監視カメラ/IP電話/APを設置した直後、「PoEから給電されない」というトラブルに遭遇したことはありませんか?この記事では、Cisco Catalyst 9300での実機検証をベースに、PoE給電トラブルの切り分け手順を整理します。
PoE規格を30秒でおさらい
| 規格 | 最大供給電力(PSE) | PD受電電力 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| 802.3af (PoE) | 15.4W | 12.95W | IP電話、軽量AP |
| 802.3at (PoE+) | 30W | 25.5W | 802.11ac AP、PTZカメラ |
| 802.3bt Type3 | 60W | 51W | Wi-Fi 6 AP、屋外カメラ |
| 802.3bt Type4 | 90W | 71.3W | ノートPC、ディスプレイ給電 |
PSE側とPD側で電力に差があるのは、ケーブル損失(100mのCat5eで約2W)を見込んでいるためです。
まず物理から疑う(チェックリスト)
経験則ですが、PoE給電NGの半分くらいは物理レイヤで決着します。
- PoE対応ポートか:同じ筐体でも一部のみPoE対応の機種あり
- 規格の互換性:PD側がPoE+要求でPSEはPoEのみ、というパターンが地味に多い
- ケーブル種別:Cat5e以上か。CCAケーブル(銅クラッド)はPoE非推奨
- ケーブル長:100m超過していないか(中継含む実長)
- PD単体の生死:付属電源アダプタで起動するか試す
show power inlineの読み方
Switch# show power inline
Module Available Used Remaining
(Watts) (Watts) (Watts)
1 740.0 210.5 529.5
Interface Admin Oper Power Device Class Max
Gi1/0/1 auto on 15.4 IP Phone 8851 4 30.0
Gi1/0/2 auto on 25.5 AIR-CAP3702I-Q-K9 4 30.0
Gi1/0/5 auto faulty 0.0 n/a n/a 30.0
Oper列の状態を覚えておけば話が早いです:
| Oper表示 | 意味 | 疑うべき箇所 |
|---|---|---|
| on | 正常給電中 | 特になし |
| off | PD未検出 or 設定OFF | ケーブル断線、power inline never
|
| faulty | 給電トライ失敗 | PD不良、規格不一致、ケーブル長 |
| power-deny | 電力バジェット不足 | スイッチ予算、優先度設定 |
| err-disable | 過電流などで遮断 | ショート、PD HW異常 |
主な原因と対処パターン
1. 電力バジェット不足(power-deny)
Switch(config)# interface Gi1/0/1
Switch(config-if)# power inline port priority high
Switch(config-if)# power inline static max 7000
⚠ static maxをPDの実消費より小さくすると、起動時の突入電流で給電拒否になります。2〜3W余裕を持たせるのが定石。
2. 規格不一致(PoE←→PoE+)
PDがPoE+(30W)を要求しているのにスイッチがPoE(15.4W)しか出せない場合、リンクは上がるけどリブートを繰り返す不安定動作になります。show cdp neighbors detailでPDのClassを確認、Class 4以上ならPoE+対応スイッチ/インジェクターが必須。
3. 設定ミス(power inline never)
前任者のセキュリティポリシーで未使用ポートをPoEオフにしているケース。
Switch(config-if)# no power inline never
Switch(config-if)# power inline auto
4. CCAケーブルの罠
以前、防犯カメラ20台のうち3台だけ起動しないという案件で、原因はCCA(Copper Clad Aluminum)ケーブル混入でした。導体抵抗が高く電圧降下、PD認識NG。配線業者の在庫切れでこっそり混ざってる、なんてことが現場ではあるので注意。
切り分けフロー
- 別ポート・別ケーブルで再現確認:ケーブル/ポート/PDのどれが悪いかが絞れる
-
show power inline interface+show logging | include POWER:%ILPOWER-のログをチェック - PD単体動作確認:付属アダプタで起動するならPDは生きてる
- 最終兵器:PoEインジェクター:スイッチを介さず単体給電してPSE/経路を完全分離
詳しくはブログで
この記事の完全版(規格別比較表、Operコード対応表、現場体験談、FAQ含む)はブログで公開しています。
👉 PoEで給電できない原因と切り分け手順|show power inline・PD認識・電力不足の落とし穴【Cisco実機検証】