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正直に告白しよう。私は、技術が苦手なエンジニアだ。

新しいライブラリの仕様書を読んでも、一回で理解できた試しがない。 天才たちが「ああ、あれね」と一瞬で飛び越えていく概念の谷間で、私はいつも盛大に転び、泥まみれになり、時には遭難しかけながら、這うようにして進んできた。

長年、この「理解の遅さ」や「センスのなさ」は、私にとって克服すべき欠点であり、深いコンプレックスの源泉だった。

しかし、シニアと呼ばれる年齢になり、チームを支える立場になった今、ふと思うことがある。 この「技術が苦手である」という事実は、実はマネジメントや育成において、得難い才能なのではないか。

「はまりどころ」を経験済み

技術が得意なエンジニア、いわゆる「天才」たちの視界はクリアだ。 彼らはゴール(実装完了)までの最短ルートが見えている。だから、若手がなぜそこで躓いているのか、本質的には理解できないことがある。 「ドキュメントに書いてある通りにするだけだよ」 彼らにとってそれは真実だが、迷っている人間にとっては絶望的な言葉だ。

一方、私は違う。 私は、彼らが飛び越えていったその道のりの、ありとあらゆる場所で転んできた実績がある。

「ここで型のエラーが出るだろう?」 「この設定、公式通りだと動かないよね」

私には、凡人が陥る「はまりどころ」が、頭の中に鮮明に描かれている。 それは、私が優秀だからではない。私が過去にそこで同じように悩み、時間を溶かし、悔し涙を流した、痛みの記憶そのものだからだ。

「一足飛び」を知らないから、階段を作れる

技術が苦手な人間には、もう一つの強みがある。 それは、「一足飛びの理解」をした経験が皆無である、ということだ。

天才は、AからEへと軽やかにジャンプする。 しかし、私はAからBへ、BからCへと、一歩ずつしか進めない。時にはB'(Bダッシュ)のような無駄なステップすら踏んでしまう。

だからこそ、うまくいかずに立ち尽くしているメンバーに対して、私は「魔法のようなコーチング」をする必要がない。 ただ、自分が辿ってきた泥臭いステップを、そのまま分解して渡してやればいいのだ。

その説明は、極めて解像度が高い。 なぜなら、それは私が必死に確保してきた、生存のための足場そのものだからだ。 私の「説明」に、抽象的な概念論は混じらない。あるのは、痛みと試行錯誤に裏打ちされた、具体的な「手順」だけ。泥臭いのだけれど。

共感は、同じ高さの目線から生まれる

そして何より、技術が苦手であることは、深い 「共感」 を生む。

エラーログを前にして途方に暮れるあの孤独感。 自分だけが取り残されているような焦燥感。 それを私は、現在進行系で知っている。

だから私は、困っているメンバーを「なんでこんなこともわからないんだ」と断罪することができない。 「わかるよ、そこ辛いよね」と、心から頷くことができる。

この心理的な安全地帯を提供できることこそが、技術的負債ならぬ「技術的弱者」である私が、チームに対して提供できる最大の価値なのかもしれない。

結論:遅いことは、悪いことではない

もしあなたが、技術のキャッチアップが遅く、周りの優秀なエンジニアに引け目を感じているなら。 その劣等感を捨てなくていい。むしろ、大切に抱えていてほしい。

その「わからなさ」は、いつか必ず、同じように迷える誰かを救う手掛かりになる。 天才たちが空を飛んでいく間に、私たちが地を這って作ったその無骨な階段こそが、多くの「普通」のエンジニアたちが歩くための、確かな道になると信じたい。

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