はじめに
Model Context Protocol (MCP)は、AIアシスタントが外部ツールやサービスと安全に対話できるようにするフレームワークです。Zapier MCP Serverは、AIアシスタントがZapierのエコシステム内の7,000以上のアプリと連携できるようにする強力なツールです。この連携により、AIアシスタントは実世界のタスクを実行し、データを取得・操作し、さまざまなアプリケーション間でアクションを自動化できるようになります。
公式リンク: https://github.com/modelcontextprotocol/servers
前提条件
このチュートリアルを進める前に、以下のものが必要です:
- Zapierアカウント(無料または有料プラン)
- MCP対応のAIクライアント(Claude Desktop、Cursor、Windsurf、またはカスタムMCPクライアント)
- Node.js(インストールされていること)
- 基本的なJSONとREST APIの理解(オプション)
1. Zapier MCPの基本概念
Zapier MCPは、AIモデル(ClaudeなどのLLM)とZapierのアプリケーションエコシステム(Slack、Gmail、Trelloなど)間の通信を可能にする特殊なミドルウェアです。この通信は、OpenAPI仕様に準拠したRESTful APIエンドポイントを通じて行われます。
主な特徴:
- 高度なAI連携: OpenAI GPT、Claude、Cursorなどの主要AIプラットフォームとの互換性
- 多層認証: OAuth 2.0やAPIキー認証による企業レベルのセキュリティ
- 包括的なアプリケーションサポート: 5,000以上のアプリケーションへのアクセス
- 開発者向け実装: 包括的なドキュメント、SDK、デバッグツールの提供
2. Zapier MCPの設定方法
2.1 MCPエンドポイントの生成
まず、ZapierでMCPエンドポイントを作成する必要があります:
- Zapier MCP Portalにアクセスしてログインします
- 「MCP」設定に移動します
- 「Generate URL」(URLを生成)をクリックします
- 一意のMCPサーバーのURLが生成されます。このURLは次の形式になります:
https://actions.zapier.com/mcp/YOUR_MCP_KEY/sse
この生成されたURLとMCPキーは、AIアシスタントからZapierのアクションにアクセスするために使用されます。
重要: あなたのMCPサーバーURLはパスワードのように扱ってください。このURLを使用してあなたのAIアクションを実行し、データにアクセスすることができます。
2.2 Claude Desktopの設定
Claude Desktopを使用してZapier MCPと連携する方法は以下の通りです:
-
Claude Desktopの設定ファイルを見つけます:
- macOSの場合:
~/Library/Application Support/Claude/claude_desktop_config.json
- Windowsの場合:
%APPDATA%\Claude\claude_desktop_config.json
- macOSの場合:
-
設定ファイルを開き、以下のJSONコンフィギュレーションを追加します:
{
"mcpServers": {
"zapier-mcp": {
"command": "npx",
"args": [
"mcp-remote",
"https://actions.zapier.com/mcp/YOUR_MCP_KEY/sse"
]
}
}
}
注意:
YOUR_MCP_KEY
を、Zapier MCPの設定ページで取得した実際のMCPキーに置き換えてください。
- ファイルを保存して閉じます
- Claude Desktopを再起動します
2.3 アクションの設定
次に、AIアシスタントが使用できるZapierのアクションを設定する必要があります:
- Zapier MCP Portalの「Actions」セクションに移動します
- 「Create Action」(アクションを作成)をクリックします
- アクションに名前を付け、説明を入力します
- 使用するアプリ(例:Slack、Gmail、Notionなど)を選択します
- 実行したい特定のアクション(メッセージの送信、メールの作成など)を選択します
- 各アクションに必要なパラメータを設定します
- 「Save」(保存)をクリックしてアクションを作成します
これにより、AIアシスタントがZapierのアクションを実行するためのフレームワークが設定されます。
3. Zapier MCPの使用方法
3.1 Claude Desktopでの使用
Claude Desktopが正しく設定されていれば、以下の手順でZapier MCPを使用できます:
- Claude Desktopを起動します
- チャット画面左下のツールアイコン(ハンマーのようなアイコン)をクリックします
- 使用可能なMCPサーバーのリストに「zapier-mcp」が表示されていることを確認します
- 会話中に、Zapierのアクションを実行するよう依頼します。例えば:
- 「Slackでチームに今日のミーティングの要約を送信してください」
- 「Googleカレンダーに来週の会議を作成してください」
- 「Trelloにこのタスクのカードにリストしてください」
Claudeは自動的にZapier MCPを使用して、利用可能なアクションを特定し、必要な情報をリクエストし、アクションを実行します。
3.2 その他のAIクライアント(Cursor、Windsurf)での使用
Cursor、Windsurf、またはその他のMCP対応クライアントでZapier MCPを使用する方法は、各プラットフォームの設定方法によって異なりますが、一般的な手順は以下の通りです:
- クライアントのMCP設定に移動します
- Zapier MCPサーバーURLを追加します:
https://actions.zapier.com/mcp/YOUR_MCP_KEY/sse
- クライアントを再起動します
- クライアント内でZapierアクションを実行するよう依頼します
3.3 カスタムAI実装での使用
独自のAIアプリケーションをZapier MCPと統合したい場合は、提供されているSDKを使用できます:
- Python:
pip install zapier-mcp-client
- JavaScript:
npm install @zapier/mcp-client
- Go:
go get github.com/zapier/mcp-client-go
これらのライブラリを使用して、カスタムAIソリューションをZapierのエコシステムに接続できます。
4. 実践的なZapier MCPの使用例
4.1 Slackでのメッセージ送信
AIアシスタントにSlackにメッセージを送信してもらうためには:
- まず、SlackとのZapierアクションを設定します
- Claude Desktopで以下のように依頼します:
「Slackの#marketing チャンネルに『明日のミーティングの準備をお願いします。資料は添付ファイルにあります』というメッセージを送信してください」
Claudeは利用可能なSlackアクションを使用して、指定されたチャンネルにメッセージを送信します。
4.2 Gmailでのメール作成と送信
メールを作成して送信するには:
- GmailとのZapierアクションを設定します
- Claudeに以下のように依頼します:
「田中さんに『プロジェクト進捗報告』というタイトルで、先週のプロジェクト進捗についてのメールを作成して送信してください」
Claudeは必要に応じて詳細を確認し、Zapier MCPを通じてGmailでメールを作成・送信します。
4.3 Googleカレンダーでの予定作成
カレンダーに予定を追加するには:
- GoogleカレンダーとのZapierアクションを設定します
- Claudeに以下のように依頼します:
「来週水曜日の午後3時から5時まで『クライアントミーティング』という予定をGoogleカレンダーに追加してください。場所は会議室Aです。」
Claudeはこの情報を使用して、Zapier MCPを通じてGoogleカレンダーに新しい予定を作成します。
4.4 複数アプリにまたがるワークフロー
Zapier MCPの強みは、複数のアプリケーションにまたがる複雑なワークフローを処理できることです:
- 複数のアプリに接続するZapierアクションを設定します(例:Trello、Slack、Gmail)
- Claudeに以下のように依頼します:
「新しいプロジェクトを開始します。Trelloにプロジェクトのボードを作成し、チームにSlackで通知し、クライアントに開始メールを送信してください。」
Claudeはこれらの指示を解釈し、Zapier MCPを使用して各アプリケーションで必要なアクションを順番に実行します。
5. トラブルシューティング
5.1 MCPサーバーが表示されない
Claude Desktopでzapier-mcpサーバーが表示されない場合:
- 設定ファイル(
claude_desktop_config.json
)が正しいパスに存在するか確認します - JSONの構文エラーがないか確認します(括弧、カンマ、引用符など)
- MCPキーが正しいか確認します
- Claude Desktopを完全に再起動します
5.2 アクションが失敗する
Zapierアクションが失敗する場合:
- Zapier MCP Portalのログセクションでエラーを確認します
- アクションに必要な認証情報がすべて設定されているか確認します
- アクションのパラメータが正しく設定されているか確認します
- 使用制限に達していないか確認します(無料プランでは1時間あたり80回、1日あたり160回、月あたり300回)
5.3 接続の問題
接続の問題が発生した場合:
- インターネット接続を確認します
- ファイアウォールがZapier MCPとの接続をブロックしていないか確認します
- VPNを使用している場合は、一時的に無効にしてみてください
6. 高度な使用法
6.1 カスタムアクションシーケンス
複雑なワークフローのためのカスタムアクションシーケンスを作成できます:
- Zapier MCPダッシュボードで「Create Custom Sequence」を選択します
- 実行したい一連のアクションを順番に追加します
- アクション間のデータの流れを設定します
- シーケンスに名前を付けて保存します
これにより、AIアシスタントは1回の指示で複数の連携したアクションを実行できるようになります。
6.2 エラーハンドリングの設定
アクションのエラーハンドリングを設定することで、問題が発生した場合の動作を制御できます:
- アクション設定で「Error Handling」セクションに移動します
- リトライロジックを設定します(例:最大3回まで、10秒間隔)
- フォールバック動作を設定します(例:エラーが発生した場合に代わりに実行するアクション)
6.3 使用量の監視
Zapier MCPの使用状況を監視するには:
- Zapier MCPダッシュボードの「Usage」セクションに移動します
- 時間帯、日、月ごとの使用状況を確認します
- 使用制限に近づいている場合は、アラートを設定します
まとめ
Zapier MCP Serverは、AIアシスタントとZapierの膨大なアプリエコシステムを連携させる強力なツールです。適切に設定することで、AIアシスタントは単なる会話ツールから実用的なタスク実行ツールへと変わります。このチュートリアルで説明した手順に従うことで、Zapier MCPの基本的な設定から高度な使用法まで、効果的に活用できるようになるでしょう。
Zapier MCPは、AIの可能性を大幅に拡張し、実際のビジネスワークフローにシームレスに統合することを可能にします。使用可能なアプリが7,000以上あるため、AIアシスタントができることの範囲はほぼ無限です。今日からZapier MCPを始めて、AIアシスタントの能力を新たな次元に引き上げましょう。
注意: Zapier MCPは現在もベータ版として開発されており、機能や設定方法が変更される可能性があります。最新の情報については、常に公式Zapier MCPドキュメントを参照してください。
また、無料プランでは1時間あたり80回、1日あたり160回、月あたり300回の使用制限があります。より多くの使用量が必要な場合は、Zapier MCPの待機リストからより高いクォータを申請することができます。