Mediumというアプリから流れてきたUI/UXに関する記事が大変わかりやすかったので、日本語に翻訳してみた。内容はUI/UXやユーザテストに対する基本的な心構えについてです。
注)
- 原文における「product」という単語は一律「サービス」と訳しています
- 原文が軽いテンポでさくさく進んでいく文体だったので、原語に忠実にするよりもその雰囲気を壊さないように翻訳しています。
「顧客はあんたのク◯◯タレなソリューションなんかにこれっぽっちも興味はない。彼らが関心をよせるのは、自分たちの問題だけだ。」 - Dave McClure
1) 「便利」な機能が第一。「使えそう」な機能はあと
「バナナ皮むき器」ははたして良いサービスだろうか?サービスは「使える」ものである以上に「便利」なものでなければならない。物理的、あるいは心理的なニーズを満たすようなクリアな価値がなければいけない。
あなたのサービスはなぜ便利なのだろうか?
2) レーザーのように一点集中せよ
Instagram、Dropbox、BasecampそしてAirbnb。これらに共通することはなんだろうか?
どのサービスもたったひとつの目的に集中していて、それにかけてはとんでもなくよくやってみせてくれる。
一兎を追うものは二兎を得ず - 孔子
そのサービスによって果たすべき約束を1つ作れ。そしてその約束を良い方法で果たすことに集中せよ。スタートアップは得てして多用な機能を盛り込みサービスを肥大化させ、「便利」でも「使える」ようなものでもなくなる。もちろん金を払って買うこともない。
あなたのサービスのユーザにどんなことを約束しますか?
3) 最低限対価を払う価値のあるサービス
MVP(Most Viable Product = 最低限の能力をもったプロダクト)についてみんな議論を交わすが、MVPはえてしてひどいものである。無能な人間が作っているからだけではなく、初期リリースのために作られていたりと、購入者やユーザの視点から作られたものではないからである。MVPはなにもできないどころか、ユーザがやりたいと思っていないようなことをさせてしまったりもする。
いっそ無用なMVPは窓から放り投げ、「最低限対価を払う価値のあるサービス」をリリースすることを心がけよう。ユーザを喜ばせることのできる最小単位のサービスから始めよう。
あなたのサービスにお客さんが対価を払う理由はなんだろうか?サービスの魂はどこにあるのだろうか?
4) UXはUIだけの話じゃない
もし豪華なボタンを配した美しいインターフェイスが良いUXだと思うなら、それはとんだ勘違いである。UXとは文字通りユーザ・エクスペリエンスのことで、サービスを使う人にとって実用的で意義のあるものにいかにするかであり、UIやビジュアルデザインは最終的にそのサービスがキレイに見えるかどうかの話だ。
キレイな見た目のサービスと、便利で実用的に意義のあるサービス。自分のサービスはどちらでありたいか?
5) ユーザがUXを決める
UXは、ユーザにとって便利で実用的で意義あるものをどのようにつくるかの話である。したがって、自分たちのサービスのユーザがどういうものであるかを深く理解しないことには、良いサービスをデザインすることはできない。
実際のユーザを捕まえて、1日の中で何をするか観察したり聞いてみたりするのに、遅すぎるということはない。自分たちのサービスをそもそもどうデザインすれば良いかについて、期待以上のことを教えてくれる。もちろん、ユーザとはあなたの祖母や父、彼女や同僚では絶対にあってはならない!
自分たちのサービスの実際のあるいは潜在的なユーザに最低10人は会っただろうか?
6) 共感をうまく使え
多くのスタートアップのCEOが、Axure(ワイヤフレーム作成ツール)やPhotoshopがUXをもっとも向上させると信じている。たいてい彼らが考えているのはUXではなくUIなのは興味深い。
「共感」というすごいツールのことを聞いたことがあるだろうか?世界をリードするイノベーションやプロフェッショナルたちは、たいていこの「共感」を使っている。
そう、ここで言っているのは、人間にとってごくごく当たり前の「共感」である。共感とは、ほかの誰かが感じていることや体験を認識する能力のことである。ほかの人の希望や欲望、気持ちのあらわれを真似してみることで、ほかの人が感じていることを自分も感じられ、それが共感となる。
孤立してサービスをつくっていると、えてしてそれは誰にも必要でないものとなってしまうことがある。ユーザと共感することで、よいサービスは生まれるのだ。
自分たちのサービスについて、5つのユーザストーリーを挙げることができるだろうか?
7) コンセプトデザインは紙に書け
ピクセル単位で正確無比なコンセプトデザインをつくってしまうと、ユーザのフィードバックは色やフォントや配置に偏ってしまい、コンセプトについてはなにも挙がってこなくなる。
ホワイトボードにコンセプトデザインを描きだしてみれば、ユーザは本当に必要なサービスの利便性やユーザビリティに関しての話ができるようになる。ペーパープロトタイプはすばやく簡単に作れ、予算ゼロで反復的なフィードバックを得ることが出来る。
コンセプトデザインがバッチリ決まったら、そこからツールを使ってワイヤフレームの細かく詰めていけばいい。
8) デザインは反復的である
マーケターたちは市場のシミュレーションを行い、ソフトウェアエンジニアはテストを書く。デザイナーもデザインの問題を考え磨いていくために、テストをしていく必要がある。プロフェッショナルなデザインにおいては、さまざまな段階でプロトタイプを使い、実際のユーザとテストを行っていく。
素晴らしいデザイナーはデザイン > ユーザテスト > デザインのサイクルを繰り返すことを誓うだろう。実際のユーザでテストを行わないと、デザインがどんな問題を持っているのかがわかることはない。
早い段階から頻繁にテストせよ。そうすることで素晴らしく便利で実用的なサービスを作ることに自信が持てる。もしデザインが機能していなかったら、作り直すことをためらわず捨ててしまうのが良い。このサイクルを繰り返し、また繰り返し、そしてまた繰り返すのだ。
9) アンケートはゴミ箱へ
「どれが好きですか?」や「このサービスの良い所と悪いところを教えてください」とユーザに聞くのは簡単なことである。「どうすればこのサービスはもっと良くなるでしょうか?」と聞くことさえできる。
これらの質問はいずれもユーザの意見を教えてくれるだろうが、スタートアップが作るサービスにとってはたいして効果もなく偏った意見のことが多い。ユーザに意見を聞くというのは絶対にやってはいけないのだ。
アンケートは意見によって偏っているから、アンケートは本来あるべきゴミ箱へ放ってしまうのが良い。やるべきは、ユーザの行動を理解することである。
フォーカスグループインタビューからサービスをデザインすることはとても難しい。実際に現物を見せてやるまで、彼らは彼が必要としているものがなんかのかさえ知らないのだ。 - スティーブ・ジョブズ
10) ユーザとのテストをどうやるか
ユーザの行動を理解することは至極簡単である。
- A) あなたのサービス上でユーザが行うであろう3-5の主たるタスクをリストアップする。たとえば、請求書を作る、請求書を再送する、請求書の支払いを確認する、遅れている支払いを通知する、といったようなものだ。
- B) 1度に1人ずつ、実際のユーザをオフィスに呼ぶ。彼らには居心地がよいようにする。
- C) 最初の画面を見せ、タスク1をやってもらう。ユーザには彼が何をしているかを声に出してもらうようにする。
- D) ユーザが行うことを注意深く見、サービスの使用方法に関しての質問には答えないこと。成功しようと失敗しようと、タスクが終わったら次のタスクに移ってもらう。
- E) それぞれのタスクのあとに、ユーザが行った特定の操作についてその理由を聞く。好きか嫌いか、などは聞かないこと。
- F) 終わったらコーヒーでもクッキーでも、なにかしらのご褒美をユーザにあげよう。
- G) 分析(アナリティクス)なんかは考えないでよろしい。すでに問題解決のためのアイデアはいくつか浮かんでいるはずだ。
こうしてやっとユーザビリティテストの術を学んだことになる。約束してほしい、このようなテストをあなたのサービスにおいて日常的に行ってほしい。
近くにいないユーザににはWebExを使うこともできる。実際に動作するプロトタイプがなくとも、ペーパープロトタイピングで簡単にやることができる。今の画面から次の画面へ進んでいけばよいだけだ。
11) アナリティクス + ユーザビリティテスト
アナリティクスはユーザがどこから来て、なにをして、どこで離脱したかを知るには優れたツールである。アナリティクスはサービス使用のスタート地点における問題を特定するには有用だ。しかしながら、なぜユーザはそこへ来たか、その操作の理由はなにか、あるいはなぜ特定の操作をせず離脱してしまうのかなど、ユーザの行動や操作の裏にある動機を理解するには悲劇的なものでもある。ユーザテストが完遂できるいまとなってはすでにあなたはプロフェッショナルではあるが、ユーザビリティテストもユーザの行動を理解するには有用なツールである。
12) ユーザのフィードバックに頼る
ユーザは彼ら自身で解決できない問題が起きると、電話やメールをつかって連絡してくる。ほとんどのユーザはわざわざフィードバックを送ったりはせずにただサービスを使うのをやめる。ユーザのフィードバック以上に強力な問題解決の糸口を与えてくれることは見つけにくいだろう。
ユーザビリティテストはあなたとユーザの距離を縮め、本当の問題を早期発見するのに役立つ。サービスのリリースまでに多くの問題を解決することができ、のちのちの頭痛の種を片付けることができる。
13) KeynoteやPowerPointを使ったワイヤフレーム
ペーパープロトタイプは作ったしテストもやった。ユーザはサービスを気に入ってくれてるし、もうUXプロトタイピングツールを使ってもいいよね?
良いだろう。今こそ優れたプロトタイピングツールを使うときである。ここでの課題は、複数のステークホルダーからのフィードバックにある。クライアント、ユーザ、業務知識のエキスパートなどである。こういった段階でもっとも価値をもたらしてくれるツールはKeynoteやPowerPointである。いずれもデザインを細かく作りこむことができる。一番の利点は、複数人に送ってレビューしてもらったり、プロジェクターを使って一緒に見たり、が誰でも簡単にできることである。
14) UIに関する5つの質問
デザインに関する優れたルールを知り、素晴らしいビジュアルデザインに常に目を配ることは大事だ。また有用なサービスのためには、以下の5つの質問をユーザと直に関わったりテストを行うときに常に聞くこと。
- A) いま行おうとしているタスクを遂行するには、ユーザはどんな情報が必要だろうか?
- B) あるべきはずなのに無い情報は、いかに提供されるべきか?
- C) ユーザにとって、考えうるもっとも妥当な次のステップはなのだろうか?
- D) 次の想定したステップに移るためには、どうやってユーザを導いたりサポートすればいいか?
- E) ユーザはいまなにをしていて、このタスクを終わらせることでなにが達成されるのか?
元記事:
UX 101 for startups
https://medium.com/@ripul/ux-101-for-startups-dc849621262f