会社の庶務も、個人のタスクも、健康診断の再検査も、全部Claude Codeに管理させて数ヶ月。
自動化された作業量は確かに増えました。でも、実際に生活が変わった一番の理由は「自動で処理してくれること」ではありませんでした。効いたのは、朝いちばんに「今日これを決めてください」と判断材料ごと差し出されることと、覚えておく必要がなくなったことの2つです。
この記事は、Markdownファイルとシェルスクリプトだけで組んだ「AI秘書」に、副業の法人業務と自分の私生活を同時に管理させてみた一次体験の記録です。特別なフレームワークは使っていません。構成・運用のコツと、実際に効いた/効かなかったポイントを正直に書きます。
何を「秘書」に管理させているのか
まず、実際に運用している仕組みを一覧にします。全部プレーンテキスト(Markdown)で、Gitでバージョン管理しているだけです。
| 仕組み | 中身 | 目的 |
|---|---|---|
| 朝ダイジェスト | 前夜の残タスク・今日の予定・要判断事項をまとめて提示 | 一日の最初に「考える材料」を揃える |
| タスク台帳 | 事業・私生活のタスクをIDで一元管理(T-xxx) |
抜け漏れの防止と進捗の可視化 |
| ライフロードマップ | 半年〜数年単位の目標(健康・資産・事業)を階層で記述 | 「今日の判断」を長期目標に接続する |
| handoff(引き継ぎ) | セッション終了時に「次にやること」を書き残す | 記憶を外部化して、翌日ゼロから始めない |
ポイントは、事業と私生活を別システムに分けていないことです。人間の頭の中では両者は地続きなので、管理する箱も1つにしました。「歯医者の予約」と「請求書の承認」が同じタスク台帳に並びます。
前提:使っている環境
- Claude Code(MAXプラン / 月$200)
- Markdownファイル群 + シェルスクリプト数本
- Git(ローカルで履歴管理)
- 外部連携が必要な部分だけMCPサーバーを自作
特殊なライブラリやSaaSは使っていません。「AIに読ませる前提のテキストをちゃんと書く」だけで、ここまで来られます。
作り方:3ステップで最小構成
ステップ1:CLAUDE.md に「引き継ぎ書」を書く
最初にやるのは、プロジェクトルートに CLAUDE.md を置くことです。ここには、AIに毎回説明していた前提を全部書き出します。
# あなたの役割
あなたは私の秘書です。事業と私生活のタスクを一元管理します。
## 起動時にやること
1. tasks.md から未完了タスクを確認する
2. handoff.md の「次にやること」を読む
3. 今日の要判断事項を3つ以内にまとめて提示する
## やっていいこと / 確認が必要なこと
- 内部ファイルの更新・タスク追加: 確認なしで実行
- メール送信・SNS投稿・支払い: 必ず承認を取る
私の場合、以前は新しいセッションのたびに前提条件を5〜10分かけて説明し直していました。CLAUDE.md に約200行で技術スタック・方針・禁止事項を書き出したところ、その説明が丸ごと不要になり、1日あたり約30分が浮きました。実感として、これは「AIへの新人教育マニュアル」を一度だけ書く作業に近いです。
ステップ2:役割ごとにエージェントを分ける
最初は1つのエージェントに全部やらせていましたが、コンテキストが肥大化して応答が遅くなり、的外れな回答が増えました。そこで、秘書エージェントが受け付けて、専門役割に振り分ける構成に変えました。
あなた ─▶ 秘書(受付・ルーティング)
├─▶ 経理担当(請求・支払い)
├─▶ 開発担当(コード・技術)
└─▶ 健康担当(通院・運動記録)
各エージェントには50行程度のペルソナファイル(話し方・専門分野・対応方針)を持たせています。役割別に分割した結果、各エージェントの応答精度が体感で約40%向上し、処理速度も平均で2倍になりました。トーンも安定して、「技術質問にはカジュアルすぎる返答」といったブレがなくなりました。人間の組織で「適材適所に振る」のと同じ原理です。
ステップ3:外部アクションには承認を挟む
ここが生活を任せる上で一番大事です。私は一度、AIに外部アクションを自律実行させてメールの誤送信を1回やらかし、冷や汗をかきました。それ以来、外向きのアクション(メール・SNS投稿・支払い・本番デプロイ)は必ず承認キューを通す4ステップにしています。
ドラフト生成 → 承認キューに格納 → 人間が承認 → 実行
内部操作(ファイル更新・タスク追加)は自動、外部操作は承認必須。この線引きにしてから誤送信・誤操作はゼロになりました。承認作業自体は1日5分程度なので、安全性と効率をどちらも取れています。
本題:一番効いたのは「自動化」ではなかった
ここまで自動化の話をしてきましたが、正直に言うと、処理を自動化したこと自体のインパクトはそこそこでした。数ヶ月運用して、生活が実際に変わったと感じた理由は別のところにありました。
効いたこと1:判断材料が「先回り」で差し出される
朝ダイジェストの本質は「タスクの通知」ではなく、「今日あなたが決めるべきことは、これとこれです。判断材料はここに揃えました」と差し出してくれることでした。
たとえば「Aの請求書、支払い期日が今日です。残高は十分。承認しますか?」という形で、決定に必要な情報がセットで出てきます。自分で情報を集めてから考える、という前段がまるごと消える。意思決定のうち一番エネルギーを食う「材料集め」を肩代わりしてくれるのが効きました。
これは技術的なトラブル対応でも同じでした。以前、本番環境で断続的に出る例外の原因が3日間分からず、大量のログを前に途方に暮れたことがあります。過去24時間分のログ(約5,000行)と関連ソース3ファイルをAIに読ませたら、非同期処理のレースコンディションだと15分で特定してくれました。「どこを見ればいいか」という判断材料を先に整理してくれると、人間は判断だけに集中できます。
効いたこと2:忘却を外部化できる
もう1つは、覚えておかなくてよくなったことです。handoff(引き継ぎ)に「次にやること」を書き残す運用にしてから、私は「あれ、やらなきゃ」を頭の中に保持しなくなりました。
人間のワーキングメモリは驚くほど狭くて、「歯医者の再予約」を覚えているだけで思考のリソースが削られます。それをテキストに逃がして、翌朝ダイジェストで戻してもらう。この「忘れていい安心感」が、体感では自動化そのものより効きました。
元記事の気づきと、私の結論を対置してみる
この記事を書くきっかけは、Claude Codeに人生を管理させて3ヶ月という記事でした。そこでは「一番効いたのは、AIに管理させるために自分の人生を言語化させられたこと(言語化の強制力)」だと結論づけられていて、とても腑に落ちました。
私の実感も出発点は同じで、CLAUDE.md を書く作業は確かに強力な言語化でした。ただ、数ヶ月「事業+生活」を丸ごと回してみて、私の結論は少しズレます。私にとって効いたのは、言語化そのものよりも、その後に続く運用フェーズ——判断材料の先回り提示と、忘却の外部化でした。
言語化は「最初の1回」の効果、運用は「毎日」の効果。両方あって初めて回るのだと思います。
| 観点 | 元記事の気づき | 私の実感 |
|---|---|---|
| 効いた核心 | 言語化の強制力 | 判断材料の先回り+忘却の外部化 |
| 効くタイミング | 構築時(1回) | 運用時(毎日) |
| 得られたもの | 自己理解の解像度 | 意思決定コストの削減 |
効かなかったこと・ハマったこと
正直に失敗も書いておきます。
- 完全自動化を狙って承認を外したら事故った:前述のメール誤送信。生活に絡む領域ほど、自動化より「確認を挟む設計」が大事でした。
- タスク台帳を作りすぎて逆に見なくなった時期がある:管理項目を増やすほど良いわけではなく、「朝ダイジェストに出てくる3件」に絞ったら回り始めました。
- ロードマップを書いても日々の判断と繋がらないと死ぬ:長期目標は、朝ダイジェストが「今日の判断」に接続してくれて初めて機能しました。書いて満足して終わり、が一番もったいない。
まとめ
- Markdownとシェルスクリプトだけで、事業と私生活を1つの「AI秘書」に管理させられる
- 構成は「
CLAUDE.md(引き継ぎ書)→ 役割分割 → 承認フロー」の3ステップが最小構成 - 一番効いたのは自動化ではなく、判断材料の先回り提示と忘却の外部化だった
- 生活領域ほど、自動化より「確認を挟む設計」が効く
自動化は目的ではなく手段でした。本当に欲しかったのは、朝いちばんに「今日はこれを決めればいい」と肩の荷を降ろしてくれる存在だったのだと思います。
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