はじめに
機械学習原子間ポテンシャル(MLIP)は、量子化学計算などで得たエネルギーや力を学習し、原子シミュレーションを高速化する手法です。最近では様々な汎用の事前学習モデルが公開されており、対象ごとにモデルを一から作らずに計算を始められる場面が増えています。1
これまでも、UMA(Meta社)やOrbMol(Orbital Industries社)などの汎用MLIPについて取り上げてきました。こうした汎用力場は材料探索の試行錯誤を加速させ、これまでは計算コストのために断念せざるを得なかったような課題に適用できる新しい手法としての地位を固めつつあります。
実際、近年の学会発表でも(理論計算系の学会に限らず)少なくない件数がMLIPを用いた研究に関係しており、研究手法のパラダイムが急速に転換していることが窺えます。
一方で、MLIPの計算が可能になったからといって、その結果が無条件に研究開発上の判断に適用できるとは限りません。汎用モデルとは言え、MLIPはあくまでポテンシャルエネルギー面の予測器に過ぎず、いくら学習データを増やしたところで(学習範囲が広いとはいえども)未知の組成・構造・電子状態に対する予測精度が保証されるわけではないからです。使用しているMLIPが必要な精度を満たしているか、適用範囲を外れていないか、新しいモデルに更新しても結果を再現できるのか。MLIPの導入後は、こうした問題に対処しながら利用することになります。
2026年9月末に、ルール大のBehlerらは、同年1月のCECAMワークショップをもとに、原子シミュレーションにおける機械学習の研究課題と共同基盤の整備に関するロードマップを公開しました(下記のプレプリント)。2
A strategic roadmap for an atomistic machine-learning ecosystem
https://arxiv.org/abs/2609.39090【論文の著者】
Jörg Behler, Michele Ceriotti, Cecilia Clementi, Gábor Csányi, Alin-Marin Elena, Aditi Krishnapriyan, Joseph W. Abbott, Fabio Affinito, Albert P. Bartók, Ilyes Batatia, Filippo Bigi, Florian N. Brünig, Yannick Calvino Alonso, Giuseppe Carleo, Aurélie Champagne, Stefan Chmiela, Marc L. Descoteaux, Ralf Drautz, Alexandra Farcas, Meng Gao, Rohit Goswami, Michael F. Herbst, Christian Holm, James R. Kermode, Alexander L. M. Knoll, Tobias Kreiman, Hoang-Thien Luu, Yury Lysogorskiy, Mihai-Cosmin Marinica, Rocco Meli, Klaus-Robert Müller, Frank Noé, Mohamadhosein Nosratjoo, Simon Olsson, Christoph Ortner, Aldo S. Pasos-Trejo, Anyang Peng, Eric Qu, Andrea Rizzi, Mariana Rossi, Bassem Sboui, Gregor N. C. Simm, Alexandre Tkatchenko, Jacopo Venturin, O. Anatole von Lilienfeld, William C. Witt, Brandon M. Wood, Tigany Zarrouk, Fabian Zills
「機械学習」に代表されるdata-centricな手法は多岐にわたりますが、それらは第一原理計算から分子動力学、統計サンプリングなどのphysics-basedな手法(演繹的もしくは半演繹的な手法)の枠組みの中に巧妙に組み込まれ、シミュレーションの精度・効率・規模のトレードオフを大きく変えてきました。一方で、data-centricな手法とphysics-basedな手法のどちらを選ぶべきか、既存のソフトウェアを最新のハードウェアやライブラリにどう適応させるかといった課題もあります。
data-centricな手法は、学習範囲内(内挿空間)であれば高速かつ良好な精度で値を予測できますが、一般には外挿性に乏しいとされます。physics-basedな手法は、(半)演繹的であるため入力に対する結果は堅牢である一方、計算コストが高いなどの課題があります。
DFTにも交換相関汎関数などに起因する適用限界があり、古典力場にも経験的なパラメータが含まれます。DFTや古典力場は「第一原理的」ではありますが近似を含むという点で万能とは言えません。
こうした状況を受け、2026年1月にスイスのローザンヌにあるCECAMで研究者が集まり、アルゴリズム、モデル、ソフトウェア・ハードウェア基盤、有望な応用について議論しました。先ほどの論文はその議論の成果をまとめたロードマップで、健全で持続可能、かつ影響力のある原子スケールMLのエコシステムを築くための長期目標と具体的な行動を提案しています。
本稿では、その提言を整理し、学術研究と企業での利用にどう結び付けられるかを考えます。
専用モデルから汎用モデルへ
2007年のBehler–Parrinello型ポテンシャルは、局所的な原子環境から全系のエネルギーを組み立て、原子数の異なる系に対しても同じニューラルネットワークを適用できることを示しました。3その後、NequIPなど、回転に対する変換則をモデル内部に組み込む手法によって、少ない学習データでも高い精度が得られることを示しています。4
近年ではMACE-MPなどに代表されるように、多様な物質を学習したモデルを出発点として必要に応じて対象系について追加学習する使い方が可能になりました。1対象ごとに専用モデルを作る方法に加えて、公開モデルをそのまま使う、追加学習して使う、といった選択肢が増えてきています。この変化を踏まえると、研究開発ではモデルそのものの改良とともに、異なるモデルを比較し、用途に合わせて選び、継続して利用できる環境も必要になります。
ソウル大のHanらは今年4月に公開されたレヴューの中で、「反応性MLIP」の成功はモデルアーキテクチャとデータセットサンプリングという、相互に関連する2つの柱にかかっていると述べています。5ここで「反応性MLIP」とは、ポテンシャル極小点(平衡構造)近傍だけでなく準安定~遷移状態の構造とエネルギーを高精度で記述できるような "Reactive MLIP" を指します。
記述可能な材料を広げること、記述可能な構造(エネルギー)を広げること、この両方が真に汎用的なMLIPの構築に寄与します。そしてこれらの仕事は少数の研究グループだけで成し得るものではありません。Behlerらの論文はこの点について言及しています。
ロードマップの全体像
Behlerらの論文が主張する方針を端的に表すのが、“Coordinate, do not consolidate” という節です(本文VII章a節)。これは、モデルや実装を一種類に揃えるのではなく、多様な方法が共存するための相互運用性を整えるべきだ、とする提言です。2
汎用モデルの開発には大規模なデータセットと計算資源が必要になります。また、実際の研究に利用するには、計算ライブラリやソフトウェアの整備・開発も欠かせません。Behlerらは、個々の研究開発を維持しながら、データの互換性、ソフトウェア間の接続、モデルの評価方法などについて共通の基盤を整え、研究コミュニティ全体で継続的に改善していくことを提案しています。
以下の図は、第VII節の8項目について、筆者が「データと検証」「接続と継続的な運営」に分けて整理したものです。2図中のa〜hは原論文の項目に対応します。(矢印は整備すべき内容と目的の関係を表しており、それ以上の意味はありません)
正確には、ロードマップというよりも原子シミュレーション周辺のエコシステムはかくあるべき、という戦略的な提言と読むのが適切なように思われます。
項目 c. の「ブラインドテスト」とは、正解を事前に公開せずに予測性能を比較する試験のことです。一方、正解が既知のモデル問題は、特定の要因を切り分けて手法の性質を調べるために用います。
必要な精度をどう確かめるか
エネルギーや力のRMSE(二乗平均平方根誤差)が小さくても、MDが長時間安定に動き、必要な物性を再現するとは限りません。力の予測精度とシミュレーションの精度が必ずしも対応しないことは、既存のベンチマークでも示されています。6
例えば、注目している原子周辺のエネルギーやポテンシャル面の勾配は正確に記述できていたとしても、ポリマーの密度の予測値が実験値と乖離してしまう、といったことはしばしば発生します。
触媒の候補を比較するのであれば、全構造にわたる平均誤差に加え、候補間の比較を左右する反応障壁や反応熱の精度を(実験値との比較も含めて)検証すべきです。分子の拡散を調べるのであれば、力の精度だけでなく、拡散係数の再現性や統計的な収束も確認する必要があります。何の値を得たいかによって求められる計算条件は変わります。
予測値の不確かさの推定も、そのまま信頼できるとは限りません。実際、ACEを用いたアンサンブル法とD-optimalityの比較では、不均質なデータセットで誤差を過小評価する場合が報告されています。7不確かさを出力することに加え、推定値が実際の誤差と統計的に対応しているかを確かめ、必要に応じて不確かさの推定方法を較正する必要があります。
運用面では、不確かさが大きくなったときに計算を止めるのか、(DFTなどで)追加計算を参照して確認する(さらには参照エネルギーを求めて補正する)のか、追加学習へ進むのかまで決めておくのが実用的です(全パラメータを更新するファインチューニングの負担が大きい場合は、等変LoRAなどのパラメータ効率の高い追加学習を検討する)。逆に、未知の系・条件で不確かさや誤差の小さな「良好に見える」推定値が得られた場合であっても、それだけでモデルの精度が保証されたと判断するのはやや危険です。
教師データの精度
MLIPの予測値が教師となるDFT計算に完全に一致したとしても、DFT自体の近似に由来する誤差はどうしても残ります。「教師計算をよく再現すること」と「実験をよく再現すること」は別の軸で評価する必要があります。これに関して、実験スペクトルを用いてDFT由来のMLIPを補正する研究なども存在します。8
上記の区別によって、モデル改善の方針も変わってきます。教師計算への近似が不十分なら、学習データやモデルを改善する余地があります。一方、教師データの計算値自体がそもそも対象とする現象を十分に記述できていない場合は、同じ水準のデータを増やすだけでは解決しません。より高精度な計算や、実験を用いた検証・補正を検討することになります。
データを追加するときにも、構造と数値だけでなく、計算条件と出所を記録すべきです。異なる条件で計算されたデータを混ぜるのであれば、その差をモデルにどう扱わせるか、対象の予測にどの程度影響するかを確認する必要があります。
マルチドメイン学習による汎用MLIPの構築
学習データを増やしてより堅牢なモデルを作るという観点で言えば、分子・結晶・表面など複数の領域にまたがるデータを学習し、汎用MLIPを構築する研究も進んでいます。このような場合、対象となる系が多様となることで複雑さが増すだけでなく、データセット間で異なるDFT汎関数や基底関数などの計算条件を、どのように扱うかが課題となります。
例えば、MACE-Osaka24では、TEA(Total Energy Alignment)という前処理でエネルギーの基準差や系統差を近似的に補正し、分子系と結晶系のデータを統合しています。9
DPA-2では、原子環境の表現を共有しながら、データセットごとに出力部を分けて事前学習します。10以前紹介したMeta社のUMAも、分子・材料・触媒などのデータを共同学習し、再現するDFT計算条件を識別する情報をモデルに入力する設計になっています。11
SevenNet-Omniでは、計算条件に固有のパラメーターへの正則化と、少量の構造を別の参照計算条件で計算し直したデータを組み合わせ、分子・結晶・表面などの領域をまたぐ予測性能を改善しています。12
このように、異なるデータを活用する方法には、教師データを前処理で整合させる方法と、計算条件ごとの違いをモデルに学習させる方法があります。複数領域のデータを学習したモデルでも、共通のポテンシャル面を予測するのか、指定した計算条件に応じて予測するのかは異なります。
個人的な意見ですが、真に「汎用」と呼べるMLIPが登場するのもそう遠くは無いように思われます。
参考までに、上記4モデルのアーキテクチャの比較表を示します。
| モデル | 基本アーキテクチャ | MoE / Dense | 異なる計算条件への対応 | 主な特徴 |
|---|---|---|---|---|
| UMA | eSENベースの等変GNN | S/M:MoLE型、L:Dense型 | 計算条件・電荷・スピンなどを入力し、モデル内部で条件付け | MoLEでは複数の線形専門家を混合し、高いモデル容量と推論効率を両立 |
| DPA-2 | Attentionを利用する共通記述子+タスク別Fitting Network | Dense型(マルチヘッド) | 共通の原子環境表現を学習し、データセット別の出力ネットワークで予測 | 異なるDFT計算条件のデータから共通の表現を獲得 |
| MACE-Osaka24 | MACEベースの等変GNN | Dense型(単一モデル) | TEAで異なる計算条件のエネルギー・力を整合させてから統合学習 | モデル構造を変更せず、分子系と結晶系のデータを統合 |
| SevenNet-Omni | SevenNet-MFベースの等変GNN | Dense型(タスク条件付き) | 共有パラメータとタスク固有パラメータを組み合わせて予測 | タスク固有パラメータの正則化と少量の共通参照データで領域間転移を改善 |
研究開発への含意 ― 計算高速化の先へ(私見)
以下は、ここまで取り上げてきた論文の内容を踏まえた上での筆者の私見です。
MLIPの発展によってエネルギーや勾配を高速かつ高精度に計算できるようになっても、それだけで化学反応のすべてを効率的にシミュレーションできるわけではありません。個々の結合の生成・切断を扱えても、実験で観測される反応の時間経過や生成物の割合まで、そのまま予測できるとは限らないためです。
例えば、通常の分子動力学(MD)シミュレーションでは、原子の振動を追跡するために細かい刻み幅が必要です。そのため、活性化障壁を越えるような稀な反応(レアイベント)を観測するには長いシミュレーション時間が必要で、計算が高速化されたとしても膨大な計算ステップを要する場合があります。13また、複数の反応が競合する系では、重要な反応経路や中間体を見落とすと、個々の過程のエネルギーを正確に評価できても、オーバーオールの反応速度や選択性を誤って予測する可能性があります。14
こうした問題に対処する方法として、MLIPを系統的な反応経路探索や拡張サンプリングと組み合わせるアプローチが考えられます。例えば、反応経路や中間体を探索し、各素反応の速度定数を評価したうえで、得られた反応ネットワークの時間発展を計算する方法です。これにより、原子の運動を最初から最後まで逐一追跡することなく、各化学種の濃度変化や生成物の割合を予測できます。一方、拡張サンプリングは、通常のMDでは到達しにくい構造や反応領域を探索し、自由エネルギー差などを評価する方法です。目的に応じて、これらの手法を使い分け、あるいは組み合わせることができます。15
反応速度ではなく平衡状態の統計的性質を求めたい場合には、別のアプローチも考えられます。例えば、Boltzmann generatorは、ニューラルネットワークによって配置を生成し、平衡分布の効率的なサンプリングを目指す手法です。通常のMDのように運動方程式を逐次積分して軌跡を生成する必要がないため、運動方程式の求解そのものを高速化する方法とは異なります。16
平衡分布を再現できても生成された構造の列を物理的に妥当な時間発展として解釈できるとは限りません。例えば、二状態の平衡存在比が同じでも、その間の活性化障壁の高さが異なれば状態間の遷移速度は変わります。配置の分布を再現するだけでは、反応速度や緩和時間といった速度論的な性質までは評価できません。熱力学的な平衡と反応速度論では、必要な情報も適切な計算手法も異なります。
一般に、計算化学における課題は多くの場合、エネルギーや力の評価に要する時間を短縮することだけでは解決しません。目的とする物理量に応じて、配置・配座・反応経路の探索や、統計的性質・時間発展の評価を適切に行う必要があります。
Behlerらの論文が示す研究開発の方向性も、MLIPなどによるポテンシャルエネルギー面の計算高速化に限定されていません。粗視化、拡張サンプリング、生成モデルによるサンプリング、時間発展の学習に加え、電子密度やハミルトニアンなどを予測する電子状態計算のサロゲートモデルも、研究・改善すべき対象として挙げられています。2 今後は、こうした方法を計算目的に応じて使い分け、あるいは組み合わせることで、従来は計算コストや時間スケールの制約によって扱いにくかった問題に取り組むことが期待されます。
MLIPの導入後には、計算時間のどこが支配的になったかを改めて調べる必要があります。勾配の評価をさらに速くするのか、レアイベントの探索方法を変えるのか、自由度を粗視化するのか。次に改良すべき箇所は、求める物性と現在の計算手順によって異なります。
一方、計算が高速化した結果、初期構造の作成、計算条件の設定、計算結果の収集や解釈など、人間による作業や判断が研究全体の進行を制限する場合も考えられます。こうした状況では、LLMエージェントなどを活用して各工程を連携させ、少なくとも理論計算のワークフローについては自律化を積極的に進めるべきでしょう。
人間がボトルネックになっているのであれば、目指すべきは自然と "Closed-Loop" (AIによる自律探索)になるでしょう。ここ最近の目覚ましいAIの発展を踏まえれば、こうした研究フレームワークの実現可能性は年々高まっている(=導入の障壁が世界的に下がってきている)ように思われます。
技術者は勿論ですが、経営に関わる立場にいる人間こそAIを使いこなし、手元のマシン上でLLMを動かしてみる、さらにはエージェント化する、といった体験をしてみて欲しいと思います。
もっとも、研究ワークフローの自律化が進むほど、計算結果の信頼性をどのように担保するかという問題が大きくなります。計算の実行や次の探索条件の選択を自動化するには、モデルの適用範囲や予測誤差を把握し、結果を検証できる仕組みが必要です。
学術研究では、新しいMLIPの開発に加え、既存モデルの適用範囲や誤差の原因を明らかにすることにも意義があります。例えば、評価条件を揃えたうえで、学習データやモデル設計の違いが、未知の構造や反応に対する予測精度にどう影響するかを調べる研究です。評価用データと実装を公開すれば、他の研究者も結果を検証し、新しい手法と比較できます。また、MLIPを反応経路探索や拡張サンプリングと組み合わせ、反応ネットワークや速度論的性質をどこまで正確に予測できるかを明らかにする研究も、理論化学の重要な仕事になるでしょう。
企業のR&Dでの導入においては、公開ベンチマークの成績を参考にしつつ、実際に扱う材料や反応で必要な精度を満たすかをまず確認すべきです。そのうえで、計算結果の採否基準や、精度が不足する場合の追加計算・再学習の手順を決めておく必要があります。導入効果についてはMLIPの計算速度に目が行きがちですが、本来は参照データの生成や追加学習、サンプリング、結果の検証までを含めて、要した時間と費用と労力を加味したトータルのコストで評価すべきでしょう。
その上で、従来手法と比較して研究期間や費用をどれだけ削減できるか、研究開発上の成果にどの程度寄与するかを検討する必要があります。MLIP導入の費用対効果が低い場合には、対象課題との適合性、適用規模、既存手法と比較した総合的な便益を再検討すべきです。また、研究テーマ自体のROIも踏まえて、MLIPへの投資が妥当かどうかを判断する必要があるでしょう。
モデルを更新・変更する際にも再検証が必要です。共通のAPIで容易に差し替えられる場合でも、新しく登場したモデルで必要な精度が維持されているとは限りません。社内独自の検証用データと評価手順を整備し、モデルとは独立に管理しておけば、変更前後の性能を同じ基準で比較できます。(非公開のベンチマークテストを用意しておくという意味合いです)
こうした検証の仕組みは大学と企業が共同で整備することが可能です。入出力の仕様や評価手順、検証用ソフトウェアの整備だけなら、社内の機密データを公開する必要はありません。企業は自社の独自データや競争領域の知見を守ったまま、共通基盤の恩恵を受けられます。
これは、企業のR&Dにとっても大きな意味を持ちます。信頼性を客観的に確かめられる共通の物差しがあれば、AIシミュレーションを材料探索や製品開発の意思決定に使うための社内の説明責任も果たしやすくなります。また、各社がばらばらに検証手法を作り直す無駄も減ります。その分のリソースを、競争力の源泉である自社固有のデータやモデルの構築に振り向けられます。
理想的には、こうした共同研究の計画を策定し、モデル開発だけでなく共通基盤の開発・保守に必要な人員と予算も最初から組み込んでおくべきです。研究基盤への投資は、現在の研究を支えるだけでなく、次の世代のR&Dを加速する土台づくりでもあります。
参考文献
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I. Batatia et al., “A foundation model for atomistic materials chemistry,” arXiv:2401.00096v3. https://arxiv.org/abs/2401.00096v3 ↩ ↩2
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J. Behler et al., “A strategic roadmap for an atomistic machine-learning ecosystem,” arXiv:2609.39090v1 (2026). 図は第VII節の提言を再構成したもの。MLIP以外の研究対象については第II・III節を参照。https://arxiv.org/abs/2609.39090v1 ↩ ↩2 ↩3 ↩4
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J. Behler and M. Parrinello, “Generalized Neural-Network Representation of High-Dimensional Potential-Energy Surfaces,” Physical Review Letters 98, 146401 (2007). https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.98.146401 ↩
-
S. Batzner et al., “E(3)-equivariant graph neural networks for data-efficient and accurate interatomic potentials,” Nature Communications 13, 2453 (2022). https://doi.org/10.1038/s41467-022-29939-5 ↩
-
J. Kim et al., “Reactive Machine Learning Interatomic Potentials for Chemistry and Materials Science,” Chemical Reviews, 126, 4467–4510 (2026). https://doi.org/10.1021/acs.chemrev.5c00728 ↩
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F. Shuang et al., “Model Accuracy and Data Heterogeneity Shape Uncertainty Quantification in Machine Learning Interatomic Potentials,” arXiv:2508.03405 (2025). ACEにおけるアンサンブル法とD-optimalityの検証。https://arxiv.org/abs/2508.03405 ↩
-
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T. Shiota et al., “Taming Multi-Domain, -Fidelity Data: Towards Foundation Models for Atomistic Scale Simulations,” arXiv:2412.13088v2 (2025; 初稿2024年). https://arxiv.org/abs/2412.13088v2 ↩
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-
B. M. Wood et al., “UMA: A Family of Universal Models for Atoms,” arXiv:2506.23971v2 (2026; 初稿2025年). https://arxiv.org/abs/2506.23971v2 ↩
-
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-
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-
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-
F. Noé et al., “Boltzmann Generators — Sampling Equilibrium States of Many-Body Systems with Deep Learning,” arXiv:1812.01729v2 (2019). https://arxiv.org/abs/1812.01729v2 ↩