工房に一人の修理職人がいます。作業台には、小さな機械仕掛けの鳥。その翼が、かすかに動きます。
初めてライブ動画を作るなら、まずはこれくらいの場面で十分です。鳥が飛び立ち、窓を突き破り、職人を街の向こうまで案内する展開を、最初からすべて決める必要はありません。
H3 Max Directorでは、生成が続いている間に次の指示を送れます。この機能を活かすには、一つひとつのプロンプトを小さな演出上の判断として考えると整理しやすくなります。「今、何を見せたいか」「次に何が起きるとよいか」という判断です。
ここでは、一つの場所を舞台にした12枚の「指示カード」を紹介します。プロンプトの練習例であり、実際に生成した映像の検証レポートではありません。
作品全体ではなく、次の判断を準備する
セッションを始める前に、途中で変えたくない特徴を三つ選びます。今回なら、チャコールグレーのエプロンを着た修理職人、真鍮製の鳥、木の作業台です。
続いて、オープニングと二つほどの展開候補を用意します。鳥がはっきり見えていれば、小さな動作を加えるだけでもよさそうです。構図が広すぎるなら、先に作業台へ視線を誘導したほうがよいかもしれません。
こうすると、次の指示を実際の映像に合わせて選べます。セッションの時間が進む中で、長い脚本を慌てて書く必要もありません。
ここで説明するブラウザー操作は、Max H3のDirectorワークスペースで利用できます。開始画像は必須ではありません。使う場合は、その画像と矛盾しない説明にしましょう。
まず場面を成立させる
カード1:オープニング
チャコールグレーのエプロンを着た修理職人が、小さな工房の木製作業台に向かって座っている。ドライバーの隣には、手のひらほどの大きさの真鍮製の機械仕掛けの鳥が置かれている。作業台も入る上半身の構図で、デスクランプの暖かな光と、室内に静かに響く時計の音を表現する。職人は鳥に触れず、じっと観察している。
オープニングでは、その先に展開できる余地を残します。最初の指示だけで、後の出来事まで一度に起こそうとしないことが大切です。
残りのカードは、必要に応じて選ぶ候補です。一つのセッションで全カードを順番に使い切る必要はありません。
複雑にする前に、一つの動作を変える
カード2:最初の動き
真鍮の鳥が左の翼を小さく一度動かし、再び静止する。職人は座ったまま、その様子を見ている。構図と工房の照明は変えない。
カード3:控えめな反応
座っている職人が、鳥をよく見ようとして上体を少し前に傾ける。両手は作業台に置いたままにし、チャコールグレーのエプロンも保つ。
カード4:物語を少し進める
機械仕掛けの鳥が職人のほうへ頭を向け、小さく一度さえずる。鳥の両足は木製作業台についたままにする。
カードは、そこに書かれた人物や物が実際の場面に存在するときに使います。鳥がすでに飛び去った映像に「作業台の上の鳥」という指示を送ると、現在の状況と食い違います。
すべてを動かさず、見せる場所を変える
カード5:仕組みを見せる
カメラを作業台の高さに近づけるようにゆっくり下げ、最後は真鍮の鳥と、その隣のドライバーを中心に映す。カメラが動く間、二つの物体は動かさない。
カード6:人物の反応に戻る
構図を穏やかに上へ移し、職人の顔を映す。大きな身ぶりではなく、静かな驚きを表情で見せる。デスクランプの暖かな光はそのままにする。
カード7:空間を広げる
カメラをゆっくり後退させ、作業台と、時計の予備部品が並んだ棚を同じ画面に収める。職人は座ったまま、鳥は作業台の上にとどまる。
それぞれのカードには、細部を見せる、反応を伝える、場所を説明するという目的があります。漠然と「映画のように」と頼むより具体的ですが、あくまで自然言語による指示であり、正確なカメラ座標ではありません。
雰囲気や声は、必要なときだけ加える
カード8:窓の外の変化
工房の窓をたたく雨の音が聞こえてくる。室内は乾いたままにし、デスクランプの明かりも安定させる。職人と鳥は、それまでと同じ位置に置く。
カード9:短いセリフ
職人が真鍮の鳥を見つめ、「やっと動いたね」と小さな声で言う。短いセリフが聞き取れるよう、室内のほかの音は控えめにする。
初めてセリフを試すときは、音楽や音声ファイルをアップロードせずに始めると確認しやすくなります。生成後は、実際の発話内容と口元の動きを確認してください。テキストでの指示は、アップロードした音声を操作する専用コントロールの代わりにはなりません。
場面を保ち、落ち着く余白を作る
カード10:大切な特徴を再確認する
チャコールグレーのエプロンを着た職人と、木製作業台に置かれた同じ小さな真鍮の鳥で場面を続ける。ここまでの暖かく写実的な見た目を保ち、別の人物は登場させない。
カード11:余計な要素を減らす
次の画面は、鳥と、作業台に置かれた職人の両手に絞る。棚は画面の外に置き、新しい出来事を加えず、静かな構図を保つ。
カード12:映像の中で一区切りつける
職人が真鍮の鳥のそばに両手を置く。鳥は翼をたたみ、動きを止める。工房の時計が刻む小さな音とともに、場面を静かに落ち着かせる。
最後のカードで終わるのは、映像内の動作です。ソフトウェアのセッションや生成処理が自動で停止するわけではありません。また、カード10で特徴を繰り返しても、すでにできた映像を修正することはできません。指示が作用するのは、これから生成される部分です。
指示カードを実際のセッションで使う
カード1を Opening prompt に貼り付け、アスペクト比、解像度、表示されている料金を確認してから Start 1-minute session を選びます。開始前に、短い追加指示も一つ準備しておきましょう。
再生中は、選んだカードを Live direction → Next direction に入力し、Send next instruction で送信します。映像の変化が遅れて見えるからといって、すぐに指示が無視されたと判断しないでください。Sent、Queued、Applied は処理状況を示す表示です。プレーヤーでは、まだバッファーに残っている映像を再生している場合があります。
指示の適用方法は、次のように使い分けます。
- Change direction next:まだ生成が始まっていない次の区間から、予定されている展開を置き換えます
- After planned scenes:既存の予定を残し、その後に新しい指示を追加します
どちらも生成済みの区間を編集する機能ではなく、今見えているフレームが即座に変わることを保証するものでもありません。文字を入力している間も、セッションは進みます。
最初は 1 → 2 → 3 だけを試し、鳥をもう少し大きく見せたい場合に備えてカード5を用意するくらいで十分です。残りのカードは別の試行に回し、急いで詰め込まないようにします。
指示の数ではなく、保存された映像を見る
Max H3では、受信したセッションの映像が自動で録画されます。終了するときは End session & save を選び、保存が完了するまでタブを開いておきます。その後、History で録画を確認できます。
見返すポイントは三つです。同じ人物や物だと認識できるか、意図した動作が伝わるか、カメラの動きがその説明に役立っているか。指示を大量に送ることより、短くても使える場面を残すことを目指しましょう。
Context memory が保持するのは、直近の区間のプロンプトです。人物の外見を固定する機能ではありません。つながりを保つための指示は具体的にし、目の前の映像と矛盾させないことが大切です。
