🟨 この記事はClaude Code(AI)と2ヶ月で開発した日本初のWebサイト校正ツール「fuSen」の開発ブログです。登録不要でデモを試せます → https://app.fusen.cloud/demo
第十一話で、「自分が納得するまでお金は取れない」と書いた。
正直に言えば、早く有料化したい気持ちはある。時間もお金もかけて作ったものだ。ビジネスとして成立させたい気持ちがないと言えば嘘になる。
でも、fuSenはそもそも利益のために作ったツールじゃない。自分自身がユーザーだから作った。だから、自分が完全に納得してからじゃないと、有料化するつもりはなかった。
そして最近、その「納得」の意味が、少し変わってきた。
「めっちゃ使いやすいです!」
ある日、一通のメッセージが届いた。
自社で9つのサイトを運用されている、某社のA社長からだった。A社長自身が制作物のレビューでfuSenを日常的に使ってくれている、数少ない実働ユーザーのひとりだ。
「Fusen、めっちゃ使いやすいです!ありがたく使わせて頂いています😊 これ有料課金でもリリースできる気がします!」
嬉しかった。
自分が作ったものを、実際に業務で使ってくれている人が、「有料でもいける」と言ってくれた。開発者にとって、これ以上の言葉はない。
そしてこのメッセージから、fuSenは新しいフェーズに入っていくことになる。
3つの要望が届いた
A社長からは、続けて要望が届いた。全部で3つ。
ひとつめ。「校正がすべて終わったものは、アーカイブボックスに入れたい」
複数サイトを運用していると、完了したレビューがダッシュボードに溜まり続ける。進行中のものと終わったものが混ざって、使いづらくなる。
これはすぐに理解できた。自分も同じ状況になっていたからだ。
各レビューのメニューから「アーカイブ」を選べば一覧から片付き、サイドバーの「アーカイブ」からいつでも確認・復元できるようにした。
設計で少し悩んだのは、アーカイブ後にオーナーだけは書き込めるようにするかどうかだった。誤記を直せる方が実用的だと思ったからだ。
でも実際に触ってみて、考えを変えた。アーカイブは「完了の宣言」なのに、オーナーだけ書けるのは一貫性を欠く。だから、オーナー自身も含めて全員書き込み不可にした。編集したければ、同じ場所にあるボタンで解除すればいい。
ふたつめ。「初稿のfuSenと同じページに、第2校を入れられると良い」
これは、言われて初めて気づいた課題だった。
Webサイトのレビューは対象のURLを見に行くので、修正すれば自然に反映される。でもPDFや画像は、アップロードしたファイルそのものだ。第2校ができたら、新しいレビューを作り直すしかない。すると、初稿の指摘履歴が分断されてしまう。
そこで「ファイルを差し替え」機能を実装した。これまでの付箋とコメントを残したまま、中身だけが差し替わる。
初稿で指摘する。第2校に差し替える。直っていれば「解決済み」にする。まだなら返信で追記する。
最初は「版管理」(初稿・第2校を切り替えて見られる仕組み)も考えたけれど、過剰だった。指摘した人の実際の動きは「見て、直っていれば解決済みにする」だけ。既存の概念にそのまま乗るので、新しい仕組みは要らなかった。
「できません」と正直に答えたら
みっつめ。「他人がオーナーのfuSenも、アーカイブしたい」
これには、できませんと答えた。
fuSenは基本的にオーナーが主軸の設計になっている。招待された人が他人のレビューをアーカイブできてしまうと、オーナーの権限を無視することになる。それは設計として崩せない。
そう理由を添えて伝えた。
すると、A社長が本当の困りごとを言い直してくれた。
「今さら連絡を取るほどではない相手のFUSENがいつまでも残っちゃうかな、と思い、それならそれぞれのレビュアーが表示・非表示を決められたら便利かなと思いました。お気に入りの★マークが付けられて、★マークは上位に表示されるでも良いかもしれません」
これが、正解だった。
求められていたのは「アーカイブ」ではなく「自分の一覧から隠す」ことだった。オーナーの権限をまったく侵さない、別の概念だ。
すぐに実装した。招待されたレビューを一覧から非表示にできる。非表示にしても他の人の画面には影響しない、完全な個人設定だ。一覧の下部からいつでも戻せる。
そして★のお気に入りも実装した。★を付けたレビューは、一覧の先頭に固定される。
断らなければ、この形にはならなかった
この一件で、大事なことを学んだ。
要望をそのまま実装しなくてよかった、ということだ。
言われた通りに作っていたら、権限設計が壊れる機能になっていた。「できません」と理由を添えて答えたからこそ、A社長が本当の課題を言い直してくれた。そしてそれは、最初の要望よりずっと良い形だった。
ユーザーの要望は「解決策」ではなく「課題のヒント」なんだと、身をもって理解した。
「できません」と正直に答えることが、次の対話を生む。これは、Web制作でクライアントと向き合ってきた20年の経験とも重なる話だった。
「めっちゃ使いやすい」の裏で、ずっとバグっていた
もうひとつ、忘れられない出来事がある。
A社長から、バグ報告も届いた。
「画像レビューで、ある一定位置から右へ行かない」
調べてみると、画像を中央寄せしたときの座標系にズレがあり、付箋が画像幅の26.8%の地点までしか動かせない状態になっていた。
さらに深刻な副作用もあった。保存された座標が「レビューを作った人のウィンドウ幅」に依存していたのだ。つまり、別の画面幅で開くと付箋が横にずれてしまう。
該当する画像レビューは7件。そのうち6件が、A社長のものだった。
つまり彼は、ずっとズレた状態でfuSenを使い続けていたことになる。
それでも「めっちゃ使いやすい」と言ってくれて、要望まで出してくれていた。
報告してもらえなければ、自分は気づかないままだった。使ってくれる人がいて、声を上げてくれる人がいて、初めて見えることがある。
75人の登録より、3人との対話
いまfuSenのベータ登録は75名ほど。
そのうち実際にレビューを作成した人は38名。他の人を巻き込んで使っている人は8名。直近30日も動いている人は、3名。
正直、少ない。第十話で「プロモーションは大変だ」と書いたけれど、その現実は今も続いている。
でも、その3人が、プロダクトを大きく前に進めてくれた。
72人の登録より、3人との対話のほうが価値があった。これは、数字を追いかけていたら絶対にわからなかったことだ。
「納得」の定義が変わった
冒頭に書いた「自分が納得するまでお金は取れない」という話に戻る。
この一連の出来事を通じて、自分の中で「納得」の定義が変わった。
これまでの納得は、自分基準だった。自分が使って気持ちよく動くこと。バグがないこと。自分が「これでいい」と思えること。
でも今は、そこにもうひとつ加わった。
使ってくれる人が「これならお金を払ってもいい」と思えること。
A社長の「有料課金でもリリースできる気がします」という言葉は、まさにその答え合わせだった。自分の納得と、ユーザーの納得が重なる場所。そこが、有料化のタイミングなんだと思う。
そして今、fuSenは自分ひとりの理想を追いかけるフェーズを終えて、ユーザーの声とともに進化していくフェーズに入った。
これは、大きな変化だ。
要望をくれる人がいる。バグを見つけてくれる人がいる。「できません」と答えたら、もっといい案を返してくれる人がいる。
そういう人たちと一緒に作っていけるなら、fuSenはもっと良くなる。
Aさん、本当にありがとうございます。
次回:実装スピードが信頼になる、という話。要望を受けた当日に本番稼働させ続けている理由。
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