この記事は NTTドコモソリューションズ AdventCalendar 2025 の 1 日目の記事です。
普段は RHEL の問合せサポートやカーネル関連の技術調査をしています。
この記事では RHEL 10 調査で得られた、個人的な利用観点でのノウハウを公開します。
今年の 5 月に RHEL10.0 がリリースされました。
また先月には 10.1 がリリースされました。
RHEL10 の目玉機能には、次のようなものがあります。
- AI 活用
- Red Hat Enterprise Linux Lightspeed のリリース
- c コマンドによる LLM の活用
- セキュリティ
- crypto-policies の 耐量子暗号(FIPS) 対応
- クラウドネイティブ
- Image Mode for RHEL
それぞれ面白そうなトピックですが、こういうお堅い内容は仕事過ぎるので、ひとまず隅に置いておきましょう。この記事では RHEL 10 の各種ドキュメントを調査して気づいた『ナウでヤングな Linux しぐさ』(RHEL10 で非推奨になる機能や推奨される使い方など)を記載します。
注意: (この記事では主に個人的な利用観点での面白さをベースにチョイスしているので、実際の移行検討はRHEL 10 の導入における検討事項 などを参考にしてください。)
必要なときだけ sudo
RHEL10 から、インストーラのデフォルトでは root アカウントを無効化します。

出典: Red Hat, Red Hat Enterprise Linux 10 インストーラ(参照:2025/11/27)
また、新規作成するアカウントに「ユーザーアカウントに管理者権限を付与する(wheel グループに加える)」にチェックが入ってます。

出典: Red Hat, Red Hat Enterprise Linux 10 インストーラ(参照:2025/11/27)
つまりは必要なときだけ sudo しましょう。という雰囲気です。
wget は非推奨に
RHEL10 から wget は deprecated です。
単にファイルをダウンロードするだけなら curl -O にしましょう。
x86_64_v3 が必須に
x86 マシンでは、x86_64_v3 が必須になります。つまり、古いマシンを使っている方は RHEL10 が動作しない恐れがあります。
現在利用しているハードウェアの対応状況は、次のコマンドで確認できます。
$ /usr/lib64/ld-linux-x86-64.so.2 --help
...
Subdirectories of glibc-hwcaps directories, in priority order:
x86-64-v4 (supported, searched)
x86-64-v3 (supported, searched)
x86-64-v2 (supported, searched)
...
https://developers.redhat.com/articles/2024/01/02/exploring-x86-64-v3-red-hat-enterprise-linux-10 によると、2013 年ごろの Haswell CPU よりも前の世代は動かないようです。また Atom では 2021 年ごろでも動作しない恐れもあるようなので、注意が必要です。
The x86-64-v3 level has been implemented first in Intel’s Haswell CPU generation (2013). AMD implemented x86-64-v3 support with the Excavator microarchitecture (2015). Intel’s Atom product line added x86-64-v3 support with the Gracemont microarchitecture (2021), but Intel has continued to release Atom CPUs without AVX support after that (Parker Ridge in 2022, and an Elkhart Lake variant in 2023).
出典: Red Hat Developer "Exploring x86-64-v3 for Red Hat Enterprise Linux 10"https://developers.redhat.com/articles/2024/01/02/exploring-x86-64-v3-red-hat-enterprise-linux-10(参照日:2025.11.25)
ifcfg 形式は廃止に
ifcfg 形式のネットワーク設定ファイルのサポートが削除されます。
RHEL6 や 7 からの移行時に、/etc/sysconfig/network-scripts/ にファイルを残していた方は注意が必要です。
VNC から RDP に
なんと RDP に対応しました。
Windows 標準の『リモートデスクトップ接続』で Linux マシンに接続できます。もう Linux で tigervnc を立ち上げて、接続元の Windows 端末に VNC Viewer 系のアプリを入れる必要はありません。

出典: Red Hat, Red Hat Enterprise Linux 10 インストーラ(参照:2025/11/27)
出典: Microsoft, Windows 11 リモートデスクトップ接続(参照:2025/11/27)
Libre Office が削除された
Libre Office は、削除されました。
(これは単に削除されたので、使いたい方は公式から取ってくるなどが必要です。)
cgroups v1 から v2 に
けっこう前から切り替えを促されてましたが、ついに cgroups v1 はサポートされなくなりました。(systemd が cgroups v1 で起動しなくなったり、ルートレスコンテナで非推奨になったり)
なお systemd-cgls などのコマンドは、そのまま使えそうです。
runc は廃止に
RHEL8 や RHEL9 の中盤ごろまでは podman のコンテナランタイムとして runc が利用されていました(Docker などでも利用しているメジャーなランタイムです)。しかし、RHEL10 からは runc は廃止され、crun になりました。
OCI に準拠したランタイムなので podman からの操作レベルでは影響ないと思いますが、runc list などの低レイヤなコマンドを実行してた人は注意しましょう。
32 ビットアプリケーションは廃止に
32 ビットアプリケーション(*.i686 パッケージ)は廃止されます。そもそも若者からしたら、32 ビットアプリケーションというもの自体が「?」かもしれません。
その他にも 知識をアップデートしよう!
ここまでは RHEL 10 の各種ドキュメントを調査して気づいた『ナウでヤングな Linux しぐさ』(RHEL10 で非推奨になる機能や推奨される使い方など)を記載しました。
ここからは、手癖の Linux から脱出するために、RHEL10 に関係するかを問わずに自分の担当で集めた『ナウでヤングな Linux しぐさ』をまとめて公開します。
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tar zxf sample.tar.bzじゃなくてtar xf sample.tar.bz- 最近は圧縮形式を自動で推定してくれるので
zいりません。
- 最近は圧縮形式を自動で推定してくれるので
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routeじゃなくてip route、netstatじゃなくてss-
net-toolsよりもiproute2パッケージを使いましょう。
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mount->findmnt- mount(8) の man によれば、「リスト表示機能は後方互換性のために残してる。よりロバストで出力をカスタマイズ可能な
findmntを利用するのがおすすめ」だそうです。
- mount(8) の man によれば、「リスト表示機能は後方互換性のために残してる。よりロバストで出力をカスタマイズ可能な
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git checkout->git switchやgit restore- 一瞬コマンドラインに警告出た気がするな…まあ今度でいいか…を繰り返すこと何か月ですが、そろそろ観念します。
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iptables->nftables-
iptablesは RHEL9 のころから非推奨です
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さいごに
みなさんもこれ以外の「ナウでヤングな Linux しぐさ」があれば、ぜひ教えてください!
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