TL;DR
- Kiro CLIはターミナルで動くAIエージェント
- tmuxで複数セッションを並列起動すると、複数タスクを同時に回せる
- 「AIの返答を待つ時間」がほぼゼロになる
- セッション切れ対策・観察方法・運用設計のコツを実録で公開
きっかけ:「AIが考えてる間、何もできない問題」
Kiro CLIを使い始めてすぐに気づく不満があります。
AIが作業している間、自分は何もできない。
$ kiro chat
> 認証機能を実装して
Kiro: ファイルを読み込んでいます...
Kiro: 実装を進めています...
(3分待つ)
Kiro: 完了しました。
この3分間、ターミナルは占有されています。別のタスクを動かしたくても、同じターミナルでは無理です。
これを解決するのが tmux との組み合わせ です。
tmux × Kiro CLIの基本構成
なぜtmuxなのか
tmuxは「ターミナルマルチプレクサ」です。1つのSSH接続・ターミナルウィンドウの中で、複数の仮想ターミナルを並列で動かせます。
重要な特性が2つあります:
- セッションが切れても中断しない — ネットワークが切れても、tmuxセッション内のプロセスは動き続ける
- 並列実行 — 複数のペインで異なるコマンドを同時に走らせられる
Kiro CLIをtmuxの中で動かすと、「AIが作業中でも、自分は別のペインで作業できる」 状態になります。
基本構成図
┌────────────────────┬────────────────────┐
│ ペイン1 │ ペイン2 │
│ $ kiro chat │ $ kiro chat │
│ > 記事執筆タスク │ > コードレビュータスク│
│ Kiro: 作業中... │ Kiro: 完了しました │
├────────────────────┴────────────────────┤
│ ペイン3 │
│ $ git log --oneline │
│ $ vim memo/todo.md │
└─────────────────────────────────────────┘
上2つのペインでKiro CLIが並列実行中、下のペインでは自分が別作業できます。
セットアップ手順
1. tmuxの起動と基本操作
# tmuxセッションを名前付きで起動
tmux new-session -s kiro-work
# セッション一覧
tmux ls
# セッションにアタッチ
tmux attach -t kiro-work
2. ペインを分割する
tmuxのデフォルトプレフィックスは Ctrl+b です。
Ctrl+b → % # 左右に分割
Ctrl+b → " # 上下に分割
Ctrl+b → ←↑↓→ # ペイン間を移動
Ctrl+b → d # デタッチ(セッションは継続)
3. Kiro CLIを各ペインで起動
各ペインで kiro chat を起動するだけです。
# ペイン1
$ cd ~/projects/article-repo
$ kiro chat
# ペイン2(Ctrl+b → % で分割後)
$ cd ~/projects/code-repo
$ kiro chat
それぞれのKiro CLIは独立したセッションとして動作します。互いに干渉しません。
実際の並列運用パターン
パターン1:記事執筆 × コード開発を同時進行
私が実際に使っている構成です。
ペイン1:Kiro CLI(Zenn記事執筆)
ペイン2:Kiro CLI(Goツールの実装)
ペイン3:監視・確認用(git/vim操作)
# ペイン1
$ kiro chat
> Zennの記事を執筆して。テーマはtmux活用。
# ペイン2(並列で動かす)
$ kiro chat
> mediaコマンドにQiita対応を追加して
# ペイン3で自分は別作業
$ git log --oneline -5
$ vim memo/memo.20260816.md
パターン2:調査 × 実装を並列化
ペイン1:既存コードを網羅調査
ペイン2:調査が終わり次第、実装を投入
調査が終わったタイミングでペイン2に指示を出すだけです。
パターン3:複数リポジトリを同時に進める
複数リポジトリを運用している場合に有効です。
# ペイン1:GoリポジトリでKiro
cd biz-tools && kiro chat
# ペイン2:JSリポジトリでKiro
cd e2e-tests && kiro chat
# ペイン3:PHPリポジトリでKiro
cd hack-note && kiro chat
3リポジトリが同時に進みます。
「管制官」として運用するためのコツ
並列運用を快適にするには、Kiroへの指示設計が重要です。
コツ1:最初に「全部やること」を宣言させる
❌ 悪い指示
> 記事を書いて
✅ 良い指示
> Zenn記事を執筆してください。
> 完了したらcommit → push → PRまで一気に進めてください。
> 途中で確認は不要です。
最初の指示に「どこまでやるか」を含めると、途中で止まらなくなります。
コツ2:Steeringで「自律運転モード」を作る
.kiro/steering/full-auto-workflow.md を設定しておけば、#full-auto の一言でKiroが自律的に作業します。
---
inclusion: manual
---
# 完全自動ワークフロー
`#full-auto` で呼び出された場合、以下のルールで作業を進める。
## 基本方針
- 質問しない。memoと既存コードから推論する
- 承認を求めない。必要な作業はすべて実行する
- 完了まで止まらない。エラーが出たら自力で修正する
これを設定済みで並列起動すると、各ペインのKiroが独自判断で作業を完走します。
コツ3:ペインごとにディレクトリを分ける
同一リポジトリで2つのKiroを動かすと、ファイルの競合が起きます。
✅ ペインごとに別リポジトリ
ペイン1:~/projects/zenn-articles
ペイン2:~/projects/biz-tools
❌ 同じリポジトリで複数起動
ペイン1:~/projects/app(src/auth/login.ts を編集中)
ペイン2:~/projects/app(同じファイルを編集しようとする)
異なるリポジトリ、または同一リポジトリでも異なるブランチなら競合しません。
セッション切れ対策
tmuxの最大の価値は「セッションが切れても継続する」ことです。
デタッチして別作業
# Ctrl+b → d でデタッチ(Kiroは動き続ける)
$ tmux attach -t kiro-work # 後で戻る
ログを確認する
# tmuxのペイン出力をログファイルに保存
Ctrl+b → :
pipe-pane -o 'cat >> ~/kiro-pane1.log'
Kiroが何をやったか後から確認できます。
セッションが増えた場合の整理
# セッション一覧を表示
tmux ls
# 不要なセッションを削除
tmux kill-session -t old-session
実測:並列運用前後の比較
実際に計測した結果です。
| 作業 | 直列(従来) | 並列(tmux) |
|---|---|---|
| 記事執筆 + PRまで | 約25分 | 約10分(他タスクと並行) |
| 3リポジトリのコミット | 30分 | 12分 |
| 調査 + 実装 | 60分 | 30分 |
体感の変化として、「AIが考えてる間に自分が次の指示を仕込む」習慣ができます。Kiroを「部下」として使うより「別の現場で動いてるチームメンバー」として扱う感覚です。
トラブルシューティング
「どのペインが何をやってるかわからなくなる」
ペインにタイトルをつけましょう。
# ペインにタイトルをつける
printf '\033]2;記事執筆\033\\'
printf '\033]2;biz-tools実装\033\\'
または、tmux.confで自動的に現在のディレクトリを表示:
set -g status-right '#(basename #{pane_current_path})'
「Kiroが途中で止まっている」
tmuxのペインを見ると、確認待ちの場合があります。
Kiro: このファイルを削除してもよいですか? [y/N]
Steeringに「確認不要の操作一覧」を書いておくと減らせます。
「WSL環境でtmuxが重い」
WSL2上でtmuxを動かすと若干重くなる場合があります。
set -g default-terminal "screen-256color"
set -sg escape-time 0
まとめ:「監視員」から「管制官」へ
tmuxなしのKiro CLIは、AIを監視する係です。一度に1つの作業を見守り、終わったら次を指示します。
tmuxありのKiro CLIは、複数のエージェントを管制する係です。複数の作業を同時進行させ、完了報告を受け取るだけです。
実際の使い方:
- 朝、tmuxセッションを起動してペインを3〜4個作る
- 各ペインでKiro CLIを起動、今日のタスクを渡す
- 自分は別の作業や休憩をしながら進捗を確認
- どれかが完了したら次のタスクを投入
AIが「待ち状態」になる時間がほぼなくなります。
Kiroを使っているなら、今日からtmuxと組み合わせてみてください。体感が変わります。
付録:関連コースについて
本記事のようなKiro活用のノウハウを、Udemyコースとして体系的にまとめています。