はじめに

「今日の工数、入力したっけ...？」
「〇〇さん、昨日の工数入力忘れてますよ〜」

エンジニアの皆さん、こんなやり取りに心当たりはありませんか？
日々の開発業務に追われていると、ついつい工数の入力を忘れてしまったり、チームメンバーの入力状況を確認するのが面倒になったりしますよね。

そこで今回は、工数・勤怠管理サービス「CrowdLog」とGoogle Apps Script (GAS) を連携させ、チームの工数入力状況を自動でチェックし、Slackに通知する仕組みを構築した事例を紹介します。

この仕組みを導入することで、面倒な確認作業から解放され、チーム全体の入力漏れを劇的に減らすことができました。

完成したもの

平日の決まった時間（今回は11時と22時）に、以下のような通知がSlackに届きます。

【通知イメージ】

--- 2025-07-11 技術開発本部 CrowdLog入力状況 ---
✅ 鈴木一郎 (M158) は入力完了しています。(8時間)
❌ 佐藤花子 (M171) はまだ入力していません。
⚠️ 高橋健太 (M135) は入力工数不足です。(3時間)
...
⚠️ WEB1チームは、まだ今日のCrowdLog入力を完了していないメンバーがいます。ファイト！

主な機能は以下の通りです。

定時自動チェック: 毎日決まった時刻に自動で入力状況をチェック。
ステータス別表示: 「完了✅」「工数不足⚠️」「未入力❌」を分かりやすく表示。
チーム単位での通知: チームごとに通知先チャンネルやメンバーを柔軟に設定可能。
休日対応: 土日・祝日には通知が飛ばないように自動で制御。
前営業日のチェック: 翌日の午前中に、前営業日の入力漏れもチェック可能。

技術スタック

Google Apps Script (GAS): すべての処理を記述するメインエンジン。
CrowdLog API: 勤怠データを取得するために利用。
Slack Incoming Webhooks: チェック結果をSlackに通知するために利用。
Google Calendar API: 日本の祝日判定に利用し、休日の通知をスキップします。

仕組みの解説

全体の処理フローは以下のようになっています。

トリガーのセットアップ（手動）: 最初にcreateTrigger関数を毎日深夜に実行するようGASでトリガーを設定します。
トリガーの動的作成 (trigger.js): createTriggerが実行されると、その日が日本の祝日カレンダーを考慮した「平日」かどうかを判定します。
平日であれば、既存の通知トリガーを一度すべて削除し、その日の11時と22時に通知関数を実行する新しいトリガーを動的に作成します。
勤怠チェック＆通知 (notice.js): 指定時刻になると、トリガーが各チームのチェック関数を実行します。
設定に基づき処理 (TEAMS_CONFIG): TEAMS_CONFIGという設定オブジェクトから、対象チームのメンバーリストやSlackのWebhook URLを取得します。
APIでデータ取得 (callCrowdLogApi): CrowdLog APIを叩き、対象メンバーのその日の作業時間を取得します。
メッセージ生成＆通知: 取得したデータを基に、ステータスを盛り込んだメッセージを生成し、Slackに通知します。

コードのハイライト

1. 柔軟なチーム設定 (`notice.js`)

リファクタリングにより、チームの追加やメンバーの変更、通知先Slackチャンネルの変更が、このTEAMS_CONFIGオブジェクトを編集するだけで完結するようにしました。メンテナンス性が格段に向上しています。

notice.js

const TEAMS_CONFIG = {
  'WEB1': {
    displayName: 'WEB1チーム',
    slackWebhookUrl: 'https://hooks.slack.com/services/xxxxx/xxxxx/xxxxx',
    users: [
      { code: 'M161', id: '11111', name: '鈴木一郎' },
      // ...メンバー...
    ],
  },
  'WEB2': {
    displayName: 'WEB2チーム',
    slackWebhookUrl: 'https://hooks.slack.com/services/yyyyy/yyyyy/yyyyy',
    users: [
      { code: 'M113', id: '2222', name: '佐藤花子' },
      // ...メンバー...
    ],
  },
  // ...他のチーム設定...
};

2. 処理の共通化 (`notice.js`)

各チームのチェック処理は、新しく作成したcheckTeamInputAndNotify関数に共通化されています。これにより、コードの重複がなくなり、非常にスッキリしました。

notice.js

/**
 * チームの入力状況を確認し、Slackに通知する共通関数
 * @param {string} teamKey TEAMS_CONFIGのキー
 * @param {string} date 対象の日付 (YYYY-MM-DD)
 */
function checkTeamInputAndNotify(teamKey, date) {
  const teamConfig = TEAMS_CONFIG[teamKey];
  if (!teamConfig) {
    Logger.log(`チーム "${teamKey}" が設定に見つかりません。`);
    return;
  }

  const { users, slackWebhookUrl, displayName } = teamConfig;
  const inputStatus = checkCrowdLogInputStatus(users, date);
  const message = formatSlackMessage(displayName, date, inputStatus, users);
  sendSlackNotification(slackWebhookUrl, message);
}

// 各チーム用のトリガー関数
function checkWeb1TeamTodayInput() {
  checkTeamInputAndNotify('WEB1', Utilities.formatDate(new Date(), Session.getScriptTimeZone(), 'yyyy-MM-dd'));
}

3. 動的なトリガー作成 (`trigger.js`)

このスクリプトの心臓部です。毎日実行されるこの関数が、カレンダーをチェックして「今日が平日か」を判断し、平日であればその日限りの通知トリガーを自動で作成します。これにより、休日に不要な通知が飛ぶのを防いでいます。

trigger.js

function createTrigger() {
  // --- 実行日の判定 ---
  const today = new Date();
  const dayOfWeek = today.getDay();

  // 1. 土日判定
  if (dayOfWeek === 0 || dayOfWeek === 6) {
    console.log('本日は土日のため、トリガー作成をスキップしました。');
    return;
  }

  // 2. 祝日判定
  const calendarId = 'ja.japanese#holiday@group.v.calendar.google.com';
  const calendar = CalendarApp.getCalendarById(calendarId);
  const events = calendar.getEventsForDay(today);
  if (events.length > 0) {
    console.log('本日は祝日のため、トリガー作成をスキップしました。');
    return;
  }

  // --- 既存トリガーの削除 ---
  const allTriggers = ScriptApp.getProjectTriggers();
  for (const trigger of allTriggers) {
    const handlerFunction = trigger.getHandlerFunction();
    if (handlerFunction === 'checkEngineerTodayInput' || handlerFunction === 'checkEngineerYesterDayInput') {
      ScriptApp.deleteTrigger(trigger);
    }
  }

  // --- 新しいトリガーの作成 ---
  // ... (指定時刻に通知関数を実行するトリガーを作成する処理) ...
}

導入方法

Step 1: Google Apps Scriptの準備

Googleスプレッドシートを新規作成します。
拡張機能 > Apps Script を選択してGASエディタを開きます。
（推奨）ローカル環境で開発するために clasp をセットアップし、本記事で紹介したソースコードをデプロイします。

Step 2: スクリプトプロパティの設定

GASエディタの左メニューから プロジェクトの設定 (歯車アイコン) をクリックします。
スクリプトプロパティ のセクションで スクリプトプロパティを追加 をクリックします。
以下のプロパティを設定します。
- プロパティ: CROWD_LOG_TOKEN
- 値: あなたのCrowdLogパーソナルアクセストークン

Step 3: `notice.js` のカスタマイズ

notice.js を開き、TEAMS_CONFIG オブジェクトをあなたのチーム構成に合わせて編集します。

チーム名 (WEB1, WEB2 など)
表示名 (displayName)
SlackのIncoming Webhook URL (slackWebhookUrl)
メンバーのリスト (users)

Step 4: トリガーの設定

最後に、この自動化の起点となるトリガーを設定します。

GASエディタの左メニューから トリガー (目覚まし時計アイコン) をクリックします。
右下の トリガーを追加 ボタンをクリックします。
以下の通りに設定し、保存します。
- 実行する関数を選択: createTrigger
- 実行するデプロイを選択: Head
- イベントのソースを選択: 時間主導型
- 時間ベースのトリガーのタイプを選択: 日付ベースのタイマー
- 時刻を選択: 午前1時〜2時 （など、日付が変わった後の早い時間帯）

これで、毎日深夜に createTrigger が実行され、その日が平日であれば自動で通知トリガーがセットされるようになります。

まとめ

今回は、GASとCrowdLog API、Slackを連携させて、勤怠入力のチェックを自動化する仕組みを紹介しました。

このスクリプトのおかげで、

確認作業の工数ゼロ: 面倒な目視確認が不要になりました。
入力漏れの撲滅: リマインドが自動化され、入力忘れがほぼなくなりました。
心理的負担の軽減: 「あの人に催促しなきゃ...」という小さなストレスから解放されました。

日々の定型業務は、GASやAPIを活用してどんどん自動化していきましょう！
この記事が、皆さんの業務効率化のヒントになれば幸いです。

ソース

抜粋したソースを添付します！

notice.js


// =============================================
// CONFIGURATION
// =============================================
const CROWDLOG_API_BASE_URL = 'https://xxx.xxx.xxx';
const PERSONAL_ACCESS_TOKEN = PropertiesService.getScriptProperties().getProperty('CROWD_LOG_TOKEN');
const SLACK = PropertiesService.getScriptProperties().getProperty('SLACK_TOKEN');

/**
 * チーム設定
 * - `users`: 通知対象のユーザーリスト
 * - `slackWebhookUrl`: 通知先のSlack Webhook URL
 * - `displayName`: Slack通知時に表示されるチーム名
 */
const TEAMS_CONFIG = {
  'WEB1': {
    displayName: 'WEB1チーム',
    slackWebhookUrl: SLACK,
    users: [
      { code: 'M161', id: '1111', name: '鈴木一郎' },
    ],
  },
  'WEB2': {
    displayName: 'WEB2チーム',
    slackWebhookUrl: SLACK,
    users: [
      { code: 'M113', id: '2222', name: '佐藤花子' },
    ],
  },
};

// =============================================
// GENERIC HELPER FUNCTIONS
// =============================================

/**
 * CrowdLog APIを呼び出し、レスポンスをJSONとして返します。
 * @param {string} endpoint APIのエンドポイントパス（クエリパラメータ含む）
 * @returns {Object|null} APIレスポンスのJSONデータ、またはエラーの場合はnull
 */
function callCrowdLogApi(endpoint) {
  const apiUrl = CROWDLOG_API_BASE_URL + endpoint;
  const options = {
    'method': 'GET',
    'headers': {
      'Accept': 'application/json',
      'Authorization': 'Bearer ' + PERSONAL_ACCESS_TOKEN
    },
    'muteHttpExceptions': true
  };

  try {
    const response = UrlFetchApp.fetch(apiUrl, options);
    const statusCode = response.getResponseCode();
    const responseBody = response.getContentText();

    if (statusCode === 200) {
      return JSON.parse(responseBody);
    } else {
      Logger.log(`APIエラー: ステータスコード ${statusCode}, レスポンス: ${responseBody}`);
      return null;
    }
  } catch (e) {
    Logger.log(`スクリプトエラーが発生しました: ${e.toString()}`);
    return null;
  }
}

/**
 * 指定されたユーザーリストのCrowdLog入力状況を確認します。
 * @param {Array<Object>} users ユーザーオブジェクトの配列
 * @param {string} date 検知したい日付 (YYYY-MM-DD形式)
 * @returns {Object} 各ユーザーの入力完了ステータスを含むオブジェクト
 */
function checkCrowdLogInputStatus(users, date) {
  if (!users || users.length === 0) {
    Logger.log('チェック対象のユーザーが指定されていません。');
    return {};
  }

  const userIdsParam = users.map(user => `user_ids=${user.id}`).join('&');
  const perPage = users.length;
  const endpoint = `/work_actual/by_user/daily?since=${date}&until=${date}&${userIdsParam}&per_page=${perPage}`;

  Logger.log(`${date} のCrowdLog入力を確認中... 対象ユーザー: ${users.map(u => u.name).join(', ')}`);

  const data = callCrowdLogApi(endpoint);
  const inputStatus = {};

  users.forEach(user => {
    inputStatus[user.code] = { 'entry': false, 'hours': 0 };
  });

  if (data && data.work_actual && data.work_actual.length > 0) {
    data.work_actual.forEach(entry => {
      if (inputStatus.hasOwnProperty(entry.code)) {
        inputStatus[entry.code]['entry'] = true;
        inputStatus[entry.code]['hours'] = entry.data[0].hours;
      }
    });
  }
  return inputStatus;
}

/**
 * Slack通知用のメッセージを生成します。
 * @param {string} teamName 表示用のチーム名
 * @param {string} date 対象の日付
 * @param {Object} inputStatus 入力状況データ
 * @param {Array<Object>} users ユーザーリスト
 * @returns {string} Slackに送信するメッセージ
 */
function formatSlackMessage(teamName, date, inputStatus, users) {
  let message = `---:クラウドログ: ${date} ${teamName} CrowdLog入力状況 :クラウドログ: ---`;
  let allCompleted = true;

  users.forEach(user => {
    const status = inputStatus[user.code];
    if (status.entry && status.hours >= 4) {
      message += `\n✅ ${user.name} (${user.code}) は入力完了しています。(${status.hours}時間)`
    } else if (status.entry) {
      message += `\n⚠️ ${user.name} (${user.code}) は入力工数不足です。(${status.hours}時間)`
      allCompleted = false;
    } else {
      message += `\n❌ ${user.name} (${user.code}) はまだ入力していません。`
      allCompleted = false;
    }
  });

  const dateString = date === getPreviousWorkday() ? ` ${date}` : '今日';
  if (allCompleted) {
    message += `\n🎉 ${teamName}全員が${dateString}のCrowdLog入力を完了しています！お疲れ様でした！`;
  } else {
    message += `\n⚠️ ${teamName}には、まだ${dateString}のCrowdLog入力を完了していないメンバーがいます。ファイト！`;
  }
  return message;
}

/**
 * Slackに通知を送信します。
 * @param {string} webhookUrl 送信先のWebhook URL
 * @param {string} message 送信するメッセージ
 */
function sendSlackNotification(webhookUrl, message) {
  if (!webhookUrl) {
    Logger.log('Slack Webhook URLが設定されていません。通知をスキップします。');
    return;
  }
  UrlFetchApp.fetch(webhookUrl, {
    "method": "post",
    "contentType": "application/json",
    "payload": JSON.stringify({ "text": message }),
  });
}

/**
 * チームの入力状況を確認し、Slackに通知する共通関数
 * @param {string} teamKey TEAMS_CONFIGのキー
 * @param {string} date 対象の日付 (YYYY-MM-DD)
 */
function checkTeamInputAndNotify(teamKey, date) {
  const teamConfig = TEAMS_CONFIG[teamKey];
  if (!teamConfig) {
    Logger.log(`チーム "${teamKey}" が設定に見つかりません。`);
    return;
  }

  const { users, slackWebhookUrl, displayName } = teamConfig;
  const inputStatus = checkCrowdLogInputStatus(users, date);
  const message = formatSlackMessage(displayName, date, inputStatus, users);
  sendSlackNotification(slackWebhookUrl, message);
}

// =============================================
// EXECUTABLE FUNCTIONS (FOR TRIGGERS)
// =============================================

function checkWeb1TeamTodayInput() {
  checkTeamInputAndNotify('WEB1', Utilities.formatDate(new Date(), Session.getScriptTimeZone(), 'yyyy-MM-dd'));
}

function checkWeb2TeamTodayInput() {
  checkTeamInputAndNotify('WEB2', Utilities.formatDate(new Date(), Session.getScriptTimeZone(), 'yyyy-MM-dd'));
}

function checkWeb1YesterDayInput() {
  checkTeamInputAndNotify('WEB1', getPreviousWorkday());
}


/**
 * 前の営業日（土日・祝日を除く平日）の日付を 'yyyy-MM-dd' 形式で取得します。
 * @returns {string} 前の営業日の日付（例: '2025-07-10'）
 */
function getPreviousWorkday() {
  const holidayCalendar = CalendarApp.getCalendarById('ja.japanese#holiday@group.v.calendar.google.com');
  const date = new Date();

  while (true) {
    date.setDate(date.getDate() - 1);
    const dayOfWeek = date.getDay();
    const isWeekend = (dayOfWeek === 0 || dayOfWeek === 6);

    if (!isWeekend) {
      const holidays = holidayCalendar.getEventsForDay(date);
      if (holidays.length === 0) {
        break;
      }
    }
  }
  return Utilities.formatDate(date, Session.getScriptTimeZone(), 'yyyy-MM-dd');
}