緒言
結婚式のご祝儀袋、筆で文字を書く必要がある、字が汚いことに自信のある人にとって参加する上でのボトルネックとなる工程です。本記事ではそんな工程を改善するための取り組みを実施しました。
これまでにもきれいな字を書くためには、習字やボールペン字講座、ペンプロッタなどの手法がありました。しかし、前者は努力が必要です。また、後者は安価な装置ではサインペンやボールペンなど線の太さが単一に限られ、トメ・ハネ・ハライが必要な筆には対応しておりませんでした。また高価な装置の中には筆文字を書くことのできるものもありますが入手性に難があり、またの冠婚葬祭で利用するにはコストパフォーマンスが悪いです。
そこで、広く自作されているペンプロッタをベースとして筆ペンに対応した筆ペンプロッタ装置を作成し、併せて筆ペンプロッタ用の指令を生成するCAMソフトを開発しましたので、その結果をご紹介いたします。
筆ペンプロッタ装置
一般的なペンプロッタを基に装置の設計・製作を行いました。筆の場合、ハネやハライの動作のために直交3軸を同時かつ高加減速で動作させることが必要と考えられるため、移動体質量をなるべく減らすことのできるcoreXY方式を採用しました。また、装置全体をなるべく安価・簡単に実現するためにリニアガイドを採用し、リニアガイド自身をフレームとする構成としました。
本構成によって、1軸に対してリニアガイド1本のみで済むため、リニアシャフト方式と比較しても安価かつ小型化を実現できました。
諸元 | 内容 |
---|---|
プロット範囲 | 12x19cm (普通サイズのご祝儀袋) |
モータ (X,Y軸) | 16HS4023 (AliEx) |
モータ (Z軸) | 28BYJ-48 5V (秋月電子) |
リニアガイド (X,Y軸) | MGN12C ブロック数1個 |
リニアガイド (Z軸) | 不明 (レール幅5mm程度のジャンク品) |
駆動方式(X,Y軸) | タイミングベルト |
駆動方式(Z軸) | ラック&ピニオン |
制御装置 | grbl |
CAM
ペンプロッタ用のNCコードを生成するために、ストロークフォントKST32Bを使用してNCコードを生成するプログラムをMATLABにより作成した。具体的には下図のように読み込んだストロークフォントを基に指令を生成する。
特に各ストローク末尾にトメ・ハネ・ハライを設定し、それに合わせてZ軸を含む指令を生成することで、従来のペンプロッタでは実現できなかった線の太さを実現した。
具体的なコードは下記githubを参照(フォントKST32Bは含まないため必要な方は各自入手のこと)
https://github.com/j4312043/BrushPenPlotterCAM
結果
実際にプロットした画像が下図のとおりである。従来のペンプロッタに見られるようにすべての線が画一ではなくプロットされていることが確認できる。
結言
従来のペンプロッタに対してより手書きに近い形で筆ペンで文字をプロットできた。