今回はAWS Client VPNについて、設計・運用・コスト試算・証明書の作り方など、「実務レベルでよく知りたい情報」を徹底的にまとめます!
これからAWSでリモートVPNアクセス環境をつくる方、ぜひ参考にどうぞ。
1. AWS Client VPNとは?【マネージド型VPNの正体】
AWS Client VPNは、リモートユーザーが安全にAWS VPCやオンプレミスネットワークへアクセスできる、フルマネージド型のVPNサービスです。
- 自前でVPNサーバーやインフラの構築・運用が不要
- エンドポイント作成だけで冗長化・スケーリング・障害対応まで自動化
- クライアント数やトラフィック量も自動でスケールアウト・可用性維持
- 技術的には「OpenVPNプロトコル」に準拠しています。
AWS Client VPNの中核はClient VPN endpointです。これはマネージド型のVPNサーバーとして機能し、ユーザーがインフラを意識することなくセキュアなアクセスを実現できます。
2. 認証方式(クライアント認証)はどう選ぶ?
AWS Client VPNは複数の認証方式をサポートします。
現場での使い分け・メリット/デメリットを整理!
(1) 証明書認証(相互TLS:mTLS)
(2) Active Directory認証
(3) SAML 2.0フェデレーション認証
- Okta Azure AD Google Workspace OneLogin等のIdPとSSO連携
- 外部IdPによるSAML2.0認証+多要素認証もOK
- 既存クラウド認証基盤がある企業におすすめ
どの認証方式も「VPNクライアントソフト OpenVPN互換やAWS公式クライアント」が必要です!
3. 証明書運用まとめ(コスト重視 or 一元管理重視)
選択肢A. OpenSSL等で自己署名CA
- コストゼロ、簡単
- OpenSSLでCA作成 → サーバー/クライアント証明書発行
- 証明書ファイルはACMにインポート&クライアント配布
選択肢B. 無料オープンソースCA Easy-RSA Smallstep CA等
- コマンド操作で一元管理、失効やローテーションも容易
選択肢C. ACM Private CA(有料・本格運用向け)
- 月額$400 CA+証明書ごとに0.75ドル月
- 大規模・自動ローテーション・監査など重視の場合
⚠️ 注意:Client VPN用のサーバー証明書には、ACMの無料パブリック証明書は使用できません。VPNや内部用途には自己署名証明書やプライベートCAの利用が基本です。
4. 導入手順かんたんまとめ
- 認証方式・証明書の準備(CA作成、証明書発行&ACM登録)
- Client VPNエンドポイント作成(AWSマネジメントコンソール or CLI)
- サブネット VPC への関連付け&ルート設定
- 認可ルール アクセスコントロール の設定
- クライアント設定ファイル .ovpn のダウンロード&配布
- 各ユーザーへクライアント証明書と設定ファイル配布&セットアップ指示!
5. コスト試算のポイント
項目 | 料金 例 東京リージョン 2025年6月時点 |
---|---|
エンドポイント | $0.10時 $72月エンドポイント |
クライアント接続 | $0.05接続時 |
データ転送 | AWS外向けのみ従量課金 |
証明書運用 | 自己署名なら無料 ACM Private CAならCAごと$400月+発行課金 |
例)10人×1エンドポイント×月160ドル前後(自己署名で証明書コスト0の場合)
6. よくある質問 FAQ
Q. Client VPNエンドポイントは「フルマネージド」って本当?
→ はい。スケールアウト・冗長化・障害対策含めAWS側で自動管理です。
ユーザーは「設定の管理と証明書管理」に集中できます。
Q. SAML認証やAD認証でもVPNクライアントソフトは必須?
→ はい。どの認証方式もOpenVPN互換 or AWS公式クライアントが必要です。
Q. 証明書ローテーションどうする?
→ 自己署名CAや外部スクリプトで自動化可。
ACM Private CA利用時のみAWSコンソールから一部自動ローテーションも可能。
Q. ACM標準パブリック証明書は無料で使えるの?
→ パブリックサービス用のみ無料 Client VPNのようなプライベート用途には利用不可。
Q. VPN接続時のIdPはどんなものが使える?
→ Azure AD Okta Google Workspace AD FS Keycloakなど多様なIdPにSAML連携可能。
7. グラフで見る Client VPNコスト比較 例
8. エンドポイントの設計パターンとユースケース
AWS Client VPNのエンドポイントは1つで複数VPC AZに対応可能ですが、要件によって以下のような設計パターンが考えられます。
✔ シンプル構成 シングルエンドポイント
- ユースケース 小規模 開発環境向け
- Client VPNエンドポイントを1つ作成し 1つのVPCサブネット 1AZ に関連付け
- 開発者数人が使うなど 可用性や冗長性をそれほど求めない場合に最適
✔ マルチAZ対応構成
- ユースケース 高可用性が求められる本番環境
- 1つのClient VPNエンドポイントを複数AZのサブネットに関連付け
- VPN接続時 利用者は自動的に最適なAZへルーティングされる
- AZ障害時も接続を維持できる冗長構成になる
✔ 環境ごとに分離 開発 本番
- ユースケース 環境分離が必要なケース
- Client VPNエンドポイントを環境ごとに別々に構築
- 本番環境はADやSAML認証 開発環境は証明書ベース認証など 認証方式を分けて運用
- 誤接続 操作ミスを防止しやすい
Transit Gateway連携構成 複数VPC接続
- ユースケース Client VPNから複数VPCへアクセスしたい場合
- VPCを直接関連付ける代わりに Transit Gateway TGW を経由して接続
- エンドポイントでは1つのVPCのサブネットを関連付けるだけでよく 他のVPCへはTGW経由でアクセス可能
複数AWSアカウント環境 組織統合VPN
- ユースケース 複数アカウントを横断してVPN接続が必要なケース 例 AWS Organizations
- Client VPNエンドポイントはShared Servicesアカウントに配置
- 各アプリアカウントのVPCとTGWを経由して接続
選定のポイント
要件 | 推奨構成 |
---|---|
小規模 シンプル運用 | シングルAZ+1エンドポイント |
高可用性 AZ冗長性 | マルチAZ構成 |
認証方式やネットワークの分離 | 環境ごとに複数エンドポイント |
複数VPCへの接続 | Transit Gateway連携構成 |
複数アカウント構成 | Shared Services + TGW構成 |
補足 1つのClient VPNエンドポイントで複数VPCへ接続するには「VPCピアリング or Transit Gatewayの活用」が必要になります。
まとめ
- AWS Client VPNは スケーラブル&フルマネージドでテレワークやゼロトラストVPNにも最適!
- 証明書運用はOpenSSL 無料CAで十分 大規模運用のみACM Private CAを検討
- 導入も運用も サーバーレス感覚 で誰でも安心してVPN環境が整います。
運用の現場ノウハウやコスト計算 認証方式の選び方で迷ったら ぜひこの記事をブクマ&活用してください!
おすすめの参考情報
- AWS公式:Client VPNの概要と料金
- ACMの使い方&証明書インポートガイド
- DevelopersIO:Client VPN実践・証明書運用の現場ノウハウ
- Qiita:OpenSSLで自己署名CA構築(証明書の作り方)