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はじめに

良い製品の企画書とは、どのようなものなのでしょうか。

NHK for School「企画書の書き方」では、以下のステップで企画書を書くことを説明しています。

  1. 内容がひと目でわかる「タイトル」をつける
  2. 企画のきっかけとなった「課題」を書こう
  3. 具体的に何をするのか「企画の内容」を書こう
  4. 企画によって実現できる「いいこと」を書こう

この動画はその道のプロが作っているので、とてもわかりやすくおすすめです。10分で見られますので、本記事を読み始める前に、先にこの動画を見るのもよいでしょう。本記事は、この動画で解説されている各ステップについて、他の解説記事などを引用しつつ、私なりに補足を試みたものです。

1. 内容がひと目でわかる「タイトル」

いきなりなのですが、企画書に限らず、新規作成する文書では、タイトルをつけるのが最も難しいです。私も、Qiitaで記事を書くときには、最後までタイトル付けに迷います。記事の公開後も、何度も手直しをすることがあります。

このため、タイトルは最後につけましょう

そして、できればその道のプロフェッショナルやベテランに意見をもらいましょう。日常的に文章を書いているような、あるテキストサイトの管理人も「タイトル付けは編集者に任せたほうがよい」ということを主張していました。タイトル付けは、とにかく難しいです。

ただし、どうしても自分でやらなければならないという場合は、タイトルの候補を整理してから考えましょう。

LINE株式会社 テクニカルライターの堀越 良子さんは「いちばん良い一行を見つける近道」と題して、「コピペしながら全部の案を並べていく」という方法を紹介しています。目に見える形で候補を並べてそれを整理し、その中からできるだけ論理的に一つを選ぶということです。

結局のところ、天才コピーライターではない私たちにとっては、それがいちばんの近道になります。

タイトルの補足として概要を書く

タイトルだけで、すべてを伝えることはできません。タイトルを補足する形で、概要としての文章を書きましょう。概要の書き方については、同じくLINE株式会社(当時) テクニカルライターの矢崎 誠さんによる解説動画がおすすめです。

概要は、企画書の全体をつかむための文章です。企画書の全体像が固まりきっていない状況では完成させることはできません。このため、これもタイトル同様に最後に書きましょう

やってしまいがちな間違いとしては、その後の本文の一部しかカバーしていないというものがあります。企画書の概要は、映画やドラマなどのあらすじを説明する文章とは異なり、その後のお楽しみをとっておく必要のあるものではありません。このため、別にネタバレをしてしまってよいのです。

2. 企画のきっかけとなった「課題」

製品というのは、何かの課題を解決するためのものです。このため、まず、解決する課題が何であるかの説明が必要です。

ここでのチェックポイントは設定した課題に共感できるかどうかです。

このため、NHK for School「企画書の書き方」で解説されている通り、具体的なエピソードが有効になります。読み手が目を閉じれば、脳裏に具体的なシーンが浮かぶようなものが成功であると言えるでしょう。

主にマーケティングの世界では「ペルソナ設定」と呼ばれる手法があります。ターゲットについて、年齢や居住地、性格などの人物像を詳細に設定するというものです。しかし、ペルソナの個人情報の設定に夢中になるよりも、「シーン」を追求することが大事だと思います。

ただし、ここにはハマりがちな落とし穴があります。

それは、企画を成立させたいがために、書き手の都合のよい課題(シーン)を設定してしまうというものです。映像を思い浮かべたときに、現代では不自然な脚本になっているようでは失敗です。たとえば、誰もがスマートフォンを使いこなす時代なのにもかかわらず、(暗黙的に)紙とペンくらいしかない世界を前提としているなどです。これでは、現状の姿(As-Is)を不当に低く評価してしまっており、読み手が共感できません。

課題にリアリティが出せているのか、常に確認することが大事でしょう。

3. 具体的に何をするのか「企画の内容」

いよいよ企画の内容に入ります。

ここでは、大きく3つのチェックポイントが挙げられます。

確かに課題を解決できそうであること(妥当性)

最も重要なのは、課題に対して適切な企画になっているかどうかです。

読み手に対して伝わりにくそうな場合は、企画が課題を解決するプロセスを詳しく説明しましょう。

企画の方向性は合っていても、今回の企画だけでは、完全には課題を解決できないという場合もあります。その場合は、その旨を説明しましょう。内部向けの企画書でしたら、頭の中にある懸念点なども書いてしまいましょう。それも含めて関係者に伝えることで、最終的にはよいものが実現できると思います。

全く同じものが存在しないこと(新規性)

その企画は、既に世の中に存在しているものや、どこかで聞いたことがあるものになっていないでしょうか。もしそうだとしたら、「わざわざ新しく企画しなくても、既存の***を使えばよいのでは?」という話になってしまいます。

既存の似たようなものが存在している場合は、どこが違うのかを説明しましょう。具体的に類似製品を挙げて、それとの比較表を作るのもよいでしょう。書籍「世界一やさしい問題解決の授業」では、選択肢を洗い出して、各選択肢を評価し、最も魅力的な選択肢を選ぶ手法として「評価軸×評価リスト」というツールを紹介しています。

これは、複数の企画案を比較するようなときにも有効です。たとえば、最近、社内で「4週間でチームで何歩歩いたか、チーム平均歩数で競争する」というウォーキング大会がありました。それを題材に、サンプルの表をまとめてみます(内容は適当です)。

評価軸 評価軸の重要度 駅伝大会 運動会 ウォーキング大会
多くの社員の参加 +(少ない) ++(普通) +++(多い)
PDCAサイクルの習慣化 +(できない) +(できない) +++(できる)
予算のかかならさ +(高い) ++(ふつう) +++(安い)
開催のしやすさ +(前例なし) ++(前例あり) +(前例なし)
総合評価 + ++ +++

本当に現実のものになりそうであること(実現性)

最後のチェックポイントは、企画の内容が、本当に私たちの実力で実現できそうかどうかです。実現できそうにない企画では「絵に描いた餅」になってしまいます。実現までのステップを詳しくまとめることで、確かにうまくいきそうだと思えるものにしましょう。

落とし穴の例としては、そこを具体化することができないがあまり「夢のような技術」でブラックボックス化してしまっているというものです。たとえば「AI(人工知能)で実現します」などのように。

「課題を解決できる最低限の部分」(MVP: Minimum Viable Product)の難易度が低い企画であれば、その実現性は高いと言えます。たとえば、企画を実行に移した際に、当初の想定よりも進捗が悪かった場合には、スコープを削ることになるでしょう。そうなったとしても、企画の根幹が揺らがないような構成になっていると好ましいです。

4. 企画によって実現できる「いいこと」

ここまでで、企画の内容についての説明は終えています。構成としても一応成立しており、ここまでの内容だけでも、企画自体は伝わります。

では、企画の内容を説明し終えた後には、何を書いたらよいのでしょうか。

ここは、ボーナスステージです。

企画書の分量(文字数)が制限されていない場合は、それまでのちまちました作業の鬱憤を晴らすように、ありったけの想いを詰め込んで「企画が成功した後の世界」を描きましょう

もちろん定量的なデータも重要ですが、個人的には、書き手の熱意を伝えることができれば良いと思います。熱意によって人は心を動かされます。読み手は「そんなに熱意があるのなら、チャレンジさせてみるか」と思ってくれるかもしれません。

企画がただの自己満足ではなく、世の中に価値を提供するものであることをアピールしましょう。

おわりに

思い返せば、私は新卒で今の会社に入社を決めた理由は、製品企画を考え抜くインターンシップに刺激を受け、「製品の企画から実装までを一気通貫で体験できる」というところを魅力に感じたからでした。

それから10年以上が経ちましたが、今も転職せずに所属し続けている理由の一つは、製品に限らず、さまざまな企画書を書いたり、逆に多くの企画書をレビューする立場を経験できるからかもしれません。

自分の企画の意図が相手にうまく伝わり、そして認められるのは、とても気持ちが良いものです。企画書を書く(またはそれをチェックする)技術は、多くの場面で活かせる汎用的なものですので、ぜひ身につけられると良いと思います。

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