はじめに:この記事で語ること
新卒でIT業界に入り、今年でエンジニア歴8年目です。
まだまだ少ない女性エンジニアのなかでも中堅?枠となり、ロールモデルのように言われることも多くなりました。本記事では、エンジニアのキャリア論で度々話題になる自己研鑽について、自分の経験を振り返ります。出産・育児といったライフイベントは経験していないため、「女性エンジニアならでは」の要素はあまりないと思います。
「業務時間外の学習は実際キャリアにどう効いたのか?」が本記事のテーマですが、一つのサンプルとして参考になればと思い書きました。具体的なTipsの紹介や「おすすめの●●(書籍、勉強方法)」といった情報はありませんのでご了承ください。
経歴
簡単な経歴は以下のとおりです。1社目は約4年間在籍し、現在の会社も在籍4年目に入りました。
- 2018年:1社目に新卒入社。システム開発に携わる
- 2022年:現在の会社に転職。AWS導入に携わる
学生時代は情報系を専攻しており、新卒でSIerに入社しました。1社目ではインフラエンジニアとしてオンプレ/クラウドのシステム開発を経験し、AWSというサービスに出会ったのもこの時です。大きな会社だったこともあり、当時は浅く広くキャッチアップすることが求められていました。
その他の要因もありましたが、AWS一本で仕事をしたいという思いもあり、今の会社に転職して現在はAWS導入に広く携わっています。
結論:自己研鑽は「履き心地のよい靴」をつくる道具
このあとの内容は筆者の経験談でしかないため、先に結論だけまとめておきたいと思います。
私は資格コレクター側の人間ですが、資格をもっていることがキャリアに大きく影響したとは思いません。実機検証・技術書の読書など資格以外の自己研鑽もしていましたが、それが本業における評価や転職に直接影響したとも思いません。
しかし、そういった自己研鑽により少しずつ積み重なった知識やスキルは、本業での「ちょっとした余裕」をつくってくれました。 そしてその「ちょっとした余裕」のおかげで、自分に求められるレベル+αの仕事にチャレンジし、周りの評価・期待値を上げられたことで、自分にとって良いキャリアを築いてこれたと思います。
私の経験・キャリア観において、自己研鑽は「魔法の杖」ではありません。「給与を上げたい」「好きな仕事だけを選びたい」「憧れの肩書きが欲しい」など、自分が仕事に求めるものを手に入れるためには、目の前の仕事で結果を残すしかないと考えています。
行きたい場所に行くためにはどんな靴であろうと自分の足で前に進むしかないのですが、靴の履き心地をよくすることで、少し早く、より遠くに、そして楽しく辿りつけます。エンジニアにとっての自己研鑽は、自分の「靴の履き心地をよくするための道具」であり、使う必要はないし実際使わない人もいますが、私はこれからも使い続けていくと思います。
(この「靴」のたとえはGeminiが考えてくれました)
これまでの業務内容と自己研鑽
結論をまとめた段階で満足してしまったのですが、これを語る筆者の経験が気になる方もいると思いますので、簡単に紹介します。
1〜3年目:基礎固め(1社目)
この時期は新米エンジニアとして基礎を固めたいという思いで資格取得に励んでいたため、あまり実務との関係を気にせずに学習していました。実務では新卒研修終了後にオンプレミス案件の構築~試験にアサインされ、その後に小規模なAWS案件(半年で要件定義~本番稼働)や大規模なAWS案件の初期フェーズ(設計工程まで)を経験していたタイミングです。
この時期取得した資格は以下の通りです。インフラチームに配属されていたため、そちら寄りのラインナップになっています。(基本/応用情報技術者試験は入社前に合格していました)
- 情報処理技術者試験 ネットワークスペシャリスト
- 情報処理安全確保支援士試験
- 情報処理技術者試験 データベーススペシャリスト
- LPIC レベル1
- 各クラウド(AWS, GCP, Azure)のアソシエイトレベル
ベンダー資格と比べると、情報処理技術者試験で学んだ内容は直接実務で使うという印象はないのですが、エンジニアとして技術を扱う時の心構えが身についたのは良かったです。
たとえば「システム的なセキュリティ対策はあくまで一部であり、実施範囲はアセスメントによって決まる(リスク受容含む)」点や、「関わる人間も含めて一つのシステムであり、人間に対するトレーニングも含めてセキュリティ対策である」点などです。この時期に技術だけにとらわれず、システムやサービスというものを俯瞰できるようになっていったのは資格学習の影響が大きいと思います。
4〜5年目:AWSに軸足を定める(1~2社目)
このとき実務では、既存のAWSシステムの機能追加案件と並行しながら、オンプレミス案件の運用改善(IaCの導入など)にもアサインされており、仕事自体が忙しいタイミングでした。忙しさがひと段落してから転職活動をはじめ、現在の会社への入社が決まったため、体系的にAWSを学習しようと思って以下を取得しました(今では廃止になった資格もありますね…)
- Solutions Architect – Associate/Professional
- Developer – Associate
- SysOps Administrator – Associate
- DevOps Engineer – Professional
- Specialty (Database, Security, Networking)
仕事で扱っていた一部のAWSサービスはディープに知っている自負もありましたが、体系的に学習すると知らないサービスや機能、アーキテクチャも多かったです。現職ではAWSの知識が広く深く求められるため、資格取得を通じて転職初期にある程度の知識が身についた点が良かったです。
6年目~8年目:苦手領域へのチャレンジ(現在)
現職も2,3年目になると、ある程度仕事をこなせるようになり、実務では余裕がでてきた状況です。またエンジニアとしても基礎は固まってきたかなという段階で、得意領域に特化するか、経験の少ない苦手領域を克服するか考えるようになりました。現職ではAWSのジェネラルなスキルが求められることも踏まえて、今は苦手領域の克服に取り組んでいます。
インフラレイヤのなかでも1社目ではネットワークやサーバー/OSまわりの仕事が多く、コンテナやCICD、データ分析、ひいてはML/AIに苦手意識がありました。
ということで以下の資格取得で知識を付けながら、業務外の検証などでも手を動かしています。
- AWS Certified Data Engineer – Associate
- AWS Certified Machine Learning – Specialty
- AWS Certified Machine Learning Engineer – Associate
これまでは実務の延長線としての自己研鑽だったため、苦手領域を克服するというふわっとした状態(実務での具体的な課題がない状態)で手を動かすのは、実はここ数年で始めたことです。
最初はQiitaに投稿することをモチベーションにして始めたのですが、その時の記事がこのあたりですね。
これまでは実務で困る→業務外でキャッチアップという流れでしたが、実務で困る前にキャッチアップする、という流れに変えられたことで以下のようなポジティブな影響がでていると思います。
- 仕事のスピードがあがった
これまで毎回調べたり、有識者に質問していたことをすぐ解決できるようになった - 仕事の品質があがった
これまで顧客から質問/リクエストを受けて対応していた内容も、自分からヒアリング/提案できるようになり、顧客や社内での評価がよくなった(気がする) - 成功体験を得てキャッチアップに積極的になった
上記の効果を実感できたため、必要性を感じてキャッチアップしていたスタンスから、先回りしてキャッチアップするスタンスに変わった
個人的には、最後のメンタル面での変化が1番大きい変化だなと思います。もっと早い段階で辿り着く人も多いと思いますし、私も理屈では知っていたことですが、基礎が固まり余裕がでてきたタイミングだからこそ腹落ちできたことかなと自己分析しています。
さいごに:良いキャリアとは
環境に恵まれ、運の良かった部分も大いにありますが、良いキャリアを築けてきたと思います。そのために自己研鑽が必須だったかというと、正直分かりません(もしかしたら大きな影響はなかったのかもしれません)。しかし、無駄ではなかったと言い切れますし、自己研鑽によってできた「ちょっとの余裕」のおかげで楽しく仕事を続けています。
ここで私が考える「良いキャリア」についても少し触れておきます。良いキャリア=給与や社会的地位の高さ、知名度ではありません。私にとってキャリア(仕事)の善し悪しは、「この先自分の選択肢が広がるかどうか」 の一点に尽きます。
実務レベルで言えば、同じ仕事のルーチンよりは都度新しいチャレンジできる仕事の方が好きです。会社選びについても、その会社で自分にとって新しいスキルが得られるのか、業界内の立ち位置を踏まえて次の転職先に困らないか、ということを考えていました。
もし若手のエンジニアの方がこの記事を読んでいるのであれば、「キャリアのために自己研鑽をするかどうか/どんな自己研鑽をするべきか」といったことを考える前に、そもそも自分にとって「良いキャリア」とは何か、についても考えていただけるとよいかと思います。
さて、当初の想定よりも長くなってしまったのですが、本記事はここで終わりとします。ここまで読んでいただきありがとうございました。

