はじめに
現在、協力会社としてプロジェクトに参画しています。
前職ではデスクトップアプリの開発やチームリーダーを務めていました。
実は転職前の有休消化中、私が個人的に大好きな『ナマケモノ』のWikipedia、その名も「ナマペディア」をAzureで構築していました。(※未完のため現在非公開です)
ただの趣味の話に聞こえるかもしれませんが、結果的にこの事前学習が、今回のプロジェクトで大いに役立つことになります。「ナマケモノ」は今日の重要なキーワードになりますので、少しだけ頭の片隅に置いておいてください。
本記事では、前途多難だったプロジェクトをチームでどう乗り越えたのか、技術的な工夫だけでなく、私が協力会社のリーダーとして何を思い、どう動いたのかを包み隠さずお話ししたいと思います。
「99%炎上する」前提条件
私がアサインされたプロジェクトは、C#(.NET 8)とGoogle Cloudを用いた某業務システムのモダン化でした。
その前提条件は、一言で言えば 「99%炎上する」 内容でした。
- 稼働日は翌年4月で絶対死守(基本設計も終わってないのに 10か月しかない )、予算も厳しい
- 機能一覧、業務フロー、インフラ設計が「未定」
- 移行前のプログラムが動く環境がない(残されたソースコードが唯一の手がかり)
- 開発体制は、C#未経験の新人3名を含む7名
仕様書はなく、動く現行システムすら見られない。
残された古文書のようなソースコードを解読しながらのスタート。
時間が圧倒的に足りない中で、絶対に終わらせないといけない。
ここで私は、ある決断をしました。
極限状態で決断した「やらないこと」(ナマケモノ戦略)
時間が足りない中、私が決断したのは 「徹底的にやらないことを決める」 ことでした。
ここで「ナマケモノ」を思い出してください。彼らは究極の省エネ動物です。
私もそれにあやかり、「仕事を増やさない」仕組み作りを徹底しました。
- 「全員が全工程をやる」ことをしない(設計と製造を完全に分業化)
- 「業務時間内に会議の準備」をしない(通勤時間等での思考整理に留める)
無駄な作業を省き、メンバーの残業を無くし、有給やプライベートを最優先させる。そうすることで、時間内の作業効率を極限まで高めようと考えました。
結果として、開発のピークである秋頃でも、メンバーの残業をほぼゼロに抑えることができました。
では、具体的にどうやってその「省エネ」と「高品質」を両立させたのか。
2つの生存戦略をご紹介します。
生存戦略①:AIと共通基盤による「製造工場化」
1つ目の戦略は、開発プロセスの「製造工場化」です。
前職で培った共通基盤の知識を、AI(Gemini)を使って今回の環境用に翻訳・構築しました。
そして、新人メンバーにはコードをゼロから書かせるのではなく、
「共通関数+実装手順書+専用のGeminiプロンプト」 をセットにして配布しました。
彼らの主な仕事は、コードを書くことではなく、 AIが出力したコードの「動作確認」 です。
最初は半信半疑だったメンバーも、AIを使って見事に実装できるようになりました。
これにより、未経験者であっても属人性を排除した高品質なコードを、
安定して量産すること(品質の定量化)に成功しました。
生存戦略②:AIを活用した「共通言語の獲得」
2つ目の戦略は、「共通言語の獲得」です。
最初はGoogle CloudやIISなど、クラウド周りの未知の単語だらけからのスタートでした。
分からないことを放置しないため、私は会議の議事録を片っ端からGeminiに投げ、「初心者向けに解説して」と頼んでキャッチアップを行いました。
人に聞けば早いかもしれません。しかし、それはプロパーである先輩社員の皆さんの貴重な時間を奪うことになります。
基礎知識を自ら身につけ、同じ「共通言語」で話せるようになること。それ自体が、プロパー社員の負担を減らす最強の武器であり、 最大のチーム貢献(全体の残業軽減) になると実感しました。
裏テーマ ~協力会社リーダーの葛藤と本音~
ここまで、上手くいったノウハウの話をしてきました。
しかし、協力会社のリーダーとしてこの一年で一番きつかったのは、仕事の大変さではありませんでした。
忙しさも、技術的な不安も、努力と工夫で何とかなります。自分次第で動かせるからです。
でも、「モチベーション」と「立場」の壁だけは、自分一人ではどうにもなりませんでした。
プロパーの方であれば、後輩を育てたら、その後輩はいつか自分を助けてくれる存在になります。育てた分が、関係性として自分に返ってくる。
でも私は、同じように若手を育てても、契約が終われば関係も終わります。育てた後輩が成長した姿を、最後まで横で見届けることはおそらくできません。
「協力会社のリーダーに、何が残るんだろう」
そう思った時、正直、チームを育てるモチベーションを保つのが難しくなりました。いつ契約が切れるかもわからない。自分の近くに居続けてくれる人がいない気がして、とても孤独でした。
これは単なる愚痴ではありません。ただ、こういう気持ちを抱えながら働いている人間がチームにいるということを、リアルな本音として知っておいてほしかったのです。
それでも残ったもの
そんな葛藤を抱えながら迎えた10月。社内で自分の取り組みを発表する機会がありました。
その発表の後、思いがけない変化が起きました。
プロパー社員の皆さんから、温かいメッセージや労いの声をいただいたのです。わざわざ声をかけてくれた方。まさか、ご飯に誘ってくれた方。いつも挨拶してくれる方、「何かあれば自分でよければ聞くよ」と言ってくれた方。
……正直、すごく、嬉しかったです。
「協力会社に何が残るのか」とずっと悩んでいましたが、そこには 「人」 が残っていました。
技術でも、納品物でも、契約でもなく、そこには確かに 「人との繋がり」 が残っていた。それが、私が出した答えでした。
おわりに ~ロールモデルになりたい~
協力会社のリーダーとして、どう働くか。そのモデルケースがあまりなく、ずっと手探りでやってきた1年でした。
ナマケモノのように省エネで残業を減らす工夫をして、AIを駆使してチームを育てて、どうしようもない葛藤を抱えながらも、最後は繋がりの中で前に進む。
こういう働き方、こういう関わり方もあるんだということを、同じ立場の誰か、あるいはプロパーの皆様に見せられたらと思っています。
本記事が、同じようにチーム運営や自分の立場に悩むエンジニアの皆様にとって、少しでもヒントになれば幸いです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。



