賞金1億5000万円の難問、リーマン予想。
この記事は、リーマン予想の元になった論文 Bernhard Riemann, "Ueber die Anzahl der Primzahlen unter einer gegebenen Grösse" (1859) の日本語訳です。
この論文はわずか8ページという短さでありながら、リーマンはゼータ関数の定義域を複素数全体に拡張し(解析接続)、驚くべき関数等式
$$ \zeta(s) = 2^s \pi^{s-1} \sin\left(\frac{\pi s}{2}\right) \Gamma(1-s) \zeta(1-s) $$
を発見し、さらに、$s=-2, -4, -6, \dots$ でゼータ関数が零点を持つこと(自明な零点)を示し、もうこの時点で信じがたい成果ですが、数値計算に基づき、非自明な零点が $\Re(s) = 1/2$ の直線(クリティカル・ライン)上に並んでいるという大胆な予想を立てました。
これが、現代数学における最大の未解決問題の一つ、「リーマン予想」です。
著作権
翻訳: 田林伸一郎
- この翻訳は、著作権を放棄し、パブリックドメインとして公開します。
- どなたでも自由に利用、複製、改変、配布できます。
底本:Bernhard Riemann, "Ueber die Anzahl der Primzahlen unter einer gegebenen Grösse" (1859)(著作権保護期間満了)
この翻訳は、田林が個人的な学習のために行ったものであり、内容の正確性は保証されません。専門家による査読は受けていません。
与えられた数より小さい素数の個数について (Ueber die Anzahl der Primzahlen unter einer gegebenen Grosse.)
ベルンハルト・リーマン
1859年11月、ベルリン学士院月報
ベルリン学士院が私を通信会員として迎え入れてくださったことは、大変な名誉であり、心から感謝申し上げます。この栄誉に対する感謝の意を表すために、素数の分布に関する研究についてご報告したいと思います。このテーマは、ガウスとディリクレが長年にわたって深い関心を寄せてきたものであり、学士院にご報告するに値するものと考えます。
この研究の出発点は、オイラーによる次の指摘です。
$$
\prod{\frac{1}{1-{\frac{1}{p^{s}}}}}=\Sigma{\frac{1}{n^{s}}},
$$
ここで、$p$ はすべての素数を、$n$ はすべての自然数をそれぞれ動きます。この2つの式で表される複素変数 $s$ の関数を、これらの式が収束する範囲で $\zeta(s)$ と書くことにします。これらの式は、$s$ の実部が 1 より大きいときにのみ収束します。しかし、幸いなことに、この関数は常に意味を持つような表示式に書き換えることができます。まず、次の等式
$$
\int_{0}^{\infty}e^{-n x}x^{s-1}d x={\frac{\Pi(s-1)}{n^{s}}}
$$
から、次の関係が得られます。
$$
\Pi(s-1)\zeta(s)=\int_{0}^{\infty}{\frac{x^{s-1}d x}{e^{x}-1}}.
$$
ここで、次の積分を考えます。
$$
\int{\frac{(-x)^{s-1}d x}{e^{x}-1}}
$$
この積分は、$+\infty$ から $+\infty$ へ、被積分関数の内部に 0 を含むが他の特異点は含まない領域の周りを正の向きに1周する経路で計算します。このとき、多価関数 $(-x)^{s-1} = e^{(s-1)\log(-x)}$ において、$-x$ の対数は $x$ が負のときに実数となるように分枝を選ぶと、この積分は
$$
(e^{-\pi s i}-e^{\pi s i})\int_{0}^{\infty}{\frac{x^{s-1}d x}{e^{x}-1}},
$$
に等しくなります。したがって、
$$
2\sin\pi s\Pi(s-1)\zeta(s)=i\int_{\infty}^{\infty}{\frac{(-x)^{s-1}d x}{e^{x}-1}},
$$
となります。ここで、積分は先ほど説明した経路で計算するものとします。
この方程式は、複素数 $s$ がどんな値であっても関数 $\zeta(s)$ の値を定めるもので、この関数が $s=1$ を除いて有限な値に対して一価で有限な値を持つこと、さらに、$s$ が負の偶数のときには $\zeta(s) = 0$ となることを示しています。
$s$ の実部が負の場合には、積分経路を先ほどのように正の向きに取る代わりに、0 を除くすべての複素数を含む領域の周りを負の向きに取ることもできます。なぜなら、そのように経路を変えても、無限遠での積分の寄与は無視できるからです。この場合、被積分関数は $x$ が $\pm 2\pi i$ の整数倍になるところでのみ特異性を持つため、積分値はこれらの特異点の周りを負の向きに回る積分の和で表されます。そして、$n2\pi i$ ($n$は整数) の周りの積分は $(-n2\pi i)^{s-1}(-2\pi i)$ で計算できるので、
$$
2\sin\pi s\Pi(s-1)\zeta(s)=(2\pi)^{s}{\textstyle\sum}n^{s-1}((-i)^{s-1}+i^{s-1}),
$$
という関係式が得られます。これは $\zeta(s)$ と $\zeta(1-s)$ の間の関係を表しており、関数 $\Pi$ の性質を用いると、
$$
\Pi\left(\frac{s}{2}-1\right)\pi^{-\frac{s}{2}}\zeta(s)
$$
が $s$ を $1-s$ で置き換えても変わらない、という形で表すことができます。
この美しい関係式に触発されて、私は $\Pi(s-1)$ の代わりに $\Pi(\frac{s}{2}-1)$ を級数 $\sum \frac{1}{n^s}$ の一般項に導入することを思いつきました。これにより、$\zeta(s)$ の非常に扱いやすい表現が得られます。実際、
$$
\frac{1}{n^{s}}\Pi\left(\frac{s}{2}-1\right)\pi^{-\frac{s}{2}}=\intop_{0}^{\infty}e^{-n n\pi x}x^{\frac{s}{2}-1}d x,
$$
であり、
$$
\sum_{1}^{\infty}e^{-n n\pi x}=\psi(x)
$$
とおくと、
$$
\Pi\left({\frac{s}{2}}-1\right)\pi^{-{\frac{s}{2}}}\zeta(s)=\int_{0}^{\infty}\psi(x)x^{{\frac{s}{2}}-1}d x,
$$
となります。さらに、ヤコビの公式(Jacobi, Fund. §.184)
$$
2\psi(x)+1=x^{-\frac{1}{2}}\left(2\psi\left({\frac{1}{x}}\right)+1\right)
$$
を用いると、
$$
\begin{array}{r l l}{\Pi\left(\displaystyle\frac{s}{2}-1\right)\pi^{-\frac{s}{2}}\zeta(s)}&{=}&{\displaystyle\int\psi(x)x^{\frac{s}{2}-1}d x+\displaystyle\int\psi\left(\displaystyle\frac{1}{x}\right)x^{\frac{s-3}{2}}d x}\ &&{\displaystyle+\frac12\int\left(x^{\frac{s-3}{2}}-x^{\frac{s}{2}-1}\right)d x}\ &{=}&{\displaystyle\frac1{s(s-1)}+\displaystyle\int\psi(x)\left(x^{\frac{s}{2}-1}+x^{-\frac{1+s}{2}}\right)d x.}\end{array}
$$
と変形できます。ここで、$s = \frac{1}{2} + ti$ とおき、
$$
\Pi\left(\frac{s}{2}\right)(s-1)\pi^{-\frac{s}{2}}\zeta(s)=\xi(t),
$$
と定義すると、
$$
\displaystyle\xi(t)={\frac{1}{2}}-(t t+{\frac{1}{4}})\int_{1}^{\infty}\psi(x)x^{-{\frac{3}{4}}}\cos({\frac{1}{2}}t\log x)d x
$$
あるいは、
$$
\xi(t)=4\int_{1}^{\infty}{\frac{d(x^{{\frac{3}{2}}}\psi^{\prime}(x))}{d x}}x^{-{\frac{1}{4}}}\cos({\frac{1}{2}}t\log x)d x.
$$
と表すことができます。この関数 $\xi(t)$ は、$t$ のどんな有限な値に対しても有限値を持ち、$tt$ のべき級数として非常に速く収束する級数に展開できます。$s$ の実部が 1 より大きいとき、$\log\zeta(s) = -\sum\log(1 - p^{-s})$ は有限の値に留まり、$\xi(t)$ を構成する他の因子も同様なので、$\xi(t)$ が 0 になるのは $t$ の虚部が $\frac{1}{2}i$ と $-\frac{1}{2}i$ の間にある場合に限られることがわかります。$\xi(t) = 0$ の根で、実部が 0 と $T$ の間にあるものの個数は、およそ
$$
=\frac{T}{2\pi}\log\frac{T}{2\pi}-\frac{T}{2\pi}
$$
となります。なぜなら、$\xi(t)$ の対数微分の積分を、虚部が $\frac{1}{2}i$ と $-\frac{1}{2}i$ の間にあり、実部が 0 と $T$ の間にあるような $t$ の領域の境界に沿って正の向きに1周させると、その値は($\frac{1}{T}$ 程度の誤差を除いて) $(T\log\frac{T}{2\pi} - T)i$ に等しく、一方、この積分は領域内にある $\xi(t) = 0$ の根の個数に $2\pi i$ を掛けたものに等しいからです。実際に、この範囲内にはほぼこの個数だけ実根が存在することが確かめられ、おそらくすべての根が実数であろうと予想されます。しかし、この点については厳密な証明が望まれます。私は何度か試みましたが、今のところ成功していません。この証明は、当面の目標を達成するためには必ずしも必要ではないので、ひとまず脇に置いておくことにします。
$\xi(\alpha) = 0$ を満たすすべての根を $\alpha$ で表すことにすると、$\log \xi(t)$ は
$$
\sum\log\left(1-{\frac{t t}{\alpha\alpha}}\right)+\log\xi(0)
$$
と表されます。なぜなら、$t$ の根の密度は $t$ が大きくなるにつれて $\log \frac{t}{2\pi}$ の程度でしか増加しないため、上の無限積は収束し、$t$ が無限大に近づくときでも $t\log t$ 程度の大きさでしか発散しないからです。したがって、$\log \xi(t)$ との違いは $tt$ の関数であり、有限の $t$ に対しては連続かつ有限値を保ち、$tt$ で割ると $t$ が無限大で無限小になります。ゆえに、この差は定数であり、$t=0$ とおくことでその値を決定できます。
以上の準備のもとで、$x$ より小さい素数の個数を求めることができます。
$x$ が素数のときは $F(x)$ をその値より $\frac{1}{2}$ だけ大きい値とし、それ以外のときは $x$ より小さい素数の個数を $F(x)$ とします。こうすることで、$F(x)$ に不連続点がある場合には、
$$
F(x)={\frac{F(x+0)+F(x-0)}{2}}
$$
が成り立つようにします。
恒等式
$$
\begin{array}{r}{\log\zeta(s)=-!\sum\log(1-p^{-s})=\sum p^{-s}+\frac{1}{2}\sum p^{-2s}+\frac{1}{3}\sum p^{-3s}+\cdot\cdot\cdot\cdot}\end{array}
$$
において、
$$
p^{-s}{\mathrm{~を~}}s\int_{p}^{\infty}x^{-s-1}d s,\quad p^{-2s}{\mathrm{~を~}}s\int_{p^{2}}^{\infty}x^{-s-1}d s,\ldots,
$$
で置き換えると、
$$
{\frac{\log\zeta(s)}{s}}=\int!\ f(x)x^{-s-1}d x,
$$
が得られます。ここで、
$$
f(x) = F(x)+\frac{1}{2}F(x^{\frac{1}{2}})+\frac{1}{3}F(x^{\frac{1}{3}})+\cdot\cdot\cdot
$$
と定義します。
この方程式は、$a > 1$ を満たす $s$ の複素数値 $a + bi$ に対して成り立ちます。いま、この範囲で
$$
g(s)=\int_{0}^{\infty}h(x)x^{-s}d\log x
$$
という関係が成り立つと仮定すると、フーリエの定理を用いて関数 $h$ を関数 $g$ で表すことができます。$h(x)$ が実関数で
$$
g(a+b i)=g_{1}(b)+i g_{2}(b)
$$
と書けるとき、上の方程式は
$$
g_{1}(b)=\int_{0}^{\infty}h(x)x^{-a}\cos(b\log x)d\log x,
$$
$$
i g_{2}(b)=-i\int_{0}^{\infty}h(x)x^{-a}\sin(b\log x)d\log x
$$
という2つの式に分解できます。これらの両辺に
$$
(\cos(b\log y)+i\sin(b\log y))d b
$$
を掛けて $b$ について $-\infty$ から $+\infty$ まで積分すると、フーリエの定理より、両式の右辺は $\pi h(y)y^{-a}$ となります。したがって、両式を足し合わせて $iy^a$ を掛けると、
$$
2\pi i h(y)=\int_{a-\infty i}^{a+\infty i}g(s)y^{s}d s
$$
が得られます。ここで、積分は $s$ の実部が一定値 $a$ を保つように実行するものとします。
$h(y)$ に不連続点がある場合には、積分の値はその点での $h$ の左右極限値の平均値を取るものとします。関数 $f$ の定義から、$f$ もこの性質を持つことがわかるので、一般に
$$
f(y)={\frac{1}{2\pi i}}\int_{a-\infty i}^{a+\infty i}{\frac{\log\zeta(s)}{s}}y^{s}d s
$$
が成り立ちます。
$\log \zeta$ には、以前に求めた
$$
{\frac{s}{2}}\log\pi-\log(s-1)-\log\Pi\left({\frac{s}{2}}\right)+\sum^{\alpha}\log\left(1+{\frac{(s-{\frac{1}{2}})^{2}}{\alpha\alpha}}\right)+\log\xi(0)
$$
という表示を代入できます。しかし、この式の各項の積分は無限遠まで積分すると収束しないため、部分積分を用いて
$$
f(x)=-{\frac{1}{2\pi i}}{\frac{1}{\log x}}!\int_{a-\infty i}^{a+\infty i}{\frac{d{\frac{\log\zeta(s)}{s}}}{d s}}x^{s}d s
$$
と変形するのが適切です。
ここで、
$$
-\log\Pi\left(\frac{s}{2}\right)=\operatorname*{lim}\left(\sum_{n=1}^{n=m}\log\left(1+\frac{s}{2n}\right)-\frac{s}{2}\log m\right)
$$
($m$ を無限大に飛ばす極限) であり、したがって
$$
-\frac{d\displaystyle{\frac{1}{s}\log\Pi\left(\frac{s}{2}\right)}}{d s}=\sum_{1}^{\infty}\frac{d\displaystyle{\frac{1}{s}\log\left(1+\frac{s}{2n}\right)}}{d s}
$$
となることを使うと、$f(x)$ の式に現れる項は、
$$
{\frac{1}{2\pi i}}{\frac{1}{\log x}}!\int_{a-\infty i}^{a+\infty i}{\frac{1}{s s}}\log\xi(0)x^{s}d s=\log\xi(0)
$$
を除いて、すべて
$$
\pm{\frac{1}{2\pi i}}{\frac{1}{\log x}}\int_{a-\infty i}^{a+\infty i}{\frac{d\left({\frac{1}{s}}\log\left(1-{\frac{s}{\beta}}\right)\right)}{d s}}x^{s}d s
$$
の形にまとめられることがわかります。
ここで、
$$
\frac{d\left(\displaystyle{\frac{1}{s}\log\left(1-\frac{s}{\beta}\right)}\right)}{d\beta}=\frac{1}{(\beta-s)\beta}
$$
であり、$s$ の実部が $\beta$ の実部より大きい場合には、
$$
-{\frac{1}{2\pi i}}\int_{a-\infty i}^{a+\infty i}{\frac{x^{s}d s}{(\beta-s)\beta}}={\frac{x^{\beta}}{\beta}}=\int_{\infty}^{x}x^{\beta-1}d x
$$
となり、$\beta$ の実部が負の場合は
$$
=\int_{0}^{x}x^{\beta-1}d x
$$
となります。したがって、
$$
{\frac{1}{2\pi i}}{\frac{1}{\log x}}\int_{a-\infty i}^{a+\infty i}{\frac{d\left({\frac{1}{s}}\log\left(1-{\frac{s}{\beta}}\right)\right)}{d s}}x^{s}d s
$$
は、$\beta$ の実部が正の場合には
$$
\begin{array}{r l}{=}&{-{\displaystyle{\frac{1}{2\pi i}}}\displaystyle\int_{a-\infty i}^{a+\infty i}{\frac{1}{s}}\log\left(1-{\frac{s}{\beta}}\right)x^{s}d s}\ {=}&{\displaystyle\int_{\infty}^{x}{\frac{x^{\beta-1}}{\log x}}d x+{\mathrm{const.}}}\end{array}
$$
となり、$\beta$ の実部が負の場合には、
$$
=\int\limits_{0}^{x}{\frac{x^{\beta-1}}{\log x}}d x+\ \mathrm{const.}
$$
となります。
最初のケースでは、$\beta$ の実部を負の無限大に近づけることで積分定数が決まります。2番目のケースでは、0 から $x$ への積分は、$2\pi i$ だけ異なる値を取り得ます。これは積分経路が正の虚部を持つ複素数を通るか、負の虚部を持つ複素数を通るかによる違いです。そして、$\beta$ の虚部を正の無限大に近づけると、積分は前者(正の虚部を通る経路)の場合には無限小に、後者(負の虚部を通る経路)の場合には無限大に発散します。これらのことから、左辺の $\log\left(1-{\frac{s}{\beta}}\right)$ の分枝を適切に選ぶことで、積分定数が消えるようにできることがわかります。
これらの結果を $f(x)$ の式に代入すると、
$$
\begin{array}{r}{f(x)=L i(x)-\sum^{\alpha}\left(L i\left(x^{\frac{1}{2}+\alpha i}\right)+L i\left(x^{\frac{1}{2}-\alpha i}\right)\right)+\displaystyle\int_{x}^{\infty}\frac{1}{x^{2}-1}\frac{d x}{x\log x}+\log\xi(0)}\end{array}
$$
が得られます。ここで、$\sum^{\alpha}$ は、$\xi(\alpha) = 0$ を満たすすべての正の根(または正の実部を持つ根)$\alpha$ について、その大きさの順に和を取ることを意味します。関数 $\xi$ を詳しく調べることで、この根の順序付けのもとで、級数
$$
\Sigma\left(L i\left(x^{\frac{1}{2}+\alpha i}\right)+L i\left(x^{\frac{1}{2}-\alpha i}\right)\right)\log x
$$
の値が、
$$
{\frac{1}{2\pi i}}\int_{a-b i}^{a+b i}{\frac{d{\frac{1}{s}}!\sum\log\left(1+{\frac{(s-{\frac{1}{2}})^{2}}{\alpha\alpha}}\right)}{d s}}x^{s}d s
$$
において $b$ を無限大に飛ばしたときの極限値に一致することを示すことができます。ただし、根の順序を入れ替えると、この級数は任意の実数値を取り得ます。
最後に、$f(x)$ から $F(x)$ を求めるには、
$$
f(x)=\textstyle\sum_{n}^{1}!F\left(x^{\frac{1}{n}}\right)
$$
という関係式を反転させればよく、
$$
F(x)=\Sigma(-1)^{\mu}\frac{1}{m}f\left(x^{\frac{1}{m}}\right)
$$
という公式が得られます。ここで、$m$ は平方数で割り切れない自然数全体を動き、$\mu$ は $m$ の素因数の個数を表します。
もし $\sum^{\alpha}$ を有限個の項で打ち切ると、$f(x)$ の微係数は、$x$ が大きくなるにつれて急速に減少する項を除けば、
$$
{\frac{1}{\log x}}-2\Sigma^{\alpha}{\frac{\cos(\alpha\log x)x^{-{\frac{1}{2}}}}{\log x}}
$$
となり、これは $x$ 付近での「素数の密度+素数の2乗の密度の $\frac{1}{2}$ +素数の3乗の密度の $\frac{1}{3}$ +…」の近似式を与えています。
よく知られた近似式 $F(x) = Li(x)$ は、$x^{\frac{1}{2}}$ のオーダーの誤差まで有効であり、実際には少し大きめの値を与えます。なぜなら、$F(x)$ の式における非周期的な項は、$x$ とともに無限大に発散しない項を除けば、
$$
\begin{array}{r}{L i(x)-\frac{1}{2}L i(x^{\frac{1}{2}})-\frac{1}{3}L i(x^{\frac{1}{3}})-\frac{1}{5}L i(x^{\frac{1}{5}})+\frac{1}{6}L i(x^{\frac{1}{6}})-\frac{1}{7}L i(x^{\frac{1}{7}})+\cdot\cdot\cdot}\end{array}
$$
となるからです。
実際、ガウスとゴルトシュミットによって $x = 300$ 万まで行われた $Li(x)$ と $x$ より小さい素数の個数との比較によると、最初の10万個までは常に $Li(x)$ の方が大きいことが確認されています。その差は、$x$ とともに増減を繰り返しながら、全体としては徐々に大きくなっていきます。また、周期的な項に起因する素数の密度の変動も観測されていますが、その振る舞いを支配する法則はまだ見つかっていません。今後の精密な素数分布の調査においては、素数の密度を表す式に現れる個々の周期的な項の影響を詳しく調べることが重要になるでしょう。$F(x)$ よりも規則的な振る舞いをするのは $f(x)$ であり、これは最初の100個の素数について調べるだけでも、$Li(x) + \log \xi(0)$ に平均的に非常に近いことが見て取れます。