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この60年でコンピュータはどれだけ安くなったのか?

Last updated at Posted at 2024-10-09

この60年(強)で、コンピュータは、どれだけ安くなったのか?
(姉妹編にあたるベンチマーク(速度)の記事は、こちらをどうぞ)

コンピュータ価格の変遷表 (脚注はYAPC版から大幅増量)

種類 会社 製品名 価格(ドル) 現在換算価格(円) 換算時の想定年 備考
ミニコン DEC PDP-1 15万 2億 1961
メインフレーム IBM AN/FSQ-7 2000万 255億 1963 (脚注1)
メインフレーム IBM 7094 250万 32億 1963
ミニコン Honeywell DDP-516 8万 8500万 1969 (脚注2)
ミニコン BBN IMP 25万 2.66億 1969 (脚注3)
ミニコン DEC PDP-11/20 10800 1087万 1970 (脚注4)
ミニコン DEC PDP-11 3万 3020万 1970 (脚注5)
部品 MITS altair 8800 397 31万 1974 (脚注6)
PC Apple Apple II 1298 74万 1977 (脚注7)
PC NEC PC-8001 16.8万 1979 (脚注8)
WS SUN Sun-4/110S 16950 560万 1988 (脚注9)
ノートPC 日本IBM Thinkpad 220 24.8万 1993 (脚注10)
  • 表は[深町 2024]の付録を一部削除・改変したものです
  • 備考にある脚注群(YAPC::Hakodate 版から大幅増量)
    • (脚注1)SAGEで使われた機材[IBM 1963]。SAGEとは北アメリカ防空(監視)システムの名称です。この製品はMITが開発した機材の量産品にあたります。一般には販売されていませんが、これをアメリカ軍に56台納品したそうです。(自社の開発費用は、ほぼゼロだろうに)約1兆円の売上ですね。そら軍産学複合体が解体しないわけです
    • (脚注2)IMPとは最初のルータです。このIMPの改造元製品の仕入れ価格です
    • (脚注3)ARPA IPTOとの契約はIMP4台で100万ドルでした
    • (脚注4)DEC PDP-11の最小構成価格。最小構成では、ほぼ何もできません。紙テープでコードを読ませ、ランプをピコピコさせて動作確認できるくらいでしょうか?
    • (脚注5)前注のとおり、実際に利用するにはPDP-11各種周辺機器の購入が必要です。磁気テープドライブ、ハードディスク(なんと5MBもある!)、端末(Teletype 33など)の購入が必要です。これらの周辺機器こみで3万ドルと仮定した価格。ちなみにUnixにtty(teletypeの頭文字)という用語が出てきますが、それは、この端末メーカー Teletype に由来します。いまでは普通ptyでしょうが、ptyはpseudo ttyです
    • (脚注6)コンピュータの自作キットです。もちろん部品から組み上げる腕が必要ですが、こんな自作キットを買うのはハードウエアハッカーしかいません:-)。詳細は[Levy 1984]
    • (脚注7)パーソナルコンピュータとは言いますが、それは少し前の時代の億単位のメインフレームや、住宅価格か?のミニコンに比べれば、低価格で、個人でも何とか買えるようになったという意味です。実際のところ「貯金をはたいて、自動車を買うか、Apple IIを買うか?」くらいの価格でした。それでも部品を自分で組み立てる作業費を考えれば、一般人にとってApple IIは何とか買える価格の"イケてる"最先端ガジェットだったのだと思います。アーリーアダプターの人たちが買いましたが、一般人にはApple IIで何か出来るわけないので、このニッチな隙間をめざして、テレビゲームという産業が育っていきました。詳細は[Levy 1984]
    • (脚注8)当時の定価 [後藤 2006]
    • (脚注9)ピザの箱くらいの大きさでした。それで、通称ピザボックスと呼ばれていたわけです [SUN 1988]
    • (脚注10)当時の定価 [IMPRESS 2002]

用語 (私の偏見いり)

  • メインフレーム ... 正確な定義は不明瞭です。元々は「巨大なコンピュータが大きなキャビネット(メインフレーム)に収納されている」からメインフレームと呼ぶらしいのですが、それは技術的な定義ではありません。そういうわけで、IBMの販売してきた銀行や大企業の基幹システムで使う信頼性の高い計算機を、メインフレームや大型機、汎用機(1964-)と呼ぶという理解でよいと思っています。なお汎用機という用語はsystem/360(1964)登場以降のはずです。この型番には「360度どんとこい!汎用だ!」という意味合いが込められています。また、ライバルメーカーの販売する対抗機種もメインフレームなどと呼ばれています
  • ミニコン ... かつて(1950年代後半〜)、コンピュータとはIBM製品と同義でした。DECに代表される新興ベンダ群が1950年代末あたりから販売をはじめた、より低価格(IBMの1/20 〜 1/100)な製品群がミニコン(ミニのコンピュータ)。それでも冷蔵庫くらいの大きさですけど
  • ワークステーション(WS) ... 1980年代前半に登場したコンピュータで、(インターネット屋としては)SUNの製品がWSの代表例。これは、ネットワーク(TCP/IP)対応のタイムシェアリングシステム(つまりUnix)を搭載していました。そして、コンピュータの低価格化が進んだため、1台のWSを1人で利用できるようになってきました。PCと似たコンセプトに見えるでしょうが、大学や企業の開発現場で使われたものです(同時期のPCはネットワーク対応など考えていません)。また、特定の科学分野に特化したコンピュータのことをWSと呼ぶという説もあります。確かに、そういう使われ方もしていた気がします(?いや、低価格化したといっても百万円のオーダなので、開発部署などでしか買えなかったから、そう見えるのではないかと思いますが...)。今でもGPUつんでる機械学習用製品やCAD用PCがWSと呼ばれていそうです

おまけ or こぼれ話

  • Altair は、スタートレック(1966-1968, いわゆるTOS)に登場する惑星の名前です。開発者が、何がいいとおもう?と自分の娘に聞いたところ、トレッキー(スタートレックマニアのこと)の娘が「今日の再放送エピソードの舞台は Altair だお〜」と教えてくれたからAltairにしたそうです[Levy 1984]
  • タイトルでは60年と唄っていますが、実際には商用インターネット登場くらいまでの30年分の変遷です。というのは、商用インターネット登場以降のPCについては簡単に調べられるでしょうし、PCになると、価格変化が少なめで、あまり面白くないです。そういうわけで、その前の30年あまりのコンピュータ価格の変遷表になっています
  • 商用インターネット時代のPCは、価格すえおきで速度が上がっていく感じです。価格の変遷よりも、速度の変遷を見ると面白いです。姉妹編にあたるベンチマーク(速度)の記事は、こちら

履歴

  • [深町 2024]の付録を元に、
    YAPC::Hakodate (2024-10-05,はこだて未来大学)の講演用に準備した表です
    • YAPC::Hakodate全体のまとめはこちらからどうぞ
    • Track A 10:10-10:50。
      Track Aのtweetまとめはこちら
    • この表は、講演スライドのP.27-P.29に相当しています
    • 講演スライドは1枚に無理やり収めるため、言葉少なめになっています。
      逆に、特に文字数制限がない本記事では、用語の解説を追加しました
    • スライドでは[SUN 1988]の出典が抜けています。本記事の参考文献には追加しなおしました

参考文献

初出

この表自体の初出は YAPC::Hakodate 2024 (2024-10-05,公立はこだて未来大学)の Track A 10:10-10:50の講演です。以下のスライド p.27 以降を参照してください(そのうち動画が公開されると思います)。脚注の部分がqiita版では大幅増量されています。

original site: https://technotes.fml.org/tech/history/price/computer/

(qiita版も致命的な間違いやTYPOは修正しますがupdatesはoriginalのほうだけです)

Copyright (C) 2024 Ken’ichi Fukamachi, CC BY-NC-SA 4.0

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