はじめに
プロダクトを作っている組織であれば、必ずぶつかる問題として「施策の優先順位」があると思います。
やった方が良いもの/やらなくて良いものが明確な場合はただ施策を選ぶだけなので簡単ですが、大体多くの場合は、「どれもやった方が良い施策」でバックログが溢れ返り、どれかをやるとどれかができない、という状態で頭を悩ませることの方が多いはずです。
この記事では、施策の優先順位を決めるためのフレームワークとして、「ICEスコアリング」という手法を紹介します。
ICEスコアリングとは
ICEスコアリングの「ICE」は、以下の頭文字を取ったものです。
- I→Impact(どれだけ施策に影響があるか)
- C→Confidence(どれだけ施策が当たりそうか)
- E→Ease(どれだけ簡単に実施できるか)
そして、これらの評価に基づいて施策を10段階で評価し、スコアリングしたものがICEスコアリングです。
ICE Score = Impact * Confidence * Ease
このスコアが高いものから優先的に取り組んでいくことで、施策の優先順位を一意に決めていくことができます。
こちらのスコアの考え方はHacking Growthという本の著者でもあるSean Ellisさんによって提唱された手法です。
スコアの付け方
ICEスコアリングは考え方はシンプルですが、それぞれの要素にどのような基準でポイントをつけていくかするかは特に決まっておらず、各組織で決めていく必要があります。
重要なのは同じような施策が同じようなポイントになっていることです。つまり過去の数値を参考にしてポイントを付与していくことで、より精度の高いスコアリングが可能になっていきます。
これはスクラムにおけるストーリーポイントと近しい性質があると思っています。
スクラムのプラクティスと同じく、プランニングポーカーなどで点数をつけていくのもおすすめです。
簡単に計算をしてみたいと思います。
まず、各要素のポイントを以下のような重みとして定義します。
- Impact
- 1: KGIの数値に影響なし
- 10:KGIの数値が数十パーセント向上する
- Confidence
- 1: 全く予測できない
- 10: ユーザーインタビューや過去の経験から必ず当たる確信がある
- Ease
- 1:(メンバー全員投下して)リリースまで数ヶ月かかる
- 10:(メンバー全員投下して)1日でリリースまで完了できる
そしてそれぞれの施策A,B,Cを以下のように評価します。
Impact | Confidence | Ease | Score | |
---|---|---|---|---|
A | 5 | 5 | 5 | 125 |
B | 10 | 2 | 1 | 20 |
C | 2 | 10 | 10 | 200 |
スコアの計算をした結果、Cが一番高くなったので、インパクトは少ないが確実性と容易性が高いCの施策に取り組むと良いことがわかります。
スコアの付け方については以下の記事も参考になったので、ぜひ参考にしてみてください。
RICEスコアリング
ICEスコアリングの派生として、「RICEスコアリング」と呼ばれる手法もあります。こちらはイメージで言うとICEスコアリングにおける「インパクト」を「一人当たりに与えるインパクト(Impact)」と「インパクトを与えられるターゲットユーザー数(Reach)」に分けてスコアリングを行う手法です。計算式は以下のようになります。RICEスコアリングではEが「Effort」になり、逆数の計算(数値が大きければ大きいほど工数が大きい)となりますが、ICEスコアリングと同じく「Ease」で計算しても問題ありません。
ICEスコアリングにR(Reach)を加えた計算式は以下の通りです。
RICE Score = Reach * Impact * Confidence * Ease(or\ 1/Effort)
最後に
実際の施策に取り組む際は各指標の評価は今回のように簡単ではないことが多いと思いますが、このようなスコアリング手法を用いることで、ある程度の優先順位づけ判断を行うことが比較的容易になります。
着手する施策に迷ったら、ぜひICEスコアリングやRICEスコアリングを使ってみてください。
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