はじめに
「1台のサーバーで複数のOSを動かしたい」
開発環境・テスト環境・本番環境を物理マシン1台に集約したい。あるいは自宅サーバーを有効活用したい。そんなとき、仮想化基盤が必要になる。
定番は VMware ESXi だったが、2024年2月に VMware は ESXi の無料ライセンスを廃止した。
👉 無料で使える本格的な仮想化基盤として注目されているのが XCP-ng だ。
この記事では、仮想化の基礎から XCP-ng の立ち位置・Proxmox との違いまでを解説する。
仮想化とは何か
仮想化とは、1台の物理サーバーのリソース(CPU・メモリ・ストレージ)を分割して、複数の**仮想マシン(VM)**を動かす技術だ。
物理サーバー(CPU: 32コア、メモリ: 128GB)
├─ VM1: Webサーバー(4コア・8GB)
├─ VM2: DBサーバー(8コア・32GB)
└─ VM3: 開発環境(4コア・16GB)
仮想化のメリット
| メリット | 内容 |
|---|---|
| コスト削減 | 物理サーバーの台数を減らせる |
| 環境の隔離 | VM 同士は独立しており、互いに影響しない |
| スナップショット | VM の状態を瞬時に保存・復元できる |
| ライブマイグレーション | VM を停止せず別ホストに移動できる |
Type 1 と Type 2 の違い
ハイパーバイザー(仮想化ソフト)には 2 種類ある。
❌ よくある誤解:「VirtualBox と同じようなもの」
VirtualBox や VMware Workstation は Type 2(ホスト型) だ。XCP-ng は Type 1(ベアメタル型) で、根本的に異なる。
Type 2(ホスト型)
ホスト OS の上でソフトウェアとして動く。
ハードウェア
└─ ホスト OS(Windows / macOS / Linux)
└─ ハイパーバイザー(VirtualBox / VMware Workstation)
├─ VM1
└─ VM2
- 手軽に使えるが、ホスト OS のオーバーヘッドが乗る
- 主に開発・検証用途
Type 1(ベアメタル型)
ハードウェア上で直接動く。ホスト OS は不要。
ハードウェア
└─ ハイパーバイザー(XCP-ng / Proxmox / VMware ESXi)
├─ VM1
└─ VM2
- ホスト OS のオーバーヘッドがない
- 本番環境・サーバー用途に適している
👉 XCP-ng は Type 1。物理サーバーに直接インストールして使う。
XCP-ng の仕組み
XCP-ng(eXtreme Cloud Platform)は、Citrix XenServer のオープンソースフォークだ。2018年に Vates 社によって公開された。
中身は Xen ハイパーバイザー だ。
dom0 と domU
Xen には独特の概念がある。
| 用語 | 役割 |
|---|---|
| dom0 | ハイパーバイザーを管理する特権 VM。Linux が動いており、VM の作成・削除・ネットワーク設定などを担う |
| domU | ユーザーが作る通常のゲスト VM |
ハードウェア
└─ Xen ハイパーバイザー
├─ dom0(管理 VM・常時起動)
│ └─ XCP-ng の管理機能が動いている
├─ domU(VM1)
└─ domU(VM2)
👉 dom0 は裏方として常に動いており、ユーザーが直接触ることはほとんどない。
Xen Orchestra(XO)
XCP-ng の管理は CLI でもできるが、Xen Orchestra(XO)という Web UI を使うのが一般的だ。ブラウザから VM の作成・起動・停止・スナップショットなどを操作できる。
Proxmox と何が違うのか
同じく無料の Type 1 ハイパーバイザーとして Proxmox VE がある。
| 項目 | XCP-ng | Proxmox |
|---|---|---|
| ハイパーバイザー | Xen | KVM + LXC |
| ベース OS | 独自(XenServer 派生) | Debian |
| 管理 UI | Xen Orchestra(別途インストール) | Web UI 標準搭載 |
| ライセンス | AGPL / 商用オプションあり | AGPL |
| 商用サポート | Vates 社 | Proxmox Server Solutions 社 |
XCP-ng を選ぶ場面
- 商用 Citrix XenServer からの移行を検討している
- エンタープライズ環境で Xen の実績・互換性が必要
- Vates 社の商用サポートを利用したい
Proxmox を選ぶ場面
- Debian / Linux に慣れており、カスタマイズしやすい環境が欲しい
- LXC コンテナと VM を混在させたい
- Web UI がすぐ使えるシンプルな導入を望む
👉 どちらを選んでも無料で本格的な仮想化基盤が構築できる。まずは試してみることが大切だ。
まとめ
この記事で学んだことを振り返ろう。
- 仮想化とは、1台の物理サーバーで複数の VM を動かす技術
- Type 1 ハイパーバイザーはハードウェア上で直接動き、本番環境に適している
- XCP-ng は Citrix XenServer のオープンソースフォーク。Xen ハイパーバイザーを使い、dom0 が管理を担う
- Proxmox と比べると、XCP-ng は Xen ベース・エンタープライズ寄り。Proxmox は KVM ベース・導入の手軽さが魅力
VMware ESXi の無料ライセンスが廃止された今、XCP-ng と Proxmox はどちらも有力な選択肢だ。