はじめに
Cloud Directory内のユーザーに割り当てできるパスワードポリシーは全ユーザーで共通でした。
「ユーザーおよびグループへのパスワード・ポリシーの割り当て」機能のリリースにより、下記イメージ図のように、Cloud Directoryのユーザー/グループに、異なるパスワードポリシーを割り当てできるようになりました。
1.機能の有効化について
IBM Security Verifyの管理画面では有効化できませんので、マニュアルに従い、機能を有効化します。
画像の引用元:
2.パスワードポリシー概要
機能を有効化すると、3種類のパスワードポリシーが存在することになります。
No | パスワードポリシー | 説明 |
---|---|---|
① | デフォルトのパスワード・ポリシー | すべてのユーザーは、このパスワード・ポリシーが付加された、公開されていない内部グループのメンバーです。 このポリシーは、グループに添付されたパスワード・ポリシーとしてすべてのユーザーに適用されます。 このポリシーは、パスワードの有効期限およびパスワードの最小使用日数の設定が可能な唯一のパスワード・ポリシーです。 このポリシー内のすべてのパスワード・ポリシー属性を変更できます。 |
② | デフォルトの有効期限なしパスワード・ポリシー | このパスワード・ポリシーには、パスワードの有効期限が設定されておらず、パスワードの最小使用日数も設定されていません。 これらの設定を変更することはできません。 グループには適用できません。 これは通常、ユーザーに直接付加することにより、ユーザーのデフォルトのパスワード・ポリシー (特に、パスワードの有効期限属性と最小存続期間属性) をオーバーライドするために使用されます。 このポリシー内の他のパスワード・ポリシー属性は変更できます。 |
③ | カスタム・パスワード・ポリシー | 追加のカスタム・パスワード・ポリシーを作成、変更、および削除できます。 これらのポリシーには、パスワードの有効期限および最小経過期間が存在しないか、設定できません。 これらのポリシーは、ユーザーへの影響を判別する際に、これらの値に影響を与えません。 これらのポリシー内の他のパスワード・ポリシー属性は変更できます。 |
各ポリシーで設定できる項目は以下のようになります。
項目名 | デフォルトのパスワード・ポリシー | デフォルトの有効期限なしパスワード・ポリシー | カスタム・パスワード・ポリシー |
---|---|---|---|
パスワードの最小の長さの文字数 | 〇(設定可能) | 〇 | 〇 |
英字が必要 | 〇 | 〇 | 〇 |
英字の最小数 | 〇 | 〇 | 〇 |
小文字の最小数 | 〇 | 〇 | 〇 |
大文字の最小数 | 〇 | 〇 | 〇 |
数字または特殊文字が必要 | 〇 | 〇 | 〇 |
数字または特殊文字の最小数 | 〇 | 〇 | 〇 |
数字の最小数 | 〇 | 〇 | 〇 |
特殊文字の最小数 | 〇 | 〇 | 〇 |
連続する反復文字の制限 | 〇 | 〇 | 〇 |
連続する反復文字の最大数 | 〇 | 〇 | 〇 |
パスワードの再使用を許可しない | 〇 | 〇 | 〇 |
許可しない直近パスワードの数 | 〇 | 〇 | 〇 |
ログイン失敗後にアカウントをロックする | 〇 | 〇 | 〇 |
パスワードのロックアウト期間 (分) | 〇 | 〇 | 〇 |
許可される試行の回数 | 〇 | 〇 | 〇 |
パスワードの最大存続期間の設定 | 〇 | ×(パスワード有効期限なしで固定) | ×(設定不可。デフォルトパスワードポリシーの設定が適用) |
パスワードの有効期限 (日) | 〇 | ×(同上) | ×(同上) |
パスワードの最短存続期間の設定 | 〇 | ×(パスワード最短存続期間なしで固定) | ×(同上) |
パスワードの最短存続期間 (時間) | 〇 | ×(同上) | ×(同上) |
カスタムパスワードポリシーは、マニュアルに記載の通り、ユーザー/グループ単位で割り当て可能です。
各ユーザーおよびグループに、1 つのデフォルト・ポリシーまたは 1 つのカスタム・ポリシーを割り当てることができます。
ユーザーにパスワード・ポリシーが割り当てられている場合、そのパスワード・ポリシーがユーザーに適用されます。
そうでない場合、適用では、ユーザーがメンバーになっているグループに付加されている結合パスワード・ポリシーが使用されます。
この組み合わせには、常に「デフォルトのパスワード・ポリシー」が含まれます。
すべてのユーザーは、このパスワード・ポリシーが関連付けられている、公開されていない内部グループのメンバーです。
ユーザーのグループ・パスワード・ポリシーが結合されると、より制限の厳しい要件が適用されます。
例えば、デフォルト・ポリシーが 4 文字の英字を必要とするが、カスタム・ポリシーが 2 文字の英字を必要とする場合、制約は 4 文字の英字を必要とします。
ユーザーにカスタムポリシーを割り当てると、値がそのまま適用されます。
一方、グループに割り当てた場合は、デフォルトのパスワードポリシー含めて適用されているカスタムポリシーで最も要件の厳しいものが適用されます。
この点を注意してパスワードポリシーを設定する必要があります。
2.カスタムポリシーの作成について
①IBM Security Verifyの管理画面で、[セキュリティ]->[パスワードの管理]を開き、カスタムポリシーで「ポリシーの作成」をクリックします。
②パスワードストレングスの設定を行い、「次へ」をクリックします。
③パスワードセキュリティーの設定を行い、「ポリシーの作成」をクリックします。
次に、ユーザー・グループに割り当てしてみます。
3. カスタムポリシーのユーザー・グループへの割り当てについて
3.1 ユーザーへの個別割り当て
①作成されたポリシーを開き、「ユーザー&グループ」タブをクリックします。
⑤ユーザー情報を参照すると、有効なパスワードポリシーに適用されている条件が表示されます。
割り当て済みのパスワードポリシー欄は、ユーザーに直接ポリシーを割り当てたときのみ表示されました。
パスワードポリシーをユーザーに割り当てると、ユーザー属性が追加されます。
例)urn:ietf:params:scim:schemas:extension:ibm:2.0:User:attachedPasswordPolicy.value: 2354d705-767b-44d1-8aa9-0de3f02db440
"urn:ietf:params:scim:schemas:extension:ibm:2.0:User": {
"lastLogin": "2024-09-10T07:48:34Z",
"lastLoginRealm": "cloudIdentityRealm",
"attachedPasswordPolicy": {
"name": "length 15",
"value": "2354d705-767b-44d1-8aa9-0de3f02db440",
"$ref": "https://>tenant>elisv01.verify.ibm.com/v3.0/PasswordPolicies/2354d705-767b-44d1-8aa9-0de3f02db440"
また、ユーザー属性が更新された旨、通知メールを受け取ります。
パスワードポリシーの割り当てを解除すると、同様に通知メールを受け取ります。
3.2 グループへの割り当て
グループはより厳しい要件が適用されるため、想定通りのポリシーが適用されるか確認します。
「連続する反復文字の最大数」「許可される試行の回数」は最大数のため、小さい値のほうが厳しい要件です。
それ以外は最小値のため、大きな値のほうが厳しい要件となります。
項目名 | デフォルトのパスワード・ポリシー | カスタム・パスワード・ポリシー | 厳しい要件 |
---|---|---|---|
パスワードの最小の長さの文字数 | 8 | 10 | 10 |
英字が必要 | チェック | チェック | チェック |
英字の最小数 | 3 | 5 | 5 |
小文字の最小数 | 2 | 3 | 3 |
大文字の最小数 | 1 | 2 | 2 |
数字または特殊文字が必要 | チェック | チェック | チェック |
数字または特殊文字の最小数 | 3 | 5 | 5 |
数字の最小数 | 2 | 3 | 3 |
特殊文字の最小数 | 1 | 2 | 2 |
連続する反復文字の制限 | チェック | チェック | チェック |
連続する反復文字の最大数 | 1 | 2 | 1 |
パスワードの再使用を許可しない | チェック | チェック | チェック |
許可しない直近パスワードの数 | 1 | 2 | 2 |
ログイン失敗後にアカウントをロックする | チェック | チェック | チェック |
パスワードのロックアウト期間 (分) | 10 | 11 | 11 |
許可される試行の回数 | 5 | 6 | 5 |
この条件でデフォルトポリシー、カスタムポリシーを用意して、グループに割り当てしていきます。
①作成したポリシーを開き、「ユーザー&グループ」タブをクリックします。
③ユーザー情報を参照すると、有効なパスワードポリシーに適用されている条件が表示されます。
割り当て済みのパスワードポリシー欄は、表示がありません。
要件の厳しいパスワードポリシーが適用されていることが確認できました。
パスワードの最小長は 10 文字です。
パスワードには 5 文字以上の英字を含める必要があります。
パスワードには、少なくとも 3 個の小文字 (a..z) を含める必要があります。
パスワードには、少なくとも 2 個の大文字 (A..Z) を含める必要があります。
パスワードには 5 文字以上の数字および特殊文字を含める必要があります。
パスワードには、少なくとも 3 個の数字 (0..9) を含める必要があります。
パスワードには、少なくとも 2 個の特殊文字を含める必要があります。 特殊文字は、アルファベットの大文字または小文字ではなく、数字でもありません。
パスワードには、連続して繰り返される同じ文字の 1 個を超えるインスタンスを含めることはできません。
パスワードを再使用するには、少なくとも 2 個の異なるパスワードが履歴に存在している必要があります。
ログインの連続失敗回数が所定回数を超えた場合、ログインを試行することはできません。
連続してログインに失敗したため、パスワードは 11 分経過するまで認証のために使用できません。
5 回連続でログインに失敗すると、アカウントはロックされます。
RESTAPIでグループ情報を確認すると、グループに属性が追加されていることがかわります。
"urn:ietf:params:scim:schemas:extension:ibm:2.0:Group": {
"groupType": "standard",
"attachedPasswordPolicy": {
"name": "カスタムパスワード",
"value": "82146a16-a896-43db-afa6-72d0da3a0347",
"$ref": "https://<tenant>.verify.ibm.com/v3.0/PasswordPolicies/82146a16-a896-43db-afa6-72d0da3a0347"
ユーザーに割り当てたときのようにユーザー属性にattachedPasswordPolicyが追加されませんでした。
また、ユーザー属性に変更がないため、通知メールも受け取りませんでした。
最後に
IBM Security VerifyのCloud Directory内の、特定ユーザー、グループに対して、異なるパスワードポリシーを適用できました。
今回の機能で、管理者グループのユーザーのみ強力なパスワードポリシーを割り当てるとった運用が可能となるため、利用頻度が高い機能になります。
カスタムポリシーをグループに割り当てた際に、厳しい要件が適用されるという点を気を付けたいと思います。
参考