はじめに
実務で新サイト作成を依頼されたのですが、クライアントから相談されたのは「新サイトでは旧サイトのWordPressは削除し、運営側でAIを使い更新していきたい」というご要望でした。(加えて、運営へのAI導入の講義も依頼されました)
シェアで言えばWordPressは世界のWebサイトの40%超を占めており、それ自体は紛れもない事実です。しかしAIツールが急速に普及しつつある今、「これから新規でWordPressを選ぶ理由」は本当にあるのか、エンジニア目線で整理してみます。
WordPressは本当に素晴らしかった
まず前提として、WordPressの功績は正直に称えるべきだと思っています。
2000年代〜2010年代にかけて、WordPressは「エンジニアがいなくてもWebサイトが持てる」という革命を起こしました。
- プラグインで機能拡張が簡単にできる
- テーマで見た目を変えられる
- 管理画面でコンテンツを更新できる
- 安価なレンタルサーバーで動く
当時これらを一つのプラットフォームで実現していたのはWordPressだけでした。世界中の無数のビジネスがWordPressに支えられ、Webの民主化に貢献した功績は本物です。
AI時代に何が変わったか
問題は「今もその優位性が続いているか」です。
非エンジニア向け市場をAIが侵食している
WordPressの最大の強みは「非エンジニアでも使える」でした。しかし2024〜2025年にかけて、その前提が崩れはじめています。
| ツール | 何ができるか |
|---|---|
| Framer AI | テキスト入力だけでデザイン込みのサイトが生成される |
| Wix AI | ヒアリングに答えるだけでサイトが完成する |
| v0 (Vercel) | UIコンポーネントをプロンプトで生成できる |
| Notion Sites | ドキュメントがそのままWebサイトになる |
| Claude | 要件を伝えるだけでHTML/CSS/JSを丸ごと生成・修正できる |
| Cursor | エディタ上でAIと対話しながらコードを即時生成・更新できる |
これらのツールは「WordPressより簡単」かつ「WordPressより速い」。非エンジニアが自分でサイトを作るなら、むしろWordPressのほうが難しい時代になっています。
特にCursorやClaudeの登場は大きな転換点です。「コードが書けないからWordPressで」という理由が成立しなくなりつつあります。プロンプト一つでLP程度であれば数分で動くものが作れる時代に、WordPressの管理画面・テーマ・プラグインの複雑さを学ぶコストはもはや割に合いません。
エンジニア向け市場でも優位性が薄れた
コードが書けるエンジニアにとっては、以前からWordPressは「選択肢の一つ」に過ぎませんでした。そして今やLLMの普及で Next.js + Headless CMSの実装難易度が実質下がっており、WordPressを選ぶ積極的な理由がさらに減っています。
WordPressの負の側面がむしろ目立つようになった:
- PHPとテーマ・プラグインの競合管理
- セキュリティパッチの継続的な対応コスト
- モダンフロントエンドとの統合のしにくさ
- パフォーマンスチューニングの煩雑さ
それでもWordPressが残るケース
批判一辺倒は公平ではないので、「合理的に選べる場面」も整理します。
✔ 既存のWPサイトの保守・運用が前提の案件
✔ クライアントがWPに慣れており、移行コストが見合わない
✔ プラグインで要件の大半が満たせる小規模サイト
✔ 制作会社でWP案件が継続的に来る(現実として市場は残る)
重要なのは、これらはすべて「すでにWordPressがある前提」か「制約がある状況」です。ゼロから選ぶ理由にはなりません。
全体まとめ
| 観点 | 評価 |
|---|---|
| 非エンジニア向けの優位性 | AIツールに侵食されており低下中 |
| エンジニアが新規採用する理由 | ほぼない |
| 既存資産・保守案件 | 現実として需要は残る |
| キャリアの軸にすべきか | NG |
| 学習投資対効果 | 低い(他技術を優先すべき) |
WordPressは「なくならないが、これから選ぶ技術ではなくなった」というのが個人的な結論です。
エンジニアとして今投資するなら、Next.js・Headless CMS・あるいはAIを活用したサイト生成の仕組みを理解するほうが、間違いなく長期的なリターンは大きいと考えています。
おわりに
WordPressを否定したいわけではありません。現実問題として、今もWP案件は世の中に溢れていますし、そこで働くエンジニアの価値が失われるわけでもありません。
ただ「AI時代に必要か」という問いに対しては、正直に「新規で選ぶ理由は薄い」と答えるべきだと思い、本記事にまとめました。
繰り返しになりますが、本記事は個人的な見解です。異論・反論は大歓迎です。