3
1

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?

個人開発をiOSアプリで半年やって「勝てない」と悟った話

3
Posted at

「個人開発したアプリがバズって、会社に辞表を叩きつけるんだ…!」——そんな夢を見たことがある人は、私だけではないはずです。

結論から言います。個人開発、半年やってみたけど、勝てる気が全くしません。AI時代到来でアプリ開発は「ちょろい」と思っていたのに、実際にぶつかったのはアイデア枯渇・孤独との戦い・リリース後の無風という3つの壁でした。

個人開発とは、会社の後ろ盾なしに、企画からアイデア出し・開発・リリース後の運用までを一人でやり切る取り組みのことです。

この記事は、週末のほとんどを捧げてiOSアプリ開発に挑戦し、見事に砕け散った私の、リアルで、切実で、ちょっぴり情けない体験談です。同じように「勝てる気がしない…」と感じている人の、心の友になれたら嬉しいです。

個人開発はAIで「ちょろい」と思っていた

AIを使えば個人開発が簡単だと思っていた当初の楽観を表すイラスト

個人開発を始めようと思ったきっかけは、実に現代的でした。そう、AIの進化です。

「AIを使えば、コード一行書かなくてもアプリが作れるらしい」

そんな魔法のような言葉が、私の耳元でささやきました。実際に試してみると、本当に簡単なアプリならAIへの指示だけでサクッと作れてしまう。これはすごい時代になったぞ、と。

「これならイケる!アイデアさえあれば、私も印税生活だ!」

そんな風に本気で思っていたのです。数ヶ月前の自分を、正直ひっぱたいてやりたいですね。現実は、そんなに甘くありませんでした。

第一の壁:肝心の「良いアイデア」が全く湧いてこない

アプリをサクッと作れる技術は手に入りました。しかし、ここで根本的な問題にぶち当たります。

「で、何を作るの?」

これが本当に、全く思いつかないのです。

世の中には、星の数ほどのアプリがすでに存在します。Todoリスト、天気予報、SNS…。自分が「これ、あったら便利かも」と思うようなアイデアは、大抵誰かがもっとすごいクオリティで実現済み。

「近所の野良猫の出現位置をリアルタイムで共有するアプリとかどうだろう…」

「飲んだビールの銘柄だけを記録していく、超ニッチなSNSは…」

我ながら、くだらないアイデアばかりが浮かんでは消えていきます。仮にこの野良猫アプリやビール記録SNSを作ったとして、誰が使うというのでしょうか。私くらいかもしれません。

結局、「多くの人が抱える、まだ解決されていない課題」なんて、凡人の私が簡単に見つけられるはずもなかったのです。ここで、最初の「あれ…?」を感じ始めました。

第二の壁:孤独と戦うモチベーション維持

会社での開発は、いわばチームスポーツです。

周りには仲間がいて、進捗を管理してくれるマネージャーがいて、何より「締め切り」という絶対的な強制力があります。サボっていたら、普通に怒られますからね。

しかし、個人開発は違います。そこは、誰の目もない、あまりにも自由な荒野でした。

平日は本業でクタクタ。週末、「さあ、開発するぞ!」と意気込んでPCを開くも、気づけばYouTubeで面白動画を観ていたり、Netflixの新着ドラマを一気見していたり…。

「まあ、明日やればいっか…」

その「明日」が永遠に来ないことを、私たちは知っています。誰も褒めてくれない。誰も急かしてくれない。自分を律する強い精神力がなければ、あっという間に時間は溶けていくのです。

追い打ちをかけるのが、SNSの存在。

Xを開けば、「#今日の積み上げ」タグでキラキラした報告が目に飛び込んできます。「新機能リリースしました!」「月間収益100万円達成!」そんな投稿を見るたびに、Netflixを見ていた自分との差に絶望し、静かにスマホを閉じるのでした。

第三の壁:リリースの絶望。荒野に響くは己の声のみ

それでも、なんとか一つのアプリを形にしました。本当に、ちっぽけな、自分でも「これいる?」と首を傾げるようなアプリでしたが、それでも我が子はかわいいものです。

Appleの厳しい審査を乗り越え、ついにApp Storeに公開された日の高揚感は、今でも忘れられません。

「さあ、世界よ、私のアプリを見ろ!」

しかし、世界は驚くほど私に無関心でした。

リリース初日。ダウンロード数は「数回」。内訳は、私、だれか。その後、アナリティクスのグラフが動くことはありませんでした。

毎日、何度もApp Store Connectを開いては、ダウンロード数が「0」であることを確認する作業。あれは、精神にきます。まるで、誰もいない荒野で「おーい!」と叫び続けているような、途方もない虚しさ。

さらに追い打ちをかけたのが、自分で自分のアプリを使ってみても、いまいち「しっくりこない」という事実でした。

「ここのボタン、何か押しにくいな…」

「思ったより、この機能使わないな…」

自分で考え、自分で作ったはずなのに、ユーザーとしての自分すら満足させられない。この現実は、私の心をへし折るのに十分すぎる威力を持っていました。

個人開発の猛者を見て「勝てない」と悟った瞬間

心がささくれ立っていた私は、ある日、いわゆる「稼いでいる人」のアプリを片っ端からダウンロードしてみました。

その結果、私は完全に心を折られます。

レベルが、違いすぎる。

UI(見た目)は洗練されていて、操作していて気持ちがいい。

UX(使い心地)は細部まで計算され尽くしていて、全くストレスがない。

機能はシンプルながらも、ユーザーの「これが欲しかった!」を的確に捉えている。

自分のアプリが、まるで小学生の夏休みの工作のように見えました。ガタガタで、色もまばらで、何より「ユーザーのため」という視点が決定的に欠けていたのです。

さらに、そうした成功者たちのインタビュー記事やブログを読んで、とどめを刺されました。

「最初の1年間は、1日も休まず12時間開発に没頭しました」

「ユーザーからの問い合わせには、24時間365日、5分以内に返信していました」

「1,000個のアイデアを出して、そのうち100個のプロトタイプを作り、最終的に残ったのがこのアプリです」

…無理だ。

私には、そこまでの情熱も、時間も、才能もない。

彼らが積み上げた途方もない努力量を前にして、私はあっさりと白旗を上げました。同じ土俵にすら立てていない。勝てるとか勝てないとか、そういう次元の話ではなかったのです。

ここで私のモチベーションは、完全にゼロになりました。

「稼ぐ」という呪縛から解放されて見えたもの

個人開発で「稼ぐ」という呪縛から解放された心境を表すイラスト

燃え尽きて、PCを開くことすらしなくなった数週間後。ふと、ある考えが頭をよぎりました。

「そもそも、なぜ私は稼ごうとしていたんだっけ?」

個人開発を苦しいものにしていたのは、「稼ぎたい」「成功したい」という強すぎる思い込みだったのかもしれません。その呪縛から自分を解放してみることにしました。

収益化のコードを全部消して、ダウンロード数を気にするのもやめる。ただ、自分が本当に作りたいもの、自分が使って楽しいと思えるものを作ってみよう。

そう思うと、不思議と心が軽くなりました。

誰にも評価されなくてもいい。自分が楽しいと思えれば、それで十分じゃないか。技術的な好奇心を満たすため、新しいプログラミング言語の勉強のため。そんな「趣味」として個人開発を捉え直したとき、ようやく私は、純粋にコードを書く楽しさを取り戻せた気がします。

個人開発で学んだ3つのこと

勝てなかったのは事実です。それでも、半年間の挑戦は無駄ではありませんでした。振り返ると、少なくとも3つの学びが残っています。

  • アイデアを形にする力: 「作りたい」から「動くもの」に変換する一連の工程を、一人で最初から最後までやり切った経験。
  • 問題を一人で解決する力: 相談できるチームがいない中で、設計判断も技術選定もすべて自分で切り分けて決める訓練になった。
  • マーケティング視点: 「誰が使うのか」「なぜ使われないのか」を自分ごととして考えざるを得なかったことで、作り手目線から使い手目線への切り替えを覚えた。

そこで得た学びは、必ず本業にも活きてきます。

よくある質問

Q1. 個人開発はやめたほうがいいですか?

A1. 「稼ぐこと」を目的にするなら、やめたほうがいい場合もあります。個人開発で大きく稼げるのは一握りの天才か、狂気的な努力ができる人だけだからです。ただし「学ぶこと」「楽しむこと」を目的にするなら、続ける価値は十分にあります。

Q2. 個人開発でアイデアが浮かばないときはどうすればいいですか?

A2. 「多くの人が抱える課題」を探そうとするより、自分が本当に欲しいもの、自分が使って楽しいものから考えるのが近道です。誰もが使う大きな課題は、たいてい既に誰かが解決しています。

Q3. 個人開発でモチベーションを維持するコツはありますか?

A3. 「稼ぐ」「バズる」という結果指標から離れることです。ダウンロード数を毎日確認する行為は精神的な消耗が大きく、モチベーションを削ります。技術的な好奇心や趣味として捉え直すと、続けやすくなります。

Q4. 個人開発と会社員、どちらが幸せですか?

A4. 一概には言えませんが、個人開発の孤独と絶望を経験すると、チームの存在・安定した給料・責任の分散といった会社員の環境のありがたみに気づけます。両方を経験したうえで判断するのがおすすめです。

Q5. AIを使えば個人開発は簡単になりますか?

A5. 「動くものを作る」工程はAIで大幅に楽になります。しかし「何を作るか」「誰のために作るか」というアイデア出しや、リリース後に使われ続ける工夫はAIが代わりにやってくれません。技術面のハードルが下がった分、企画力の重要性はむしろ増しています。

Q6. 個人開発に挑戦する意味はありますか?

A6. あります。たとえ収益化に失敗しても、アイデアを形にする力・一人で問題を解決する力・マーケティング視点は確実に身につきます。これらの学びは本業にもそのまま活きてきます。

結論:サラリーマンエンジニアは、結構幸せなのかもしれない

サラリーマンエンジニアとして働く安心感を表すイラスト

そして、もう一つ大きな気づきがありました。

それは、会社でコードを書いている自分は、案外幸せなのかもしれない、ということです。

個人開発の孤独と絶望を味わったからこそ、サラリーマンエンジニアのありがたみが身に沁みました。

  • 仲間がいる: 一緒に悩み、助け合えるチームがいる。
  • 安定した給料: アプリが1本もダウンロードされなくても、毎月きちんとお金がもらえる。
  • 挑戦できる環境: 会社の潤沢なリソースを使って、個人では触れないような大規模な開発や新しい技術に挑戦できる。
  • 責任の分散: 何か問題が起きても、一人で全てを背負う必要はない。

もちろん、会社には会社なりのストレスがあります。しかし、全てを一人で背負う個人開発のプレッシャーに比べれば、それは何と恵まれた環境だったことか。

個人開発で成功して大金を稼ぐのは、本当に一握りの天才か、狂気的な努力ができる人だけです。そこに「勝とう」として挑みかかれば、私のような凡人は心をすり減らして終わるだけ。

だから、もしあなたが個人開発に疲れ果ててしまったなら、伝えたいです。

「勝てなくても、いいじゃないか」と。

個人開発に挑戦したという、その経験自体がとてつもなく貴重です。勝つことを目指すのではなく、「楽しむ」こと、「学ぶ」ことを目的にしてみる。

技術的な探求の場として、自分のポートフォリオとして、あるいは最高の自己満足として。

それでいいのだと思います。

そして、もし疲れたら、堂々と休みましょう。私たちには、サラリーマンという立派な居場所があるのですから。

3
1
0

Register as a new user and use Qiita more conveniently

  1. You get articles that match your needs
  2. You can efficiently read back useful information
  3. You can use dark theme
What you can do with signing up
3
1

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?