「分かりました」と言った新人は、本当に分かっていたか
先輩が設計について説明した後、新人に聞きます。
「ここまで大丈夫?分かった?」
新人は元気よく答えます。
「はい、分かりました!」
1週間後、新人が提出したコードは、説明した設計と全く異なるものでした。
「あの時分かったって言ったよね?」
「すみません…実はあの時点で、半分くらい理解できていませんでした…」
なぜ「分かりません」が言えないのか
新人が「分かりません」を言えない理由は、能力の問題ではなく、環境の問題です。
新人の脳内:
❌ 「分からない」と言ったら → 無能だと思われる
❌ 「分からない」と言ったら → 先輩の時間を奪って申し訳ない
❌ 「分からない」と言ったら → 評価が下がる
❌ もう一度説明してもらうのは → 迷惑
しかし実際には、「分からないまま進んだ結果のやり直し」の方が、チームにとって遥かに大きなコストなのです。
「分かりません」と言って再説明 → 10分のコスト
「分かりました」と嘘をついて1週間後に発覚 → 数日分の手戻りコスト
これは新人「だけ」の問題ではない
ここが核心です。「分かりません」を言えない文化のチームでは、ベテランも「助けて」を言えないのです。
- 中堅エンジニアが「この技術、実はよく分かっていない」と言えない
- リーダーが「見積もりに自信がない」と言えない
- シニアが「このコード、自分にも分からない」と認められない
全員が「分かっているフリ」をしている組織は、ある日突然、誰にも止められない規模のインシデントを起こします。
Win-Winの文化を作る具体的アクション
先輩側ができること
1. 自分から「分からない」を見せる
✅ 「俺もこの部分はうろ覚えだから、一緒にドキュメント見よう」
✅ 「このエラー見たことないな。ちょっと一緒にググろう」
先輩が「分からない」を自然に口にしている姿を見せることで、新人は「あ、分からないって言っていいんだ」と安心します。
2. 「分かった?」ではなく「何が分かって、何がまだ曖昧?」と聞く
❌ 「分かった?」→ YesかNoしか答えられない
✅ 「今の説明で、一番引っかかったところはどこ?」→ 具体的な不明点が出てくる
3. 「良い質問だね」を口癖にする
新人が「分かりません」と言った瞬間に「良い質問だね」「聞いてくれてありがとう」と返す。これだけで、その新人は次からも安心して質問できるようになります。
新人側ができること
1. 「分からない」を細分化する
❌ 「全部分かりません」→ 先輩が困る
✅ 「AとBは分かったんですが、CがDとどう繋がるかが分かりません」
→ 先輩がピンポイントで説明できる
2. 「理解度チェック」を自分からやる
「確認なんですが、今の説明は
"XをYに渡して、Zが返ってくる" という理解で合ってますか?」
自分の理解を言語化して先輩に確認する。合っていれば「そう!」、ズレていれば「惜しい、Yじゃなくて…」とすぐ軌道修正できます。
「分かりません」は弱さの告白ではなく、「ここから正しく理解したい」という成長の宣言です。そしてその宣言を歓迎するチームは、新人だけでなく全員が安心して挑戦できる、最も強いチームになります。