「CGアニメーターって、絵が上手くないと無理ですよね?」
わたしも最初、そう思ってました。
でも実際にやってみると、「絵が下手=向いてない」ではなくて、「観察力と粘り強さがあれば大丈夫」なんですよね。
この記事では、絵が下手なままCGアニメーターを目指したわたしの体験と、どんなスキルを磨けば通用するのか、再現手順を含めてまとめてみました。
「絵が苦手だけどCGに関わりたい」という人に向けて、リアルな道筋をお伝えします。
「絵が下手」でもCGアニメーターになれる理由
最初に結論を書くと、「絵が下手でもCGアニメーターにはなれます」。
というのも、CGアニメーターの仕事は「描く」よりも「動かす」ことに重きがあるからです。
わたしが初めてMayaを触ったときも、手描きのスケッチなんてほとんど出てきませんでした。
すでに用意されたモデル(キャラクターやオブジェクト)を使って、タイムライン上でポーズやキーを打ち、動きをつけていく作業が中心です。
つまり、完成した“絵”を再現するのではなく、すでにある素材に“命”を吹き込むのがアニメーターの役割なんです。
もちろん、空間認識力やデッサン的な基礎知識はあるに越したことはありません。
でも、それは「上手な絵を描く」こととは別。
正確な観察力と、動きを分析する感覚さえあれば十分に戦えます。
まず覚えたのは「ポーズの観察」
絵が下手な自覚があったので、最初に意識したのは「観察」。
いきなり3Dモデルを動かすのではなく、アニメや映画のワンシーンを静止して、ポーズを模写しました。
ただし、紙に描くというよりは、MayaやBlender上で同じポーズを再現する形です。
例えば、キャラクターが振り向く動作。
目や顔よりも、腰や肩の“先行動作”を再現するのがポイントです。
ここを無視すると、ロボットみたいな不自然な動きになります。
わたしが使った方法はシンプルで、
- YouTubeのダンス動画を0.25倍速で再生
- 主要なポーズをスクショしてフォルダ保存
- Mayaでポーズ再現 → タイムラインにキー打ち
という流れです。
この練習を繰り返すうちに、少しずつ“動きのリズム”がわかるようになりました。
CGアニメーターに必要な「3つの力」
絵が上手くなくても大丈夫とはいえ、最低限のスキルは必要です。
わたしの体験から言うと、次の3つが特に大事でした。
1. デッサン力ではなく「形を捉える力」
アニメーターに必要なのは「線の美しさ」ではなく、「構造を理解する力」。
人体や物体がどう動くかを掴む力です。
これはスケッチブックよりも、3Dモデルをぐるぐる回して観察するほうが効果的でした。
たとえばBlenderでキャラモデルを読み込んで、腕を上げたときにどの軸が回転してるかを見る。
これを理解することで、アニメーション時の不自然さを減らせます。
2. ソフトを扱う手の慣れ
Mayaや3ds Max、Blenderなどの操作スピードは、地味に差が出ます。
「1つの動きをつけるまでにかかる時間」を縮めることが、制作現場では重要です。
ショートカットの習得やリグ操作の感覚に慣れるまでは、1日30分でも触る時間を確保しました。
コツとして、いきなり大作を作ろうとせず、「ボールの跳ね」「キャラの呼吸」など小さな動きから練習するのが続けやすいです。
# Mayaでシンプルな跳ねボールアニメーションを作る例
1. Polygon Sphereを作成
2. タイムラインを100fに設定
3. フレーム1でボールを上に配置、キーを打つ
4. フレーム20で地面に接地、キーを打つ
5. フレーム40で再び上に戻す
6. 曲線エディタでイージングを調整
3. コミュニケーション力
意外と大事なのがこれ。
アニメーション作業って、チームでのやり取りが多いんです。
リーダーやディレクターから「この動き、もう少し柔らかく」と言われたときに、
「どの部分をどう修正すれば柔らかく見えるのか?」を理解し、すぐ反映できる柔軟さが求められます。
SlackやShotGridでの連携も多いので、指示の意図を正しく読み取る“読解力”も同時に鍛えられます。
絵が下手でも上達する「アニメーションの練習法」
「描けない=観察で補う」という方針でやっていたわたしの練習法を紹介します。
これは実際に成果があったので、同じ悩みを持つ人にはおすすめです。
- 動きの参考動画を集める(スポーツ・ダンス・映画など)
- 静止したフレームを観察し、「どの軸が動いてるか」をメモ
- 3Dモデルで再現、カーブエディタで微調整
- 動きが不自然なら、首・腰・重心を再チェック
最初は動きがガタガタでしたが、「重心を意識」するだけで全体がスムーズに見えるようになります。
重心が通るラインを確認するには、Mayaの「Motion Trail」機能をオンにして、軌跡を目視すると便利です。
2Dアニメーターとの違いと比較
よく混同されるのが、「手描きアニメーター」と「CGアニメーター」。
どちらも“アニメーションを作る”仕事ですが、求められるスキルが微妙に違います。
- 2Dアニメーター:線の表現・作画力が中心
- CGアニメーター:立体的な動き・時間軸の制御が中心
わたしは2Dで挫折した組ですが、CGに移行したことでようやく「思い通りの動きが作れる」ようになりました。
“描けない”というコンプレックスを、むしろ“形で考える”方向に転換できたのは大きかったです。
やってよかった「失敗しない練習ルーチン」
上達のコツは「短時間でも毎日触ること」。
感覚的に3D操作は“筋トレ”みたいなもので、1日でも触らないと手が鈍ります。
わたしが試して効果があったのは、以下のルーチン。
- 朝:リファレンス動画を見ながらストレッチ動作を再現
- 昼:既存アニメーションのリターゲット練習(Mixamo活用)
- 夜:自由制作(ボール・尻尾・キャラ)
これを1か月続けた頃、タイミング調整や曲線補間が自然にできるようになっていました。
“才能”ではなく“慣れ”で補える領域が多いのが、CGアニメーションの良いところです。
CGアニメーターを目指すときの注意点
とはいえ、絵が下手でも良いとはいえ、油断は禁物です。
以下のような点は、早めに意識しておくと挫折しにくいです。
- 「動き」だけでなく「感情」を作ることを忘れない
- リグ操作に慣れるまでは、モデルよりもリファレンス重視
- 人体構造を“図で理解”しておくと後で得
- 仕事では“修正対応の速さ”が信頼につながる
特に最後の「速さ」は、プロの現場で重視されます。
「センスよりリテイク対応力」というのが実情です。
その意味では、絵の上手さより「PDCAを回せる人」がアニメーター向きかもしれません。
まとめ:絵が下手でも、動かせる人になればいい
正直、今でも「絵が上手い人っていいな」と思う瞬間はあります。
でも、わたしは“動き”でキャラを魅せる道を選びました。
結果、映像のクレジットに自分の名前が載ったとき、「描けなくてもここまで来られるんだ」と実感しました。
CGアニメーターに必要なのは、観察・分析・粘りの3つ。
絵が下手でも、自分の強みを動きで表現できるなら、それは立派なクリエイティブです。
もしこれから始めたい人は、まずMayaやBlenderを触ってみてください。
環境構築から練習用データまで揃っている教材もあるので、最初の一歩を踏み出すには十分です。
(Unity入門の森ショップ にも、実践で使える3D教材がそろっています)