はじめに
AWSから新しい資格、 AWS Certified AI Business Strategist(AIB-C01) が発表された。
技術実装ではなく「AIをビジネスにどう活かすか」を問う、これまでのAWS認定とは毛色の違う試験らしい。とはいえ発表されたばかりで、公式模擬問題も参考書もまだ揃っていない。手元にあるのは試験ガイド(Exam Guide)とドメインごとの出題範囲の説明だけ。
「じゃあ、自分で作るしかないか」と思い立ち、Claudeと一緒に予想問題集を作ることにした。この記事はその過程の記録であり、半分は作業ログ、半分はポエムです。
まず試験ガイドを読み込ませるところから
最初にやったのは、試験ガイドのPDFをそのままClaudeに渡して「これを参照して予想問題を6セット(85問×6=510問)作ってほしい」とお願いすることだった。
1セットだけ作ってもらって様子を見る、というやり方もあったけど、今回はあえて「6セット・1セット1ファイル」という条件を最初に伝えた。量をこなさないと見えてこない偏りやパターンがある、という直感があったからだ。
最初の1セットができあがってみると、思っていたよりちゃんとしている。スキルIDに沿って各ドメインの配点比率(24% / 28% % 24% / 24%)まで意識して構成されていて、「ちゃんと試験ガイドを読んでいるな」という手応えがあった。
ただ、この時点ではまだ「それっぽい四択問題」の域を出ていなかった。
「本試験らしさ」を求めて
ドメインの詳細資料を追加で読み込ませ、スキル項目を全網羅させたところまでは順調だった。次に欲しくなったのは、実際のAWS試験っぽい長文シナリオだった。
AWSの試験は「ある企業が〜という状況で、〜という課題を抱えている。最も適切なものはどれか」という状況設定型の問題が多い。それを再現してほしくて、他のAWS試験(アソシエイトレベル)の例題をサンプルとして渡してみた。
そうしたら、Claudeから「そのサンプルは技術実装寄りで、AI Business Strategist(ビジネス職向け資格)の出題レベルとしてはややズレている」という指摘が返ってきた。
正直、ちょっと面食らった。言われてみれば確かにそうで、この試験が問うているのは「EC2をどう構成するか」ではなく「AIをBuildすべきかBuyすべきか」「投資対効果をどう説明するか」といった、経営・戦略側の判断力だ。
結果として、シナリオの長さや臨場感はサンプルに近づけつつ、問われる中身は戦略・ガバナンス・組織変革のレベルに保つという方針に落ち着いた。この軌道修正がなければ、実態とズレた「技術寄りの偽AIB問題集」ができあがっていたと思う。
計算問題、そして「定石が通らない」問題
シナリオに加えて、ROIや投資回収期間などの計算問題も入れてもらった。ただの数字当てにならないよう、実務でありがちな罠――固定費と変動費が混ざったコスト構造、段階的なROIの見落とし、割引率を考慮したNPVなど――を仕込んでもらった。
面白かったのは、Set 6の難易度を上げる過程で生まれた「定石が通用しないケース」という設計だ。
たとえば普通なら「時間が限られているならBuy一択」が正解になりそうな場面で、実は「差別化要因であり長期的に内製能力を育てたい」という条件が隠れていて、あえてBuildが正解になる。あるいは「パイロットの成功率が高いから全社展開しよう」という一見まっとうな判断が、実は「たまたま簡単な対象だけを選んでいた」という理由で誤りになる。
こういう「一見正しそうな標準解が、実は状況次第で誤りになる」問題は、Claudeに丸投げでは作れない。何を根拠に「定石が通じない」と言えるのか、こちらも一問ずつ確認しながら詰めていく必要があった。この工程は正直、一番時間がかかったし、一番勉強になった。
難易度調整という、地味だけど大事な作業
6セット作り終えた後、「Set 1・2はSet 6ほど難易度を上げなくていいが、基礎範囲をもっと網羅的に」「Set 5はSet 6と同じ難易度まで引き上げるが、使う計算パターンやシナリオはSet 6と被らせない」というリクエストを出した。
これは口で言うのは簡単だけど、実際にやろうとすると地味にしんどい作業だ。Set間で出題テーマが被らないようにする、正解の選択肢がA〜Dのどれかに偏らないようにする(気づいたら正解が「A」に集中していた、なんてこともあった)、選択肢の文字数や書き方で正解がバレないようにする——こういう細部の調整を、Pythonスクリプトで統計を取りながらChatと往復して詰めていった。
こういう「終わりの見えにくい調整」を根気よく回せるのは、AIと一緒に作業する一番のありがたみだと感じた瞬間だった。
クイズサイトも作ってもらった
問題集がMarkdownのままだと、正直読む気が失せる。というわけで、510問を一問一答形式で解けるだけの静的サイトも作ってもらった。
- セット・ドメイン・出題順・問題数を選んで出題
- 単一選択・複数選択どちらにも対応
- 間違えた問題はブラウザに記録されて、あとで復習できる
- サーバーもフレームワークもなし、GitHub Pagesにそのまま置ける
「できるか?」と聞いただけなのに、Markdownをパースして510問分のJSONを作り、UIまで一式組み上げてきたのには素直に驚いた。ただし一発で完璧だったわけではなく、パース時に一部の問題(計算問題のスキルタグの書式が微妙に違っていた)が抜け落ちるバグがあって、それをその場で検出・修正してくれたのは地味にありがたかった。
AIに作ってもらった予想問題はこちらから。
※ 問題の正誤に関し、一切の責任を取りません
おわりに
正直に言うと、この作業を通じて一番実感したのは「AIに丸投げでは、ちゃんとしたものはできない」ということだった。
試験の対象読者は誰か、何のレベルの判断力を問う資格なのか、その境界線をこちらが理解して初めて、Claudeの出す案の「ズレ」に気づける。逆にその境界線さえ握っていれば、510問という物量と、選択肢の偏り調整のような地道な作業は、驚くほどの速度で形になっていく。
新しい資格の情報がまだ少ない今のタイミングだからこそできた、ちょっと実験的な取り組みでした。もし同じようにAIB-C01を受ける人がいたら、少しでも参考になれば嬉しいです。