はじめに
EtherNet/IPで通信をやってみようの記事です。
マニュアルを読んでいて、つまづきやすいのはMELSECNETのように「送信/受信」や「親局/子局」というわかりやすい名前でなく、役割によっていろいろなカタカナの名前があるからだと思います。
この記事では、EtherNet/IPの基本概念と用語について詳しく解説します。
EtherNet/IPとは
EtherNet/IPは、標準のイーサネット技術を利用した産業用ネットワークプロトコルです。
簡単なまとめ
以下のような特徴があります:
- 産業用途に特化: 製造業やプロセス産業など、工場やプラントの自動化システムで広く利用されています
- 標準イーサネットベース: 家庭やオフィスで使われている一般的なイーサネット(TCP/IP)を基盤としているため、汎用性が高く、IT技術との親和性も高いのが特徴です
- CIP (Common Industrial Protocol) を採用: データ通信の仕組みとしてCIPという共通の産業用プロトコルを採用しています。これにより、様々なベンダーの機器間で互換性のある通信が可能です
- リアルタイム通信と汎用通信の混在: 制御に必要なリアルタイム性の高いデータ通信(Implicitメッセージ)と、ファイル転送や設定などリアルタイム性が不要なデータ通信(Explicitメッセージ)を同じネットワーク上で混在させることができます
- ODVAが管理: ODVA (Open DeviceNet Vendor Association) という団体によって管理・推進されています
要するに、EtherNet/IPは、汎用的なイーサネットのメリットを活かしつつ、産業用途に求められるリアルタイム性や信頼性を実現した通信規格と言えます。
Class1 タグ通信 Input Only 同士での通信
PLC同士の通信例です。Input Only同士での通信になるかと思います。
データ受信(PLC-Aからの視点)
PLC-A | データの方向 | PLC-B |
---|---|---|
スキャナ (Scanner) | ← | アダプタ (Adapter) |
オリジネーター (Originator) | ← | ターゲット (Target) |
コンシューマ (Consumer) | ← | プロデューサー (Producer) |
データ送信(PLC-Aからの視点)
PLC-A | データの方向 | PLC-B |
---|---|---|
アダプタ (Adapter) | → | スキャナ (Scanner) |
ターゲット (Target) | → | オリジネーター (Originator) |
プロデューサー (Producer) | → | コンシューマ (Consumer) |
EtherNet/IPの重要用語解説
EtherNet/IPにおける「スキャナ」「アダプタ」「ターゲット」「オリジネーター」「プロデューサー」「コンシューマ」は、それぞれ異なる役割を持つデバイスや概念です。これらの用語は、EtherNet/IPの通信モデルを理解する上で重要です。
スキャナ (Scanner)
- 役割: EtherNet/IPネットワークにおけるマスターまたはクライアントの役割を担います
- 機能: 他のデバイス(アダプタ)に対して通信コネクションを確立し、定期的なI/Oデータ交換(サイクリック通信、Implicitメッセージ)や、必要に応じたメッセージ通信(Explicitメッセージ)を行います
- 例: PLCや産業用PCなど、ネットワーク上のデバイスを制御・監視するコントローラがスキャナとして機能します
アダプタ (Adapter)
- 役割: EtherNet/IPネットワークにおけるスレーブまたはサーバーの役割を担います
- 機能: スキャナからの通信コネクション確立要求を受け入れ、スキャナからのデータ要求に応答したり、自身からの情報(例えばセンサデータ)をスキャナに提供したりします
- 例: センサ、アクチュエータ、バルブ、I/Oモジュールなど、現場の機器がアダプタとして機能します
スキャナとアダプタの違い
**スキャナは通信を「開始する側」、アダプタは通信を「受け入れる側」**という関係です。
オリジネーター (Originator)
- 役割: 通信コネクションの確立を開始するデバイスです
- 機能: 接続をオープンするための要求を送信します
- 関連: 一般的に「スキャナ」がオリジネーターの役割を担うことが多いです
ターゲット (Target)
- 役割: 通信コネクションの確立要求を受け入れるデバイスです
- 機能: 接続要求に応答し、コネクションを確立します
- 関連: 一般的に「アダプタ」がターゲットの役割を担うことが多いです
オリジネーターとターゲットの違い
**オリジネーターは「コネクションをオープンする側」、ターゲットは「コネクションをオープンされる側」**という関係です。スキャナ=オリジネーター、アダプタ=ターゲットと概ね考えて問題ありませんが、文脈によってはメッセージ通信において、アダプタがオリジネーターとなる場合もあります。
プロデューサー (Producer)
- 役割: データやメッセージを生成し、送信するデバイスです
- 機能: 自身の持っている情報(I/Oデータやメッセージなど)をネットワーク上に提供します
- 関連: Implicitメッセージ(サイクリック通信)やExplicitメッセージの両方でプロデューサーが存在します
コンシューマ (Consumer)
- 役割: データやメッセージを受信し、利用するデバイスです
- 機能: ネットワーク上を流れる情報を受け取り、自身の処理に利用します
- 関連: プロデューサーが送信したデータをコンシューマが受信するという関係です
プロデューサーとコンシューマの違い
**プロデューサーは「データを送信する側」、コンシューマは「データを受信する側」**という関係です。
まとめ
これらの用語は、EtherNet/IPの柔軟な通信アーキテクチャを理解する上で非常に重要です。
重要なポイント
- スキャナ/アダプタ: コネクションの確立における主従関係を示す
- オリジネーター/ターゲット: コネクションの確立における主従関係を示す
- プロデューサー/コンシューマ: データフローにおける送受信の関係を示す
用語が多くて疲れますね。次回からは実例をあげて通信確認をしてみましょう。
このような用語の理解により、EtherNet/IPの通信設定がより確実に行えるようになります。