フェーズドアレイレーダーとは(要点)
多数のアンテナ素子を平面に並べ、それぞれの素子に位相シフタを接続。
素子ごとの位相を変えることで、等位相面(波面)を傾け、ビーム方向を制御する。
機械式レーダーのような回転機構が不要で、高速・高精度・多機能化が可能。
- 基本原理:位相制御によるビームステアリング
アンテナ素子を等間隔で並べた線形アレイを考えると、隣接素子間の位相差 Δφ を与えることでビーム方向 θ が決まります。
Δ
𝜑
−
2
𝜋
𝑑
𝜆
sin
𝜃
steer
例:素子間隔
𝑑
𝜆
/
2
、走査角 30°
→ 必要な位相差は −90°。
このように、位相差を変えるだけでビーム方向が瞬時に変わるのがフェーズドアレイの本質です。
- PESA と AESA の違い(軍事レーダーで重要)
● PESA(パッシブ電子走査)
送信機は 1つ。電力を導波管で各素子へ分配。
素子側は位相器のみ。
大出力が必要で、送信機故障=レーダー停止。
● AESA(アクティブ電子走査)
各素子(または数素子単位)に送受信モジュール(T/Rモジュール)を搭載。
半導体化され、信頼性が高い。
一部モジュールが故障しても性能低下は軽微。
現代戦闘機(F-35、F-15J改など)で主流。
- デジタルビームフォーミング(DBF)
1990年代以降は受信信号をデジタル処理し、同時に多数のビームを形成できる DBF が普及。
多目標追尾(MTT)が容易。
サイドローブ抑圧性能が向上し、クラッタに強い。
- フェーズドアレイのメリット
高速走査:マイクロ秒〜ミリ秒でビーム方向変更。
多機能化:捜索・追尾・識別・通信を同時処理。
高信頼性:可動部なし、AESAならモジュール故障に強い。
ステルス性向上:アンテナの回転機構が不要で RCS 低減。
- 気象用フェーズドアレイレーダー(日本の例)
気象庁の次世代レーダーは、10〜30秒で全天スキャンが可能。
従来の5〜10分に比べて圧倒的に高速で、積乱雲の急発達を捉えられる。
実例
東京都内の雹(2017年)
地上到達の10〜20分前に強い反射領域を検知。
草加市の突風(2017年)
積乱雲内部の渦構造を捉え、竜巻の可能性を示唆。
- まとめ:フェーズドアレイは「電子制御で空間を切り取る技術」
フェーズドアレイレーダーは、
「空間の任意方向に瞬時に電波ビームを向ける」
という能力によって、軍事・気象・航空管制などあらゆる分野で不可欠な技術となっています。