CCoE Summit '25
2025年6月11日にGoogle渋谷オフィスで開催された「CCoE Summit '25」に参加しました。
https://cloudonair.withgoogle.com/events/ccoe-summit25
生成AIの企業内利活用が進む中、安心安全に生成AIを使うために、改めてその存在の重要性が増しているのが、CCoE(Cloud Center of Excellence)ではないでしょうか。
Google Cloud と Google Cloud エンタープライズユーザー会「Jagu'e'r(ジャガー)」のCCoE研究分科会とのコラボによる世界でも稀な CCoE 特化型のイベント。今年で3回目の開催となりました。
国内でCCoE活動をリードする企業から、これからCCoEを立ち上げようとする企業、今まさにCCoE活動のど真ん中にいる企業などが、それぞれの現在地、悩みを共有するイベントです。
特に今年は、活動のKPIや、人材育成に関する話題が多く、CCoEという組織が経営層や周囲の従業員から期待されているポイントが、そのまま課題になっている感じでした。
CCoEが存在するのは当たり前で、その上で何をどれだけ早期に達成するのか、
そんなことがきっと今のCCoEの皆さん、CCoEネイティブ世代には求められているのだろうと思いました。
DNPがCCoE立ち上げ時に作ったたった1つのもの
イベントの資料などについては後日公開されると思いますので、私からその内容に触れることは割愛したいと思いますが、では、DNPは、CCoE立ち上げ時にどうやってゴールイメージを描いたのか、ご紹介したいと思います。
CCoE 2021
DNPは2018年4月にCCoEを立ち上げました(組織名も「CCoEグループ」)。当時は、周囲はもちろん、専任4名のメンバーも、その役割やふるまい方について、何もわからない状況でした。そのような状況で作ったのが、「CCoE 2021」という資料です。CCoE設立から2年9カ月後である、2021年1月に、自分たちCCoEの説明資料を作るとしたら、きっとこういう資料になるだろう、という未来予想の紹介資料(カタログ) です。PowerPointで52ページの資料です。
未来の予想資料なので、基本、その時点ではすべて妄想です。
ただ、その妄想を言語化し、共有することがとても大事です。
この資料は経営層にも共有しました。
CCoE 2021の構成
CCoE 2021の資料構成は基本以下の2点です。
- CCoEに必要であろうマインドセット
- 2021年1月時点のCCoE活動カタログ
目次は以下の通りです。
- 本書について(2021年1月時点のあるべき姿についてまとめた資料です)
- まずはGIVEから
- CCoEの役割定義にGOALはない
- CCoEのマインド
- CCoEのビジョン(「世界中すべての人にDNPを届ける」)と個人の到達イメージ
- CCoEが目指す姿
- 環境面でCCoEが実現したいこと
- CCoEが目指すマルチクラウドの鳥観図
(ここまでで22ページ)
(ここからが2021年1月時点のCCoE紹介資料。ただし妄想。) - CCoEの社内におけるポジション
- CCoE活動紹介サイト(社内・社外)
- CCoEの役割
- CCoEが提供するガイドライン
- マルチクラウドへの歩み(歴史)
- CCoEのセキュリティに対する意識
- 共通サービス紹介
- アカウント管理と商流について
- CCoEが提供する技術支援
- 技術支援のサービスカタログ
- DNPグループにおけるクラウド案件の開発運用体制(クラウド別)
- 連携可能なパートナー企業について
- 情報共有の取組み
- ポータルサイト、勉強会(CCoEサミット)、地方キャラバン、分科会活動
- 過去の勉強会テーマ一覧
- 社外交流状況(加入ユーザー会一覧、カンファレンス参加履歴)
- 対外活動の歩み(外部登壇の歴史)
- 社外企業とのディスカッションについて(ディスカッション企業一覧)
- CCoEオリジナル研修体系
- クラウド事業者から提供される教育プログラムについて
- 社内外ハッカソン活動について
- GAFAMと本当にやりたいこと
- CCoEが行う最新技術のPoC
- 参考:各クラウドの利用状況(月額利用料、アカウント数)
繰り返しになりますが、2018年4月にCCoE組織ができた時に作成した資料です。すべて妄想です。妄想なので何でもありです。その「何でもあり」が可能性を生み出します。また、それぞれ記載している内容に、隠れた想いや、使用するワードの狙いをスライドのメモ欄に記載しています。そのため、印刷するときには「ノート」モードで配布しました。
こんなイメージです。勉強会開始、と書いてありますが、すべて予定、妄想です。ですが、こういう具体的なイメージを共有することが大事です。
また、なんで「サミット」という名前にしたのか。サミットなのに何で1年に1回でないのか。そのネーミングの意味すること、想いをきちんと言語化しています。
■「CCoEサミット」という名前の想い
・「サミット」というと1年に1回、というイメージがありますが、クラウドの世界では従来1年かかっていた技術進歩が1カ月で次々と訪れています。
・約1カ月に1回という頻度ですが、その1回の間に従来のオンプレミスの世界で1年に相当する進歩があったことを強く意識してもらうために「サミット」としています。
・また、情報を発表する場を設けることで、プレゼンテーション能力の向上や、ノウハウをまとめる、共有することを日課にするきっかけにしたいと考えています。
いくつかピックアップ
せっかくなのでいくつかの項目をピックアップしてご紹介いたします。(内容は当時のままですが、一部伏せている内容もあります。ご了承ください。)
CCoEのマインド
常に広い視点で物事を考える
組織には事業ドメインがありますが、CCoEが目指す「パブリッククラウドのコミュニケーションハブ」は、全てのグループ会社に対して適用できるものです。
私たちの組織は、全社グループでみれば、1%にも満たない小さな組織です。セグメンテーション(組織)の枠を越えて、価値を創造することを最優先に考えます。グループ全体にとって、一番最適なことを考え、行動します。
CCoEは、技術に真摯に向き合い、物事を効率化(全体最適化)させ、よりコンパクトに、俊敏性を持たせることを追求しています。複数のシステム、会社全体を大きな1つのシステムととらえ、アーキテクティングを行います。
声がかかることは最大の喜び
グループの様々な部署から、相談させて欲しい、支援して欲しい、などの声がかかることは、とても喜ばしいことです。
自分たちにとっては新しい、前向きな話題ではなく、わかりきった事を聞かれることがあるかも知れません。それは自身にとってモチベーションにならないかも知れません。でも、CCoEを頼りにしてくれることは喜びであり、そのような声がかからなくなった時は、存在意義はないと思います。
ちょっとした相談対応や支援の場合、対価を求めることは難しく、組織として目に見える数字(生産やコスト)に反映されないかもしれません。作業負荷はゼロではありませんが、それが個人や組織の業績評価に直接繋がらないかも知れません。それでも、自分たちに声がかかることを喜びと捉え、困っている人がいれば、助けることができる、損得を越えた領域で、行動できることを理想としています。
言葉で書くのは簡単ですが、実際に依頼が殺到すると、それら1つ1つに真摯に対応することは本当に大変なことです。それでも、継続することが、将来的にきっとプラスに転じると信じています。
とにかくやってみる
活動の中でいろいろなアイディアが浮かぶことがあります。その際に、単にアイディアで留めることなく、ゴールイメージをきちんと示し、まずは「やってみる」ことが重要です。
最初から「完璧」はありません。まずはアクションを起こし、少しづつ軌道修正しながら、目指す姿に向かっていくことが大切です。
もしかしたら失敗するかも知れません。でも、何もしないことよりも、失敗することははるかに尊いことです。失敗することで、もしかしたら評判が落ちることがあるかも知れません。でも、経験から得られる学びは、何もしないことよりもきっと大きなことで、長い目で見た時に、大きな財産になるはずです。
また、「やってみる」時には、スピード感が必要です。かつての目標管理のように、物事を半年や1年で考えるのは絶対にやめましょう。世の中はもっと早いスピードで動いています。1週間、1カ月などのスピード感で、アイディアが浮かんだらすぐに行動に移します。
世間から評価される存在になる
自らの活動を必ず履歴に残します。自分の職歴や実績を常に更新します。世間から自分自身がどの程度評価されているかがわかります(きっと外部から良い評価を受けます)。
複数のシステムを一元的に捉える、全社的なアーキテクティングが、社内で十分評価されないかもしれません。ですが、自分自身が社外からは正当に評価されていることは、普段仕事をする上で多くのメリットをもたらします。何か、自らのアイデンティティを損なわれるようなことがあった場合、社外という選択肢がすぐ側にあるという安心感は、とても大きな事です。そのためにも、履歴として残せる、アウトプットを意識した活動をします。社内においても、ある時から評価されることがあると思います。
また、社外でのセミナーやコミュニティなどにも積極的に登壇し、自らのプレゼンスを向上させることを強く意識します。「DNPの〇〇さん」ではなく、「〇〇さんがいるDNP」と言われるように、常にセルフ・プロモーションを意識します。
CCoEの立ち位置
CCoEは「コミュニケーションハブ」です。何かのヒエラルキーのトップに位置するわけではありません。社内ではもしかすると一番詳しいかも知れませんが、世の中に出ればもっともっと凄い人はたくさんいます。決して奢ることなく、社内コミュニケーションのハブになることを意識する必要があります。
コミュニケーションハブであれば、情報は自然と入ってきて、他の人に自然と共有されます。また、組織のどの場所にCCoEがあっても、役割を全うすることができます。
CCoEの役割に「ガイドライン作成」や「技術支援」、「人材育成」などがあります。これらの役割を果たす上で、現場との距離感はとても重要です。現場に受け入れられない机上の空論のガイドラインを作成しても意味がありません。また、経験・実績が無い人の助言は誰も聞いてくれません。自ら経験し、その経験を同じ目線でフィードバックすることが大切です。
CCoEの役割
CCoEの役割の図は、バランススコアカードの視点を取り入れています。
・学習と成長の視点 → 継続的な学習
・業務プロセスの視点 → セキュリティ・ガバナンスの確立
・顧客の視点 → セキュアで迅速なサービスの立ち上げ
・財務の視点 → 間接的な売上貢献のためCCoEでは触れていません
技術支援サービス一覧
情報セキュリティ対策支援
CCoEは、情報セキュリティ対策部門と連携して、パブリッククラウド利用時に必要なセキュリティ対策を、「利用ガイドライン」として整理し、多くを「共通サービス」として提供しています。
アカウントの設計や、各種セキュリティ設定を「利用ガイドライン」に準拠していただき「共通サービス」を利用いただくことで、社内申請時の審議がよりスムーズになります。
CCoEでは社内申請の支援や、共通サービス導入の支援を提供いたします。
アーキテクティング支援
他のパブリッククラウドやオンプレミス・プライベートクラウド(データセンター)との連携が可能となるネットワーク設計を支援いたします。
パブリッククラウドのメリットを最大限に活かすアーキテクチャ設計を支援いたします。
移行支援
オンプレミス環境やプライベートクラウドからパブリッククラウドにシステム移行する際の技術検討を支援いたします。
単純なシステム移行(=リフト)でなく、パブリッククラウドのメリットを最大限に活かしたクラウドネイティブな設計を支援いたします。
検証支援
パブリッククラウド独自の機能(サーバレス構成やAuto-Scaling等)に関する機能・性能検証を支援いたします。検証用環境(PoC環境)の払い出しも可能です。
性能テストや脆弱性検査の実行環境を提供することも可能です。(※テストの作業実施は別途ご相談となります)
スキルトランスファー
ハンズオン研修から、実案件の設計・構築・運用を通じたスキルトランスファーにより、自部門でクラウドが扱える体制作りを支援いたします。
※あくまで2018年4月当時、こんなサービス提供を社内でできると良いなという想いをまとめたものです。
まとめとCCoEへのエール
CCoE Summit '25に参加して、KPIという言葉がたくさん出ていましたが、私たちの当時の活動を振り返ると、KPIというものはほとんどなかったと思います。やりたいこと、実現したいこと、なぜそれを実現したいのか、そういった想いがまとまったクレドがあっただけだったと思います。
当時はそもそもクラウドの方向性も確かではなかったですし、ましてやCCoEが企業内に何をもたらすかなど、誰も何もわかりませんでした。何をもって成功なのかもわかりませんし、「成功」を意識する時間もないくらい、いろんなことに貪欲にチャレンジしていたと思います。
ちなみに、2021年1月の状況を想定した資料ですが、実際に資料の状態になったのは、2020年の9月です。4カ月早く達成しました。共通イメージの言語化って本当に大事だと思います。
また、内容について軌道修正が入ったら修正すれば良いです。だって、所詮妄想ですから。
CCoE 2021の目次からはわかりづらいですが、ほとんどKPIのようなものは存在しません。最後のスライドに利用料やシステム数のイメージが記載されていたくらいです。
KPIに縛られなかったからこそ、後に、AWS DeepRacerの活動を始めて世界一になったり、生成AIラボを迅速に立ち上げたりすることができたのではないかと思います。
印刷会社社員「AIカーレース」世界制覇の舞台裏
古参企業がエンジニア育成に本気になった
「なぜ日本語対応を待ってるの?」「2週間で価値ゼロ」日本企業が知らない“生成AI”最前線の爆速度
とはいえ、KPIはとても大事です。
今やCCoEは企業内にとって、企業風土醸成、DX推進、人材育成の要となる組織です。
もし今CCoEを立ち上げたとしたら、周囲から大きな期待を受けながら、やはり皆さんと同じようにKPI設定に悪戦苦闘するのだろうと思います。
これからCCoEを立ち上げようとしている方がいたら、ぜひ妄想しましょう。自分自身がクラウドの一番のファンになって、新しいワクワクする技術がどんどん入ってきて、資格取得者が100人いて、毎月勉強会が開催されて、登壇依頼も殺到して、社内からも頼りにされ、自分たちのサービスがユーザのためになって、社員みんながギブファーストでポジティブフィードバックをするようになって、、、と考えたら楽しくなります。それを言語化しましょう。言葉はすごいパワーを持っています。きっと実現すると思います。
中途半端な情報提供になってしまいましたが、「CCoE 2021」の考え方が、皆様の活動の一助になれば幸いです。



