概要

2026年9月15日にRuslan Mizhaev氏によって発表された八面体を、紙の展開図にして、誰でも工作できるようにしました。切って貼るだけなので、最新の数学論文の内容に小学生でも触れることができます。
論文の内容
論文のタイトルは「Integer Realization of an Equivelar Octahedron of Genus 3」で、日本語で言うと「種数3の等型八面体の整数座標による実現」でしょうか。
話題の八面体がこれです。

頭の中でイメージできましたか?🤔 私にはさっぱりです。ということで、実際に手を動かして作ってみましょう!
なお、私は数学の人ではないので詳しいことは分かりませんが、この論文のすごいところは次の通りのようです。
この論文のすごいところ
- 8枚しか面がないのに、どの2枚の面も辺で接し、穴が3つある立体 を
- 誰でも座標から簡単に再現・検証できる形で示した
備考
種数3というのは穴が3つあるということで、著者は基本となる構造を2020年にすでに発表しています。今回の論文の新しい点は、24頂点すべてに整数の$(x, y, z)$座標を与え、面の頂点順序や平面の方程式も示したことで、この形のアイデアを、ほかの人がCADや計算で確かめられる具体的な設計図にしたことのようです。そのおかげで、私のような素人も簡単にこんな遊びができるというわけです。
作ってみよう
ペーパークラフト用
準備する道具
- プリンタ、厚紙
- はさみ
- 液体のり(もしくは木工用ボンド)
- 爪楊枝(あれば)
A4で印刷して、切って貼りましょう! やや厚めの紙だと作りやすいです。私は0.22mm厚の紙に印刷しました。
切るだけで1時間くらいはかかった気がします。のりしろは山折りと谷折りが混在していますが、区別されていません。つながり方を見て判断してください。折り線をカッターナイフで軽くなぞるように傷つけておくと、きれいに折れます。
同じ番号の頂点が重なるように、のりで貼り付けていきます。私ははじめスティックのりを使っていましたが、液体のりのほうがいいです。爪楊枝などの先の細い棒で塗るのが楽です。
組み立てを進めていくうちに、混乱が訪れます。「8面の9角形が」「それぞれ他のすべての面と接している」ということがいかに凄い状況かが、よくわかります。
「さすがにこの面とこの面は接して……いるのか。マジか。」 となります。
のりしろが大きすぎてはみ出るところがあり、適当にカットしながら進めました。最後のほうは、隙間からなんとかのりを塗って、無理やり押さえてつけました。器用でないとなかなか難しいです。
それでも、なんやかんやあってなんとか完成!!
感動です。細部は完璧ではないですが、面ごとに色分けされているので境界が分かりやすく、「あの面とこの面は違うのか」 というのも視覚的に理解できます。すべての辺を自分で糊付けしたことで、36の辺がどこにあって、どのように接しているのか、どの面を繋いでいるのか、漏れなく確認することができました。
ペーパークラフトだけでも楽しいし、数学が分からない私でも不思議な感覚を体験することができました。楽しい。
あなたもぜひ挑戦してみてください! ↓
カラーユニバーサルデザイン推奨配色版(おすすめ)
元論文に近いカラーリング版
白黒版
3Dプリント用
せっかくなので、ご家庭の3Dプリンタで印刷できるように、STLデータも作ってみました。

適当に回転させて、サポートやブリムを付けてスライスし、印刷してください。
先端が鋭利なので、将来はまきびしとしての活躍が期待されます。
見れば見るほど、「なるほど! 分からん!」という感覚になります。面が色分けされているペーパークラフトのほうが、分かりやすい感じがしました。
展開図の制作過程
論文の内容のチラ見
また、各面が、どの頂点をどんな順番で結べばできるかも書かれています。

この立体は、9角形8面で構成されるており、面は次の2種類だけです。

つまり、これを4枚ずつ印刷してつなげれば立体になるはずです。実際にはそれぞれ裏返しにしたパターンが含まれます。
2次元平面上での頂点座標
2種類の面の頂点を、ベクトル変換で3次元座標から2次元座標にすると次のようになります。
F3の頂点座標
| 頂点 | x | y |
|---|---|---|
| V7 | $153$ | $9\sqrt{10}$ |
| V5 | $0$ | $0$ |
| V8 | $600$ | $0$ |
| V3 | $384$ | $72\sqrt{10}$ |
| V17 | $309$ | $147\sqrt{10}$ |
| V23 | $282$ | $126\sqrt{10}$ |
| V9 | $348$ | $84\sqrt{10}$ |
| V15 | $264$ | $112\sqrt{10}$ |
| V14 | $228$ | $84\sqrt{10}$ |
F1の頂点座標
| 頂点 | x | y |
|---|---|---|
| V6 | $84\sqrt{19}$ | $0$ |
| V10 | $112\sqrt{19}$ | $0$ |
| V16 | $\dfrac{1848}{\sqrt{19}}$ | $120\sqrt{\dfrac{22}{19}}$ |
| V22 | $\dfrac{1530}{\sqrt{19}}$ | $240\sqrt{\dfrac{22}{19}}$ |
| V18 | $\dfrac{810}{\sqrt{19}}$ | $60\sqrt{\dfrac{22}{19}}$ |
| V7 | $\dfrac{531}{\sqrt{19}}$ | $90\sqrt{\dfrac{22}{19}}$ |
| V5 | $0$ | $0$ |
| V1 | $72\sqrt{19}$ | $0$ |
| V2 | $\dfrac{996}{\sqrt{19}}$ | $40\sqrt{\dfrac{22}{19}}$ |
グラフ
これを$xy$平面でグラフにしてやれば、各面を正確に描画できるというわけです。

展開図の作成
ペーパークラフトでは、頂点番号は面の内側に書かないと、紙を切った後に分からなくなってしまいます。また、のりしろがあると作りやすくなります。そこで、その辺を調整した展開図を作成したというわけです。
授業で扱う際のヒント
小学生向け
「こんな複雑な立体もあるんだよ!」というだけでも十分面白いと思います。特に、穴が空いていたり、面が凹凸のある多角形になっていたりする点も面白いです。
普通の正多面体の工作ができた生徒の挑戦課題にするのもいいかもしれません。
注意
- やってみたら分かるのですが、組み立ては結構難しいです
- 切り取るだけで授業が終わります
中高生向け
「オイラーの多面体定理」を説明しておいた上で、穴の空いた多面体では
v-e+f=2(1-g)
が成り立つんだよ、ということを伝えて、まず単純な図形で確かめさせた後、この図形でも成り立つことを確かめさせるとかどうでしょう。
24-36+8=2(1-3)
ファイル
教育目的等でご自由にお使いください。
