はじめに
報連相。報告・連絡・相談。
正直に言うと、僕はこの言葉がちょっと苦手でした。新人研修で最初に習うやつ。部下が上司に気をつかって、こまめに顔色をうかがうためのやつ。そんなイメージがあったんです。
チームの若手から「報連相って、もう古いですよね」と言われたときも、内心ちょっとうなずいていました。チャットもタスク管理ツールもあるんだから、見れば分かるでしょ、と。
でも、PMとしてチームの真ん中に座るようになって、それから最近はAIの作業もいくつも並行で受け取るようになって、見え方がガラッと変わりました。
報連相は古くなったんじゃなくて、僕が何のためのものか分かっていなかっただけだったんです。
間違ったアプローチ: 「何かあったら言って」で済ませていた
PMになったばかりのころ、メンバーにはこう伝えていました。
「何かあったら、いつでも言ってください」
気軽に相談できる雰囲気を作ったつもりでした。報連相を強制するのも息苦しいし、必要なときに来てくれればいい、と。
でも実際に起きていたのは、こんなことでした。
・メンバーが「確認待ちです」と書いたまま、半日止まっていた(僕が気づいていなかった)
・「何かあったら」の「何か」が人によって違い、同じ種類の問題でも言う人と言わない人がいた
・長い報告をもらっても、結局僕が何をすればいいのか分からなかった
・相談に来たときには、もう締め切りの前日だった
「いつでも言って」は優しそうに見えて、実は何を・いつ・どんな形で言えばいいのかを、全部相手に丸投げしていたんですよね。それで言われなかったら「なんで早く言ってくれなかったの」と思う。ひどい話です。
なぜうまくいかなかったのか
転機は、AIの作業を何本も同時に受け取るようになったことでした。
AIは、言われたとおりに丁寧な報告をくれます。でも、それが何十件も並ぶと、どれが急ぎでどれがただの経過なのか、受け取る僕のほうが分からなくなる。返事が必要な1本を見落として、何時間も止めてしまったこともありました。
そのとき、ふと思ったんです。これ、僕のチームのメンバーがずっとやられていたことと同じだと。
報告の形がそろっていないと、受け取る側はすべてを同じ重さで読むしかない。読む量が増えるほど、本当に大事なものを見落とす。
報連相って、部下が上司に気をつかうためのものじゃなかったんです。受け取る側が1人しかいないという前提で、その1人を詰まらせないための仕組みだった。
そして、その仕組みを作る責任は、言う側ではなく、受け取る側にあったんだと思います。
正しい理解: 報連相は、受け取る側が型を渡すもの
そこで、メンバーにもAIにも、同じ型を渡すようにしました。
報告: 1行目に結論、2行目に「相手にやってほしいこと」
報告の形は、これだけ決めました。
結論: (何が終わったか / 何で止まっているか を1行)
やってほしいこと: (なければ「なし」。あれば期限つきで)
動き: (いま何をしていて、次に何をするか)
細部: (必要なら)
一番効いたのは「やってほしいこと」の行です。ここが「なし」なら、受け取る側はあとで読めばいい。ここに何か書いてあるものだけ、先に拾えばいい。
メンバーからは「書くことが決まっていると楽です」と言われました。何を書けばいいか迷う時間がなくなるんですよね。
連絡: 送りつけるより、置き場所を決める
経過の連絡は、個別に送ってもらうのをやめて、決まった1か所に置いてもらうようにしました。僕のほうから見に行きます。
**連絡は「届ける」より「取りに行ける場所に置く」**ほうが、お互いの手が止まりません。届く通知が少ないほど、本当に届くべきものが目立ちます。
相談: 「どうしますか?」ではなく「こう決めて進めています」
これが一番大きな変化でした。
以前の相談は「AとB、どちらにしますか?」で、返事が来るまで止まっていました。僕が会議続きだと、半日止まることもある。
今は、こう頼んでいます。
相談: AとBで迷っています
仮決め: Aで進めています(理由: 既存のやり方に近いため)
戻すなら: ここを取り消せばBに切り替えられます
僕の返事が遅れても、その間の作業はムダになりません。返事は「Aでいいよ」か「Bに戻して」の一言で済む。相談の形が「決めてください」から「こう決めました、違ったら言って」に変わっただけで、待ち時間がほぼ消えました。
しかもこの形だと、メンバーは自分で考えて決める練習にもなる。僕が全部決める必要がなくなったのは、思わぬおまけでした。
振り返ると、先輩は全部言っていた
新人のころ、先輩によく言われました。「結論から言って」「途中でいいから言って」「迷ったら、自分ならどうするかを持ってきて」。
当時は、細かい人だなと思っていました。でも今なら分かります。あれは礼儀やマナーの話ではなく、受け取る側が詰まらないための技術を、先輩なりに渡してくれていたんだと。
AIで並行作業が当たり前になると、人間はますます「受け取って決める側」に回ります。受け取れる量は増えません。だからこそ、報連相は古くなるどころか、これから一番効いてくるんじゃないかと思っています。
まとめ
- 報連相は部下が上司に気をつかうためのものではなく、受け取る側が1人でも詰まらないための仕組み
- 「何かあったら言って」は、何を・いつ・どう言うかを相手に丸投げしている
- 型を渡す責任は、言う側ではなく受け取る側にある
- 報告は「結論1行」と「やってほしいこと」を先頭に固定する
- 連絡は送りつけず、置き場所を決めて取りに行く
- 相談は「どうしますか?」ではなく「仮にこう決めて進めています、戻すならここ」にする
- この型は、人間のメンバーにもAIにもそのまま効く
古くさいと思っていた言葉ほど、使う場面が変わったときに本当の意味が見えてくるのかもしれません。