はじめに
2025 年、私は AWS の Redis 5 系のサポート終了を受けて Valkey 移行を行うプロジェクトに参加していました。
Redis、Valkey と合わせて名前が上がることが多いと思いますが、どうしてこの二つの名前が並列で上がるのか、また、Valkey 移行がどうして挙げられているのかについて、触れていきたいと思います。
Redis とは
Redis は Remote Dictionary Server の略で、オープンソースのインメモリデータストアです。主にキャッシュ、セッション管理、リアルタイム分析などの用途で広く使われています。
Redis の特徴
- 高速なデータアクセス
- メモリ上にデータを保持するため、非常に高速な読み書きが可能
- 豊富なデータ構造
- 文字列、リスト、セット、ハッシュ、ソート済みセットなど多様なデータ型をサポート
- 永続化オプション
- RDB スナップショットや AOF(Append Only File)による永続化が可能
- レプリケーション
- マスター・スレーブ構成による高可用性の実現
Redis のライセンス変更
2024 年 3 月、Redis Labs は Redis のライセンスを BSD ライセンスから、SSPL(Server Side Public License)と RSALv2(Redis Source Available License v2)のデュアルライセンスに変更しました。この変更により、クラウドプロバイダーが Redis をマネージドサービスとして提供する際に制限がかかるようになりました。
Valkey とは
Valkey は、Redis 7.2.4 をフォークして作られたオープンソースのインメモリデータストアです。Linux Foundation の支援のもと、Redis のライセンス変更に対応するために 2024 年に誕生しました。
Valkey の特徴
- Redis との高い互換性
- Redis 7.2.4 からフォークされており、既存の Redis クライアントやコマンドがそのまま使用可能
- BSD ライセンス
- オープンソースとして自由に使用可能
- コミュニティ主導の開発
- AWS、Google、Oracle などの主要クラウドプロバイダーが支援
- 継続的な開発
- Valkey 7 から 8 への移行でも下位互換性のない変更はなし
Redis のフォークのため、Redis の特徴も備えたままライセンス的に寛容なデータストアということになりますね。
同アドベントカレンダー 17 日目の記事で、Valkey を構築した記事を載せているのでぜひ合わせて読んでみてください。
どうして Valkey へ移行するの?
Redis から Valkey への移行が進んでいる背景には、いくつかの理由があります。
ライセンスの問題
前述の通り、Redis のライセンス変更により、クラウドプロバイダーが Redis をマネージドサービスとして提供することに制限がかかりました。Valkey は BSD ライセンスを維持しているため、この問題を回避できます。
ライセンス変更を受け、各クラウドベンダーは Valkey への対応を進めています。
2025 年 12 月 17 日現時点で確認した主要ベンダーの直近の動きをまとめてみます。
- AWS ElastiCache
- Redis と Valkey の両方をサポート。Redis 4/5 系は 2026 年 1 月 31 日で標準サポート終了予定
- 参考: ElastiCache Extended Support
- Google Cloud Memorystore
- Redis 3.2〜7.2 に加え、Valkey もサポート
- 参考: Memorystore for Valkey
- Oracle Cloud OCI Cache
- Redis 7.0.5 と Valkey 7.2 をサポート。Valkey 8.1 対応も拡張中
- 参考: Announcing General Availability of Valkey in OCI Cache
現時点で Redis に対して EOS の発表はなく、Redis と Valkey を選択肢として並行提供している状況です。ただし、ライセンスの観点から、各ベンダーとも Valkey への移行を推奨する流れになっています。
コスト削減
Valkey への移行により、インフラコストの削減が期待できます。ベンダーごとの状況は以下の通りです。
- AWS ElastiCache
- Valkey は Redis より 20〜33% 安い(Serverless は 33%、ノードベースは 20%)
- 参考: Amazon ElastiCache Pricing
- Google Cloud Memorystore
- 同一価格。ただし Valkey 8.0 は性能が最大 2 倍のため、ノード数削減で間接削減が可能
- 参考: Memorystore for Valkey pricing
- Oracle Cloud OCI Cache
- 同一価格。Redis と Valkey で料金体系は同じ
- 参考: OCI Cache Pricing
AWS では明確に Valkey の方が安価に設定されています。Google Cloud と Oracle Cloud では価格は同一ですが、Valkey 8.0 のメモリ効率向上(約 40% 改善)や I/O 性能向上により、同じワークロードでより少ないノード数で対応できる可能性があり、間接的なコスト削減が期待できます。
コミュニティの活発さ
Valkey は Linux Foundation の支援のもと、AWS、Google、Oracle など主要クラウドベンダーが開発に参加しています。オープンソースコミュニティとして活発に開発が進められており、長期的なサポートが期待できます。
まとめ
この記事では Redis と Valkey についての深掘り、そして Valkey 移行を行う理由をまとめました。
Redis から Valkey への移行は、今後のインフラ運用において重要な選択肢となっています。自分の持つ環境を踏まえて、どちらを選択するか考えると良さそうですね。