文章を引用しつつ、この考え方はビジネス面で役に立つのではないか?ということをマネジメント目線に置き換えて書いていきます。
書籍の引用文章の頭に記載する番号⑴⑵⑶は、前項で紹介した参考書籍の頭に割り振った番号を意味しています。
マネジメント目線に纏める上で 「赤ちゃん → メンバー」「親 → マネジャー」 と置き換えて記載しております。決して蔑むような悪意的な意図はございませんので、ご了承ください。
1.心構え
①自分も成長のチャンスと捉えよう!
(2)子育てをしながら親自身も成長できる
マネジメントの機会に限った話ではないですが、何事にも、その機会が「自分も成長できるチャンス!」と頭の中にあるか否かで、物事への姿勢も変わってくるように思います。 「何事に対しても学びがあり、成長があるという心構え」を持つことで、より一層の自己成長に繋がっていくのではないかと思います。
②最大限にメンバーのスキルを引き出すことを考えよう!
(2)子どもがもともと生まれながらにして持っている才能や可能性を最大限に伸ばしてあげることが教育
引用文には、教育と書かれていますが、これはマネジメントのシーンでも同じ考えができると思っています。チームを形成する際に、常に「メンバーのスキルは何か?そのスキルを最大限に発揮するには、どうすれば良いか?」 と考えていくことで、最善のチーム体制に近づけていくことが可能かと思います。言われると当たり前のことではありますが、この考えを”常に抱いておく”ことがとても重要です。
③お手本になる人物に!(メンバーの所作は自分の映し鏡)
(1)最高の教え方は、「お母さんがやるからみていてね」と言ってやって見せることです。
(2)赤ちゃんのお手本になろう
他の人の真似は、大切な学習手段の一つ
汚い言葉を使う人がいれば、それを真似します
逆にきれいな言葉遣いをする人のそばにいれば、その様子を真似して、話し出すときもきれいな言葉を使います
(3)フランス人の親が子どもに待つことを教える方法は、親が待っている姿を真似させるのだ。
マネジメントのシーンでは、メンバーに対して何か「んー...」と感じてしまうこともあるかと思います。そのような際に、相手を責めたりするのではなく、まずは自身の言動や所作に問題はないか?と自問してみることが大切であると感じました。
もしかすると、自分の良くない所作や言動が、メンバーにも映って悪影響を及ぼしているかもしれません。逆の考えとして、自身がメンバーに望む所作を、”まずは自ら行う”ことで、メンバーにも真似され、チームは望んだ方向に進んでいくかもしれないと学びました。
④誰しもが一人前!できると信じる!
(1)「子どもはすべてのことができるように生まれてくるのです。もし、できないことがあるとすれば、物理的に不可能な環境にあるか、どうすればいいのか、やり方がわからないだけなのです。」
(3)赤ちゃんがちゃんと夜をすごすために欠かせないのは、どんな月齢であれ、赤ちゃんがそうできると親が心から信じてあげること
マネジャーが、メンバーのことを「まだ未経験だからなぁ」「入社したばかりだしなぁ」とか思っていると、本来できるはずだったことも、できないようになってしまいます。常に、念頭に「誰しもが一人前!できる!」と信じてあげることで、広い視野を保ち、メンバーの成長を促し、より強力なチーム体制になっていくのだと思います。
自身の経験として、新卒1年目の際に、とあるプロジェクトでのシステム開発のチームリーダーを任せられたことがありますが、無事に完遂することができました。(当時のマネジャー層がそう思っていたのか定かではありませんが、) 「新卒1年目だから、できない」ではなく、「新卒1年目でも、できる」と思ってくれたことで、メンバーの成長機会を逃さず、貴重な経験を若くに培わせてくれたのだと思います。
⑤とにかくまずは観察!すぐに手を差し伸べない。
(1)子どもの動きの段階をよく観察してみることで、わが子の今が見えてくるのです。
(3)「ちょっと待つ」はきわめて大切だ。ごく初期からそうすることで、赤ちゃんの眠りに大きな違いが出るという。「もちろん赤ちゃんが強く要求する時は、ミルクを与えるべきです。泣かせっぱなしにしろと言うのではなく、赤ちゃんに学習するチャンスを与えてほしいのです。」
「観察」は、読んだ育児本に大切な所作として書かれていました。
マネジメントのシーンでは、メンバーが何かに困っている様子が見られた際に、すぐに声掛けして、あれやこれやと教えて手を差し伸べようとすることもあるかと思います。ですが、その行為は、メンバーの成長や学習するチャンスを妨害している可能性があります。
もちろん、見るからに緊急度が高そうな場合は、すぐの声掛けが必要ですが、そうでない場合は、少し待ってみて、どのようにメンバーが動くのかを観察してみてはいかがでしょうか。
2.コミュニケーション
①価値観をメンバーと擦り合わせよう!
(1)父親と母親が違うことを言っていると子どもは混乱します。しかし、夫婦とはいえ、それまで育ってきた環境がまったく違うのだから、子育てに関して意見が食い違うのは当然です。
(2)夫婦で不安のもとを話し合う
それぞれが違う家庭の中で育ってきたので、当然、価値観や世界観が異なります
育児するにあたっての夫婦の話ではありますが「この考えって、全てにおいて大事だよな」と感じた文章です。マネジメントのシーンでも、引用文と同じように、自身とメンバーの間では、価値観や世界観が異なります。(何なら、ある程度の価値観がマッチして結ばれたであろう夫婦以上に違うと思います)
そのため、マネジメントする上では、まずメンバーの価値観と自身の価値観についての擦り合わせが大切になってきます。自身の価値観や不安な点、目指すべきゴールは何か?を相手に伝え、また逆に、メンバーの価値観や不安、目指したいゴールを話し合って理解し合うことで、より良いチームが形成されていくはずです。
②話す時はしっかりと見つめ合おう!
(2)赤ちゃんとしっかり見つめ合う
良い親子関係を築くためにも、赤ちゃんがそばにいるときはスマホを置きましょう
シンプルだけど、とても大切な振る舞いかと思います。
例えば、メンバーから何か口頭で質問を受けた際、「PCを打ちながら、目を合わせず片手間に回答」「PCを打つ手を止めて、目を見て回答」の場合、どちらの振る舞いが好印象に映るかは一目瞭然ですよね。このようなちょっとした動作で、良好な関係を築くことができるのなら、忙しいときであれ、まずは一旦、自分の作業を中断し、真摯に目を見て話してみてはいかがでしょうか。(自身の一時的な作業中断に伴う遅延より、メンバーとの良好な関係を優先して築き上げた方が、結果としてプロジェクトや組織のゴールとしての近道なのかもしれません。急がば回れ、ですね。)
③同じ目線にして話そう!
(3)主導権を握るのが上手な人は、ひとり残らず、子どもに頭ごなしではなく同じ目線で話しかけている。
私は、もともと頭ごなしに怒ったりしない(というより怒ること自体が苦手な)のですが、自身は関わっていないプロジェクトで、問題が生じた際に、頭ごなしに怒鳴りつけるマネジャーを目撃したことがあります。言わずもがな、そのプロジェクトがより良い方向に進んだとは思えず、疲弊し切ったメンバーの顔色を見る毎日でした。
このプロジェクトを例にすると、何かしらの問題が生じた際も、(頭ごなしに𠮟りつけるのではなく、)何が問題だったのかをメンバーと同じ目線に立って、話し合うことこそがマネジャーとしての重要な振る舞いであり、問題の解消に最も近道なのだと思います。そして、結果として主導権を上手く握り、プロジェクトのゴールにもより早く近づけるのだと思います。
④選択するチャンスを与えよう!
(1)子どもの「正しい成長のサイクル」は、「興味・関心を持って自分で選択する」ことから始まります。
(2)赤ちゃんに選んでもらう
赤ちゃんのうちから、自分の日常を決められる能力があることを実感させると、成長していく段階で、意見のある、自主性のある人間に育っていきます
(3)信頼関係を築くためには、厳しくしつつも、柔軟さを忘れてはいけない。つまり、子どもたちに自主性と選択肢を与えるのだ。
これも育児本において、とても大切なこととして記載されていました。
マネジメントのシーンでは、プロジェクトや組織の成功のために、メンバーに役割を与えて管理することがありますが、全てを指示・命令によって動かすのではなく、メンバーに役割を与える際に何かしら選択肢を与える柔軟さも必要なのだと感じました。
メンバーの立場になって考えてみると分かりやすいですね。与えられた仕事を淡々とこなすより、何かしら自分で選択した仕事をこなしていく方が、仕事に対する思いも変わってきます。
結果として、それがマネジャーとメンバーの信頼関係にもつながり、メンバーの自主性・主体性の発揮にも繋がってくるのだと思います。メンバーの自主性・主体性があることで、マネジャーだけでは考えつかないことも生まれ、プロジェクトや組織の成功にも好循環の影響を与えてくれるだろうなと思いました。
⑤お互いの歩みよりポイントを探してみよう!
(3)赤ちゃんに独自のリズムがあるように、家族にも親にもリズムがある。フランスでは、そのバランスを探ることが理想とされている。「親にも赤ちゃんにも、それぞれの権利があります。すべての決定は互いの歩みよりです。」
フランス人の子育ての考え方として、「常に赤ちゃんファーストではなく、親にも権利がある」という考え方をしており、歩みよりポイントを探ることが大切だと説かれています。これは日本人の育児の考え方からすると、違った考え方を持っているなと感じます。
マネジメントのシーンに限らず、何かしら仕事面では、意見がぶつかるような衝突することもあるかと思いますが、この考え方に倣って、そのような場面では、相手ファーストでもなく、逆に自分ファーストでもなく、歩み寄りポイントを探っていく意識が大切だと感じました。
⑥褒めすぎない!達成感に喜びを与えよう!
(3)頻繁に大人に「よくできたね」を言われてそのたびにいい気分になっていると、子どもは肯定的な評価に依存するだけではないか。そのうちだれかの承認がなければ自分に自信が持てなくなるのでは。さらに、何をやっても褒められることに味をしめて、苦労して努力しなくなるかもしれない。
(1)自分で興味を持った活動を、自分で選択し、集中して納得するまでやり遂げたときに、「自分で信じる心=自己肯定感」が生まれます。(略)どの分野においても「成功者」といわれる偉人たちは、何歳になってもこのサイクルが自分の中にまわっているのです。
とても難しい論点にはなりそうですが、フランスの子育てとしては、褒めすぎないことが大切と考えられているようです。理由として、褒められたいという承認欲求が行動起因になっていると、努力不足になったり、冒険しない大人になると考えられています。それよりも、自身の達成感そのものを行動起因にしていく方が適切ということで、褒めすぎず達成感に喜びを感じるように育てていく考え方になっています。
これを読んだ際、「なるほどなぁ。」と感じた反面、「承認欲求をトリガーに行動した場合に、努力不足になることってあるかな?」とも思いました。色々考えてみると、褒められたい想いで行動した結果、もし自身の思い描いた褒め言葉や承認が貰えなかった場合は、「欲求が満たされない > 気分が落ち込む > 次のアクションに気が進まなくなる > 不貞腐れてラクなアクションを取る」という負のループに陥ることはあり得そうだな、と自分なりに解釈をしました。
また、2つ目に引用したモンテッソーリ教育にも記載されている、 「自分の中で成長サイクルが回っていることが望ましく、外部要因である承認から発生する活動というのは、正しい成長サイクルとは異なる」 という点は、まさしくそのとおりだなと感じ、理解ができました。
マネジャーとしては、(正当な評価プロセス自体は必要と思いますが、)あまりメンバーを褒めすぎず、メンバーの目標を”メンバー主体”で立て、それが達成されることに喜びを味わってもらうように仕向けていく営みが大切なのだと思います。(とは言っても、褒めて欲しい面はやっぱり拭いきれないですが 笑)
3.環境整備
①チーム以外の交流の場を提供してみよう!
(2)ほかの赤ちゃんと交流できる機会を増やしてあげると、赤ちゃんの感情がより豊かになり、人とコミュニケーションする練習ができるようになります
(2)周りからたくさん刺激を与えよう
赤ちゃんの脳に多種多様な刺激を与えることは、障害にわたる学習能力や人間関係に必要な基盤づくりになる
これは受け入れ易い内容かと思います。
チームや組織に閉じられた環境にいると、どうしてもクローズドな知識や情報しか取り入れることができません。そのため、(会社として用意されているケースもあるとは思いますが)マネジャーとしては、メンバーに時間的な猶予を持たせる管理を行い、外部の人材や外部環境(例えば、セミナーや勉強会)に触れる機会を設けてあげることが重要だと思います。
結果、刺激を受けたメンバーは、チームや組織に好影響を与えてくれるかもしれません。
②安全な環境を整備しよう!
(1)叱らなくてすむ環境を作っておくことが、親子の良い環境を築きます。
(2)安全な環境をつくる
考えられる危険はあらかじめ積んでおく
赤ちゃんは生まれつき好奇心が強いのです。しかし、安全と危険を見分けることができないのです。
子育てにおける環境のことが話されていますが、マネジメントのシーンでも、メンバーの育成をするにあたって、「安全な環境」を用意すると、伸び伸びとした気持ちで興味・関心のあることだけに集中して取り組むことができます。
例えば、組織やプロジェクトとしての、ルールやプロセスをしっかりと整備することも安全な環境にする行動の一つでしょうし、検証環境など、本番環境には影響を受けない環境を用意することも安全な環境を用意する行動に該当するかと思います。クラウド分野でいえば、組織のガバナンスやセキュリティ面から逸脱しないようガードレールを予め設定しておくことで、考えられる危険を低減してあげることもできますね。プロジェクトであれば、マネジャーに相談し易い雰囲気作りも安全な環境と言えるかもしれません。
いずれにせよ、組織やチームにとっての安全な環境とは? と問いかけ、そのために思いつく環境整備をやっておくことがマネジメントのシーンでも重要だと感じました。
あとがき
育児本から学んだことを纏めてみましたが、いかがでしたでしょうか。育児本に限らず、いつもと違うジャンルに目を向けてみると思わぬ学びや発見があるかもしれません。
自身としては、これまでビジネス書籍やIT書籍は数多く読んできましたが、育児本からは、何か 「人間として大切なもの」 を学びました。
今回まとめてみたこのマネジメント人材の手引きだけでは、もちろんマネジメントが可能になる訳ではありません。
ですが、この「人間として大切なもの」の根幹部分が欠如していると、マネジメントをしていく人物として上手くいかないとも思います。
この手引きをきっかけに、様々なマネジメント手法を取り入れていくことで、マネジメント人材に成長していけると嬉しく思います。