39
35

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?

More than 5 years have passed since last update.

これから研究論文を書き始める人にオススメする簡単に構築できるお手軽TeX環境と小ワザ

Last updated at Posted at 2017-12-10

これは「mast Advent Calendar 2017」12月10日分の記事です.

#はじめに
僕は群馬高専出身で,3年次編入でmastに入学しました(mast11,mast13).今は筑波大学大学院コンピュータサイエンス専攻の修士2年(cs16)です.インタラクティブプログラミング研究室デジタルネイチャーグループで研究をしています.2016年度に発表した論文数は14件です.すべての論文をTeXを使って作成しています.そんな僕がおすすめする簡単に構築できるお手軽TeX環境や小ワザを紹介します.

#TeXのインストール

#TeXエディタ
MacにおけるTeXの執筆環境というと大きく3つに分けられて,最も一般的なTeXShopという無料のTeX用のエディタを使う,Atomやvimにプラグインを入れてTeX仕様にする,そして今回紹介するTexpadを使う方法です.

スクリーンショット 2017-12-10 15.53.04.png TexpadはTeX執筆に最適化された有料のエディタです.$24.99で日本円で約2,500円強です.この価格以上の価値があります.

##Texpadのここが良い
###%TODOでメモができる
スクリーンショット 2017-12-10 16.12.28.png

TODO: hogehoge

TeXの文章内にコメントで↑上記のように書くと左のドキュメントアウトラインにTODOsとして表示されます.執筆中のメモや「あとで直す」等の記録に最適です.

###目次が表示される
スクリーンショット 2017-12-10 16.16.52.png
\section\subsectionなどが目次として表示され,選択された場所へエディタ上で移動することができます.特に10ページ以上となるようなフルペーパー論文で強力です.

###PDF→エディタ,エディタ→PDFジャンプができる
スクリーンショット 2017-12-10 15.59.08.png
これもフルペーパー論文を書く上では必須.

###サジェスト
スクリーンショット 2017-12-10 16.31.28.png
TeXコマンドはもちろん,図のリファーなどもすべてサジェストしてくれます.

#TeXマクロ
TeXを使って論文を執筆するにあたって,TeXマクロを上手く使うと論文執筆がより快適になります.

##マーキング系

\newcommand{\memo}[1]{\textcolor{red}{memo:#1}}
\newcommand{\newsentence}[1]{\textcolor{blue}{#1}}
\newcommand{\reduce}[1]{\textcolor{magenta}{#1}}

\memo{メモ内容}は先生や共著者と相談したいことなどをよく書きます.また,\newsentence{新しく追加した内容}は新たに追加した文章をよくこれでマーキングして,先生にチェックしてもらう時の目印にしたりします.\reduce{削るかもしれない内容}は国際学会のフルペーパーはよく「USレターサイズで10ページまで」などと内容量の規定があったりするので,削り代はこのコマンドで括ったりすると便利です.そして,\newcommand{\reduce}[1]{\textcolor{magenta}{#1}}これを\newcommand{\reduce}[1]{\textcolor{magenta}{}}(#1を消す)にすることで,エディタ内の文章をわざわざコメントアウトすること無しに最終的なPDFから削除することができます.分量調整に便利です.

##固有名詞をマクロにする
HCI系の研究ではよく何か新しいシステムを作ってそれに名前をつけたりするのですが,そのような手法名をマクロにすると便利です.
例えば,「Optical Marionette」という手法を開発した場合,本文中に大量にOptical Marionetteという手法名が登場しますが,それをマクロに置き換えます.

\newcommand{\methodname}{Optical Marionette}

このようにすることによって以下のメリットが得られます.

  • タイポが発生しにくくなる
  • 手法名が後から変わったとしても,マクロの内容だけ変えれば良い

##スペーシングを使いこなす
TeXには通常の半角スペースの他に半角スペースよりもちょっと小さいスペース\,や,改行しないスペース~が存在します.
\,は通常の半角スペースよりも小さいスペースを入力することができ,数値の単位を入力する時に使います(例:50\,mm100\,km/s).
~は改行をしないスペースなので関連文献を引用する時に使用します(例:Hoge et al. proposed foo method~\cite{hoge:2017}.).

#おまけ:なぜTeXが良いのか?
##コンテンツの記述と見た目の記述を分けることができる
TeXはよく,HTML+CSSに例えられます.Webはコンテンツ自体はHTMLに記述し,見た目の部分はCSSに記述します.TeXはWebページ作成におけるHTMLのマークアップに似ています.\section{ここにタイトルを入れる}というように,各属性をマークアップし(これがHTMLだと<h1>ここにタイトルを入れる</h1>),構造化しながら文章全体を作成していきます.そして,デザインは学会などが提供するテンプレートファイルを使います.Wordなどに比べてのTeXのメリットは,この「コンテンツの記述」と「見た目の記述」が分けられるところです.TeXは構造しか書かないので,例えばある学会のテンプレートで論文を作成して,それが残念ながらリジェクトされ,別の学会へ出そう!ということになっても,テンプレートさえ変えればそのまま違う学会のフォーマットに即した論文に変わります.また,このようにコンテンツの記述と見た目の記述が別れているので,基本的には著者はデザインはいじれません.ですので,出版校正段階での修正出戻りが起こりにくいです.よくWordだと簡単にテンプレートのデザインを変更できてしまう(or 変更するつもりが無くてもいじっているうちに変更してしまう)ということが発生し,校正段階で修正が頻繁に起きます.
↓は実際に校正段階で校正担当から送られてきたメールの一文です.

If you used Microsoft Word to prepare your article, I strongly recommend that you use LaTeX instead. It is far easier to prepare an acceptable article with LaTeX, even for the novice.

その他にも参考文献や図の参照が楽だったり,数式の記述が柔軟だったり,gitを使うと複数人で共同執筆ができたりと,様々なメリットがTeXにはあります.この辺は使い始めると追々実感できると思いますが,やっぱり一番は「見た目」の部分を気にせずに,単にコンテンツの記述に集中できるという点がTeXの一番のメリットだと僕は感じます.

#おわりに
ソフトをインストールすれば柔軟な執筆環境が提供されるWordに比べ,TeXは環境構築が面倒であったり,エディタを使いやすくカスタマイズする必要があったり,学習コストがかかったりなど初期コストが高いので,お金の力を使ってなるべく簡単に快適な執筆環境を作成する方法を紹介しました.また,TeXはマクロを簡単に作成でき,容易に執筆環境を改善することができます.TeXマクロはどんどん使ったほうが良いです!(作業量に対するコスパが高い).もし,バリバリフルペーパーを書く予定だ!という人はぜひこれを機にTeXを始めてみたり,TeXの使い方を見直してみてください.
TeXとWordはブラウザ戦争と同じで,正直なところは「好きなものを使うのが一番」ですが,僕の考えとしては2ページくらいであればWordの方が楽で,それ以上であればTeXの方が楽だと思います!

39
35
0

Register as a new user and use Qiita more conveniently

  1. You get articles that match your needs
  2. You can efficiently read back useful information
  3. You can use dark theme
What you can do with signing up
39
35

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?