こちらは、技術同人誌/技術を取り巻く様々な執筆 Advent Calendar 2024の9日目の記事です。
この記事では、技術同人誌をBOOTHのオンラインショップで販売したい際に、事前に押さえておくと良いポイントをご紹介します。
BOOTHとは
BOOTHとはピクシブ株式会社が運営しているクリエイターズマーケットです。
漫画、アクセサリー、3Dモデル、ゲーム、映像作品、ぬいぐるみなどの様々な作品をBOOTH上のショップで販売することが可能です。技術書もまた、BOOTHで販売することが出来ます。
技術同人誌をBOOTHで販売しています
会社で作成したkintoneの技術同人誌は、今まで技術書典や技術書同人誌博覧会といったリアルのイベントで様々なエンジニアに届けることが出来ました。いつでもどこにでも、多様なエンジニアにkintoneの技術同人誌を届けたいため、数年前からBOOTHで技術同人誌の電子版を販売し始めました。
kintone技術同人誌を販売しているBOOTHのショップはこちらです:
BOOTHで技術書の販売をして良かったポイント
💪24時間体制で販売が可能
言わずもがな、顧客がいつでも技術書を手に入れることが出来る、というのが1番の利点です。リアルのイベントに参加が出来ないエンジニアも、好きなタイミングでBOOTHを通して電子版の技術書を手に入れることが出来ます。
💪無料、または100円からの販売が可能
ショップの商品は無料、または最少額100円から販売することが可能です。より多くのエンドユーザに商品を届けたい場合は値段を下げた方が購入のハードルが低くなるので、大変助かります。
きんとーん・らぼではリアルのイベントで販売している200円の技術書はBOOTHでも200円で販売が出来るので、値段に差異が無くエンドユーザにコンテンツを届けることが出来ます。
💪一斉送信メッセージ機能が使える
BOOTHのショップで商品を購入したユーザは、自動的にそのショップのフォロワーになります1。ショップのフォロワーに対して、ショップのオーナーは1ヶ月に1回一斉メッセージを送ることが出来ます。
きんとーん・らぼでは、このメッセージ機能を使い、新刊の情報を連絡したり、技術書イベントやkintoneに関する情報を送ったりしています。技術本に興味を持って頂けた層に対して関連する情報を届けることが出来るので、大変便利な機能です。
💪技術書の改訂版を提供出来る
公開した技術書は時間が立つと、更新しないといけない情報が出てきます。初版から第2版、第3版へと少しずつアップデートする本があったりしますでしょうか?BOOTHに公開している商品は置き換えが可能なので、初版の技術本を取り下げて第2版をアップすることが可能です。ショップの一つの商品に対して複数のファイルをアップし、実際にダウンロード出来るファイルを任意にオンオフするような設定が出来ます。
きんとーん・らぼでも何度か本のアップデートを行っているので、電子本に関しては最新の本がショップページからダウンロード出来るようにしています。最新版をアップしたら、古い本はダウンロード出来ないように設定をしています。ちなみに上記の場合、過去に初版を購入された場合、同じページから無料で最新版を購入出来るようになっています2。
💪シークレット公開機能がある
BOOTHには、リンクを知っている人にしか辿り着けない「シークレットリンク公開」の機能があります。こちらを使いますと、期間限定で配りたい商品や、特定の人やコミュニティだけに対して配りたい商品の対応が出来ます。シークレットリンクにたどり着いたユーザは合言葉を入力することで商品販売のページにたどり着くことができます。
きんとーん・らぼでは、有料本を購入した際にはシークレットリンクを案内しており、そのページから特典本の「きんとーんちゅーとりある」を無料でダウンロードすることが出来ます。また、イベントのキャンペーン等で、キャンペーングッズをシークレットリンクで提供してプレゼントすることもあります。
BOOTHで技術書の販売をして苦労してるポイント
🤔 分析機能が弱い
BOOTHの分析機能は弱いです。
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無料の商品の配布時期が分かりにくい
無料の商品はもちろん無料だからということもあり、有料の商品よりは多くダウンロードされます。今までのダウンロード数は数字として残るのですが、ダウンロードされても通知は来ませんし、いつどれくらいダウンロードされたかが分かりません。つまり、何かしらのマーケティングを行ったとしても、どの施策がダウンロードの向上に繋がってるのかがものすごく分かりにくいのです。 -
月間の売上の詳細が分かりにくい
月別の売上情報は確認出来るのですが、総売上をリストしただけの情報です。月ごとの詳細を確認出来るのですが、その月の各取引の取引日、受取金額と注文番号が確認出来るような、テキストだけの情報を案内されます。正直頑張れば、注文番号を辿ってどの商品がいつ売れたのかを把握することは出来るのですが、ものすごく面倒くさい作業です。毎月どの商品がどれくらい売れたのかを時系列でグラフとして見せてくれるのが理想です。 -
ショップでのユーザの動きが分からない
コンバージョン率が分からない!もうこれに尽きます。GA4のトラッキングID設定は出来るので、ショップのPVなどの測定は出来るのですが、購入やフォローのUIがクリックされた情報が全然取得出来ないので、施策に対するコンバージョンが把握出来ないのです。
商品の販売分析が気になる方は、上記の点は気にして下さい。
🤔 APIが無い
技術本を販売している身としては、サービスにAPIがついてないとかなり寂しいです。前述の通り、BOOTH自体の分析機能が弱いのですが、ショップの売上情報等をAPIで取得することが出来たら、こちらで分析機能を自作することも可能です。
🤔商品やショップのSNS上のサムネが扱いにくい
まず商品についてですが、商品にアップした最初の画像がサムネとして扱われます。商品一覧で表示されるサムネとSNSで表示されるサムネを比べると、表示されている範囲に大きな差異があることが分かります。この差異を考慮してサムネを作成するのがショップオーナーとしては大変です3。
そしてSNS上でのショップのサムネについては、ショップの商品一覧の最初のサムネが使用されるという仕様です。ショップのサムネはオーナー側で設定させて欲しい・・・
🤔 BOOTHユーザの技術者層は少ない
BOOTHでは様々なクリエイターの創作物が販売されていますが、比率的には技術系の商品はとても少ないです。というのも、そもそもBOOTHを使うユーザに技術者の割合がとても少ないと思われます。
例えば、この記事を作成している2024年12月時点でBOOTHの人気カテゴリーの商品で絞り込んでみましょう:
- 3Dモデル 163,794件
- 漫画 129,050件
- イラスト 116,886件
- 小説 119,651件
技術系のコンテンツで絞り込んでみます:
- 技術書 6,399件
- ソフトウェア 4,738件
- ハードウェア・ガジェット 4,438件
被技術者向けコンテンツと技術者向けコンテンツの比率を見ると、被技術者向けコンテンツが圧倒的に多いことがわかります。このシェアの大きさで、BOOTHのユーザには技術者が少ないと想定が出来ます。何が言いたいかというと、「BOOTHから自然流入してきて技術同人誌を購入する」といったアクションはあまり期待しない方が良さそうということです。
地道に外部のサービスから発信する必要があります。
まとめ
この記事ではBOOTHで技術同人誌を販売する際に押さえておきたいポイントを紹介しました。
BOOTHのショップを作るのはわりと簡単なので、まだショップを持っていない方は是非新設してみては如何でしょうか。色々と苦労した点は記載しましたが、これらはPixivさんへの個人的な要望でもありますし、BOOTH上で販売するメリットを考えると些細なことかと思います。
では、良きBOOTHライフを!
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商品の購入時にショップをフォローするかどうかを聞かれ、デフォルトでフォローする仕様になっています。フォローは任意のタイミングで解除が可能です。 ↩
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少しややこしい話なのですが、BOOTHショップの一つのページには複数の「ダウンロード商品」を設置することができ、その一つの「ダウンロード商品」には複数のファイルを含めることがあります。一度その「ダウンロード商品」を購入した場合、その「ダウンロード商品」の中のファイルをそれ以降無料でダウンロード出来る権利を得られます。たとえファイルの内容が置き換わっていても、そのままダウンロードすることが可能です。 ↩
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この問題を解決するためにこちらの商品にお世話になっています https://booth.pm/ja/items/2086881 ↩