##はじめに
こんにちは、ドコモの坪井です。
普段は5Gの次世代通信(普段は5G Evolution & beyondと呼んでいます) の実現を目指して伝搬、伝送実験なんかをやっています。
この記事では世の中でホットになりつつある5Gについて説明すると共に、過去から現在使用されている1G~4Gの概要や5G Evolution & beyond がどのようなものになりそうかという点について軽ーく薄ーくわかりやすくお伝えできればと思っています。
5GのGは何でしょうか?実はGeneration(世代)のGです。
なので、5Gは無線通信が生まれて5番目の世代の通信という意味です。
無線通信は今まで1Gから4Gまで進化してきました。
1G:ショルダーフォン、自動車電話等一部の人が音声通話をするために使用している。
2G:音声以外にも文字データをはじめとした低速なデータ通信ができるようになる
→1G~2Gの頃は、主に携帯電話という概念が世の中に少しずつ広がっていくフェーズだと考えられます。使っている人はごく一部の方々、使える機能も音声通話+文字制限ありのメール、といった感じです。
3G:携帯端末で音声通信にプラスしてインターネットを使用できるようになる。(当時ドコモではiモードという名前でサービスを提供していました)
4G:ガラケーからスマートフォンに移り変わり、ガラケーを使う人が少なくなる。音声通話よりもデータ通信を利用したアプリケーションを目当てに無線通信を利用する人が多くなる。
→3G~4Gになると昔に比べ携帯電話の性能が上がりデータ通信が頻繁に使用されるようになります。これは1G~2Gの時代では携帯電話は文字通り電話をするための機械で、音声通話をメインに使用されていましたが、携帯電話の性能が向上すると音声通話よりもはるかに高速な通信が必要となるデータ通信が可能となったためです。
このように1Gから4Gまでの流れを見てみると
1G~2G:音声通話
3G~4G:データ通信
といった感じで、2世代毎に無線通信の使われ方が大きく変化してきたのではないでしょうか。
そして2020年から日本で商用利用が開始となる5Gでは4Gではなかった新しい使われ方を想定して設計されています。
##5Gの概要
###使用している電波
まず各世代と5Gで大きく違うのは使用している電波が違うという点です。4Gで使用している電波はUHF(Ultra High Frequency)と呼ばれる帯域の電波を使用していました。周波数でいうと0.3~3GHzの帯域の電波となります。一方5Gではさらに高い周波数帯域の電波を用いて通信を行います。それがSHF(Super High Frequency)と呼ばれている電波です。周波数は0.3~3GHzよりも高い4GHz~28GHzの電波となっています。
なぜ高い周波数を使っているのかというと、高い周波数の電波を使うほど電波にのせることができるデータ量を増やすことができるからです。
そのため5Gでは4Gと比べると理論上10倍近く速い速度で通信をすることが可能となっています。これが5Gで高速通信を行うことができる秘密です。
5Gは高い周波数を利用した高速・大容量通信の他に2つの特徴をもつ通信です。その2つの特徴とは、低遅延性と多接続性です。
この二つの特徴は今までの1G~4Gでは特に注目されていなかった特徴でしたが、5Gから一定の性能を出すことが可能となりました。
・低遅延性とは無線通信で送るデータが遅れず、ほぼリアルタイムで送れることを意味しています。この特徴によって遠隔操作や遠隔地間でリアルタイムでゲームを行うといったことが可能になります。
・多接続性とは一つの基地局がたくさんのユーザーがもっているデバイスと通信ができるということを意味しています。この特徴によって人口が密集したイベント会場で通信を確保したり、人ではなく物が通信するIoT機器を多数接続することで各機器を制御したり、センサーを多数設置して接続することでセンシングを行い情報を吸い取るといったことが可能になります。
4Gまでは各個人が操作するスマートフォンの様なデバイスが無線通信をするという使い方がメインであり、携帯会社もそれを想定した無線通信可能なエリア構築を行ってきました。しかし上記の2つの特徴が5Gから強化されているため、IoTや遠隔制御といったスマートフォンに限らない特殊なデバイスが行う無線通信までもをサポートできるようになり、今まで以上に無線通信の使われ方の範囲が広がることが予想されます。
###5Gはどんな世界を作るのか? 見てみよう、体験してみよう!
1~4Gについてさらっと述べましたが、これから始まる5Gによって実現される世界の理解を早めるにはイメージしてもらうのが一番だと思います。ドコモでは5Gのための特設サイト「ドコモ5G」を用意しています。ここでは5Gについての解説やどんなことができるようになるのかといった情報を掲載しているので、5Gに興味が出たら下記リンクから5Gの具体的なイメージを膨らませてみてください!
ドコモ5G
https://www.nttdocomo.co.jp/special_contents/5g/
また、スカイツリーのソラマチ5Fに5Gのアプリケーションを体験できる、その名も「PLAY5G」という施設が現在オープンしています。こちらの施設では5Gで実現する遠隔操縦やMagic Leap等のアプリケーションを一足早く体験することができる施設となっています。イメージだけではなく実際に体験したいよ、という方は是非一度訪れてみてください!季節のイベントや展示の入れ替えも行っていますので何度来ていただいても楽しめると思います。無料です!
PLAY5G
https://www.play5g.jp/
さらに、これからの5G時代に備えて今までの無線通信を復習しておきたいという方へピッタリな施設は「NTTドコモ歴史展示スクエア」がおすすめです!ここは1G~4Gまでの懐かしの携帯端末を見ることができたり、無線通信の歴史について学ぶことができる場所となっています。入場は無料です!
NTTドコモ歴史展示スクエア
http://history-s.nttdocomo.co.jp/
##5G Evolution & beyond
###5Gはどう進化していくのか?
さて、ここからは5Gのさらに先、5G Evolution & beyond について2020年以降さらに無線通信は進化していくのか?という点について書いていきたいと思います。
###5G Evolution & Beyondの性能(予想)
これは現状ドコモが考える5G Evolution & beyondで実現したい性能を表した図です。(DOCOMO OPEN HOUSE 2018でも掲示していたものです)この図を見ると、5Gで実装された大容量・高速通信、低遅延、多接続がさらに強化されると共に、新しいキーワードとして通信可能なエリアを広げる「超カバレッジ拡張」や高い信頼性を実現する「高信頼性」や消費電力が少なくなる「超低消費電力」といったキーワードが上がっています。
ここで上げられている5G Evolution & beyondの世界は5Gによって2020年以降普及していくと考えられるIoTや遠隔制御、自動運転といった特殊用途を想定してさらにプラスされた概念です。
「超カバレッジ拡張」は今まで人がいる都市部や田舎のみを通信可能なエリアとして用意すればよかったのが、無人だけどセンサーや遠隔操縦される機会がある場所へ無線通信可能なエリアを広げていくことが必要になることを想定した結果出てきたキーワードです。具体的には山岳や海や空といった通信空白地帯を指しており、将来的にIoTが利用されるようになるに従ってこれらの場所へエリア網を拡張していく必要があると考えられます。
また、「高信頼性」については、特に遠隔操縦や人命にかかわる機器の操作を行うことを考えた場合、有線通信に匹敵する高い信頼性が必要になるということから出てきたキーワードです。現状の無線通信ではパケットロスや遅延が頻繁に起きているため、それらを今後減らしていく必要があります。
そして「超低消費電力」はデバイスの消費電力を極力減らしていくことを意味しています。例えば人が普段立ち入らない場所にあるIoT機器の電力の持続時間を伸ばすということができるようになればIoTの幅が広がるのではないでしょうか?(無線通信の面から貢献するとすれば、通信を効率化して余計な電波を出さないようにしたり、電波の電力を必要最小限にするといったことが当てはまると思います)
まだまだ先の世界ではありますが、将来予想される状況に応じて無線通信の進化は5Gでは終わらないでしょう・・・
###ドコモの5G Evolution & Beyondへ向けた取り組み(一部)
1Gから5Gまでの歴史を見てみると約10年ごとに無線通信の世代は上がってきました。そうなると5Gの次 5G Evolution & beyondは2030年頃に実現すると思われます。
ドコモでは2030年に実現するであろう5G Evolution & beyondの実現に向けて様々な基礎研究や実証実験、トライアルといったことをやっておりプレスリリースや報道発表を通じて皆様にお伝えしています。以下では既に発表したもののうち、私が関わった2件の取り組みについてご紹介します。
この写真は横浜のみなとみらい地区で行った実験の写真です。みなとみらい地区のドコモ神奈川支店ビルの屋上に実験用の5G Evolution & beyondを想定した基地局(5G Base Stationと書いてあるところ)を設置しました。さらに測定車を2台用意し、それぞれの測定車の屋根の上にも同様に中継局(IAB nodeと書いてあるところ)と移動局(User Equipmentとかいてあるところ)を設置しました。
この時、5G Evolution & beyondの設備を用いて、基地局→中継局→移動局と電波を中継して通信ができるか?という実験を行いました。電波を中継できるようになると、基地局の電波が届かない場所にも電波を届けることができるというメリットがあります。5G Evolution & beyondでは電波の直進性が強いため、基地局から見えない場所へ電波を届ける技術が非常に重要となります。
続いてこちらは電波暗室内の実験の様子の写真です。
向かい合っている2つの機械は非常に高い周波数(90GHz)の電波で通信をする機械です。
この電波は5G Evolution & beyondで割り当てられる可能性がある電波で、まだこの電波に対応した機械が世界でも非常に少なく貴重な機械となっています!この機械を使った通信実験によって5G Evolution & beyondの実証を行っていく予定です。
###おわりに
1Gから4G,5Gそして5G Evolution & beyondについて記事を書いてきましたが、なんとなく「5Gってなんかすごいんだな~」ということと「ドコモは5G Evolution & beyondに向けてなんかやってんだな~」ということが分かってもらえればこの記事の意味はあったといえると思ってます。
一方で、どんなに高性能な無線通信システムがあっても使われなければ意味はありません。5G/5G Evolution & Beyondで実現できる技術を用いて世の中に眠っているユースケースを発掘し新たなアプリケーションを作ってようやく意味が出てきます。
ドコモでもこれまで様々なユースケースのトライアルや実証実験を行い、発表をしてきました。これからも技術とユースケースの両方の面から5G/5G Evolution & Beyondが世の中に役立てるよう取り組んでいく予定です。
一方、読者の方にも5G/5G Evolution & Beyondを利用したアプリケーションを自由な発想で考えていただき、実現された暁には5G/5G Evolution & Beyondを使い倒してもらえればと思います。