はじめに
建設プロジェクトでは、設計変更に伴って複数の図面を修正することが日常的に発生します。
例えば、平面詳細図で扉の位置を変更した場合、その変更が平面図にも正しく反映されていることを確認しなければなりません。
しかし、図面同士を並べて比較する作業は時間がかかり、変更箇所の見落としや反映漏れが発生しやすいという課題があります。
また、変更内容によっては寸法だけが変わる場合もあれば、設備や開口位置、部屋同士の関係が変わる場合もあります。そのため、単純な画像比較だけでは十分とは言えません。
そこで今回は、図面をAIが扱いやすい形に構造化し、その構造化データと図面画像を組み合わせることで、図面間の差分を抽出するデモを作成しました。
なお、本記事では平面図同士を比較していますが、実際には平面詳細図と平面図、設計図と施工図など、さまざまな図面の整合確認へ応用できます。
※デモで使用している図面はすべて架空のものです。
図面の整合確認で発生する課題
設計変更が発生すると、その内容は平面図や平面詳細図など、関連する複数の図面へ反映する必要があります。
例えば、扉の位置や寸法を変更した場合、それぞれの図面で変更内容に矛盾がないかを確認しなければなりません。
この確認作業では、図面を並べて見比べながら、
- 寸法が一致しているか
- 扉や設備の位置が一致しているか
- 部屋同士の関係に矛盾がないか
などを一つひとつ確認します。
しかし、この作業は目視で行われることが多く、図面が複雑になるほど時間がかかるだけでなく、確認漏れや見落としが発生しやすいという課題があります。
今回作ったデモ
ブラウザ上で比較したい二つの図面画像(PNG)と構造化データ(JSON)を選択すると、AIが図面間の差分を抽出します。
比較結果は画面上に一覧表示され、変更箇所を確認できます。
画面では次の内容を確認できます。
画面上部
- 画像・構造化結果選択ボタン
- 「比較する」ボタン
- 「VLMで整合性をチェック」ボタン
画面下部
- 比較対象となる2枚の図面
- 抽出した差分一覧
- VLMチェック結果
「比較する」を実行すると、構造化データをもとに図面間の差分を抽出します。
さらに、「VLMで整合性をチェック」を実行すると、構造化データの差分の整合性を確認し、構造化データでは表現できない見た目上の違いについて、VLMが図面画像を比較します。
デモの仕組み
1. 図面をAIが理解しやすい形へ構造化する
まず、図面をAIが理解しやすい構造化データへ変換します。
構造化データには、
- 寸法
- 部屋
- 扉や設備などの図面要素
- 各要素の位置情報
- 図面要素同士の関係性
など、図面の情報が整理された状態で保持されています。
図面を単なる画像ではなく、意味を持ったデータとして扱えるようにすることで、AIが図面同士を比較しやすくなります。
2. 構造化データから図面の差分を抽出する
構造化データを比較することで、図面にどのような変更があったかを抽出します。
例えば、図面上に寸法が記載されている場合は、それぞれの寸法を比較し、変更があれば差分として表示します。
また、寸法だけではなく、部屋や設備同士の関係も比較できます。
例えば下図では、扉の位置が変更されており、それに伴って部屋同士の接続関係も変化しています。
このような変更は画像だけでは判断しづらい場合がありますが、構造化データを比較することで変更内容を抽出できます。
3. VLMで元の図面を確認する
構造化データだけでは、すべての差分を表現できるとは限りません。
例えば、
- 注記
- シンボル
- 線種
- ハッチング
などは、構造化対象外となることがあります。
そこで最後にVLM(Vision Language Model)を利用し、図面画像同士を比較します。
VLMには、構造化データから抽出した差分もあわせて渡し、それ以外に見た目上の違いがないかを確認します。
このように、構造化データによる比較と画像比較を組み合わせることで、それぞれの特徴を活かした差分抽出を行っています。
このデモでできること・対象外
今回のデモでできることは以下です。
- 図面を構造化する
- 構造化データから図面間の差分を抽出する
- 寸法や部屋同士の関係などの変更を検出する
- VLMを利用して画像上の差分を確認する
- 差分についてAIへ質問する
一方で、以下は今回の対象外です。
- CADデータそのものの比較
- 設計内容の自動修正
- 図面変更の妥当性判定
- 法規チェック
あくまで、図面間の整合確認を支援するためのデモです。
今後の展開
今回は平面図同士を比較する例を紹介しました。
図面を構造化しておくことで、平面詳細図と平面図、設計図と施工図など、さまざまな図面同士の整合確認にも応用できます。
今後は、この差分情報を活用した、より高度な図面レビュー支援についても紹介する予定です。
まとめ
図面間の整合確認は、複数の図面を見比べながら確認する必要があり、時間がかかるだけでなく、変更箇所の見落としや反映漏れが発生しやすい業務です。
今回のデモでは、図面をAIが理解しやすい形へ構造化し、構造化データによる比較とVLMによる画像比較を組み合わせることで、図面間の差分を抽出しました。
AI Ready-Dataでは、図面をAIが活用しやすいデータへ構造化することで、図面比較だけでなく、検索やレビュー支援など、さまざまな業務への活用が期待できます。
自社に蓄積された図面資産をAIで活用したい場合は、DNPのAI Ready-Dataをご活用ください。



